第46話 ギルドランク


「先輩!! 彼、なんと暗殺ギルドでギルドランクCにまで上がってしまいました! これは、これはかなりヤバいんじゃないですかね?」


「そ、それは本当か!?」


 このゲームにはギルドランクというものがある。馴染みがある人も多いとは思うが、ギルドランクとはギルドで依頼を受注する際に、適正な難易度のものを受けられるようにする為のものである。


 依頼をする側の気持ちになって考えると、確実に依頼を遂行してもらいたいと考えるのは当然のことだろう。だから依頼の難易度を見極めそれをクリアできそうな人に振り分ける、これをギルドにやってもらうのだ。直接依頼したくても誰にどうやって頼めば良いのか分からない、そしてもし直接頼める人がいても、その人がしっかり任務を果たすことができるかも分からない。という貴族たちがよく使うものであるな。


 そして、それを振り分ける際に指針となるのがギルドランクとなる。また、ランクは高い分だけ難易度の高い依頼を受けられるということで、それは強さの証明にもなる。つまり社会的ステータスにもなるのだ。プレイヤーからするとただの勲章であったりとか、ステージの難易度表記程度に思うかもしれないが、現地のNPCからすると、生活がかかっているものになり、幼い子達の憧れの的になる。男の子なら誰しもがヒーローに憧れるように。


 ギルドランクの概論はこんな感じだが、より具体的な話をしよう。まずランクはGから存在し、そのランクの依頼を一定数こなすことで次のランクに昇格することができる。Gはそれこそ雑用や採取しかなく、Fから雑魚モンスターではあるが、モンスターを倒せるようにはなる。


 そして達成しないといけない依頼の量だが、Gは五個、 Fは十個、Eは二十個、というふうに倍々に増えていく。そして更に、Cから上のランクに上がるためには昇格試験なるものを受けなければならない。その試験の内容は毎回異なるもので、試験官と戦ったり、一週間程度サバイバル生活をしたりと本当に千差万別だ。


 中には自分の得意なもので上に上がろうと者もいるが、一番の判断基準は強さ、という観点であるため、強ければ大抵の試験は受かるし、また逆も然りだ。


 だがここで注意して欲しい点がある。これは全てあくまで冒険者ギルドの話である、ということだ。そう、彼が所属しているのは暗殺ギルドだ。暗殺ギルドというのはいわゆるお掃除や、のようなもので表立って始末するのが難しい敵や、処理しづらい問題を秘密裏に処理する部隊だ。


 誰でも入れる冒険者ギルドに比べて圧倒的に少ないが、その分一人一人の戦闘力は高く、少数精鋭である。そしてその戦闘力の差はギルドランクにも影響する。冒険者ギルドと比べておよそ一段階ほど違うのだ。そのためランクはEから始まり、暗殺ギルドでのEランクが冒険者ギルドのD程度と言われている。


 暗殺ギルドの構成員は冒険者ギルドでのAランカーを対象に引き抜きが行われる。それか秘密裏に幼少期から教育を受けている人たちもいるだろうが、それは完全にNPC限定だな。Aランカーが暗殺ギルドに入ると表舞台から一切消えるため、あまりなる者はいないが時たま影の英雄に憧れる者もいるようだ。


 そんななか彼はあまりにも異端すぎるのだ。まるでNPCコースとプレイヤーコースの中間を地でいくような、そんな感じだ。そして彼は今Cランクになった。つまり冒険者ギルドではBランクレベルということなのだ。


 もちろん受けることのできる依頼の価値も難易度も跳ね上がってくる。恐ろしい、確かに恐ろしいし、ヤバいな。


 ん? 待てよ、彼はなんでEランクからCランクに上がっているんだ?

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