第42話 雪崩的情報量
「先輩、またも事件ですよ! 彼は事件を起こさないと死んじゃうんですか!? いや、死んでるから事件を起こすのか? でもそれは……ってそんなことはどうでもいいんです! 彼がとうとうイベントのために自己強化を始めたのです!」
うん、彼女は今日も元気そうで何よりだ。いつもよりも二割増しくらいだった気がするが気にしない気にしない。それよりも彼の方が気になるな。
「彼は一体どんなことをしてどう強くなったんだ?」
「そ、それなんですが、いろいろなことをしたようですが、ざっくり言うと彼が死にまくったのと、スキルを手に入れたことの二つに分かれます。
まず、死んだことですが彼はまずボルテクスバードのところへ向かい、死にまくりました。その際、一撃では死ねないということに気づいた彼は、ナイフを自分に刺すことで対応し、死に続けました。自分に何の躊躇いもなく刃を突き刺せるなんて、彼は人間としてどこか欠落している部分があると思います」
「う、うん。確かにかなり恐ろしいことをしているようだが、彼もゲーム内と思って割り切っているのかもしれないな。現実ではまともな青年だと信じよう」
「ま、まあそれはそうだと思いますが。どちらにせよこれで彼のステータスがかなり上がることとなりました。獲得したスキルに関しては後でまとめて説明します」
そりゃスキルもゲットしているのだろうな。なるべくチートなスキルを取得していないといいが。
「分かった。では報告を続けてくれ」
「はい。その次はスキルを獲得したことなんですが、まず彼は先程説明したボルテクスバードとの死闘で彼は、電撃無効と麻痺無効を手に入れました。これは今までのラインナップに比べると見劣りするかもしれませんが、電撃、麻痺ともに多くのプレイヤーも使える手段なのです。麻痺は道具や呪文で、電撃は上位の魔法である雷魔法をそれぞれ無効にするのです。そしてそれらを使っているプレイヤーは一定数います。つまり、彼は効率を重視してなるべく多くの相手に有利になるよう、強化をしているということなのです」
彼の場合、計算しているかどうかが分からないところではあるが、確かに麻痺と雷はプレイヤーもよく使う属性だ。それに必ず一定数いるから確実に効果も発揮するとなると、やはり彼は計算しているのだろうか。まあ、もうだいたいどの敵と戦えばどんなスキルが手に入るか分かってきていそうだし、あるかもしれない。
「そうか、それはかなり厄介だな。だが、スキルに関してはそれだけではないのだろう?」
「そうです。今のが前座です、いや前座にしては弱すぎるほどです。それ程今からの情報は重いですよ」
なに? 彼女にそれほどまで言わせる程のものなのか? これは気になるな。
「分かった。もう既に心構えはできているつもりだ」
「分かりました、では言いましょう。なんと彼、またもや隠し店舗であるスキル販売所を見つけてしまったのです!」
なっ、鍛冶屋だけでなくスキルの方も見つけられたというのか。だが、そこのお店も質は良くともその分値段も……
「はっ! まさか、彼はまた……」
「そうです、そのまさかですよ。彼は再び店員とツケの交渉をしており、超強力スキルを手に入れております」
な、なんということだ。彼は一体どこまで行くつもりなんだ。
「そ、それでなんのスキルをゲットしたんだ?」
「……今回の話のメインは彼がその店を見つけたことではなく、彼が取得したスキルなんです。
彼は、彼はなんとスキル【乾坤一擲】を購入したのです!」
「なっ……」
どうやら人は驚くと本当に声が出なくなるらしい。言葉を出そうとしても上手く続かなかったのだ。
彼女が放ったスキル名、そこには膨大な情報量が含まれており、それは私の脳がパンクするのには十分すぎる量だった。
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