第33話 第二ラウンド
とうとうパンケーキ屋さんにまで来てしまった。私の残りの胃の容量は三割程度しか残っていない。それなのにまだパンケーキとタピオカが残っているというこの悲惨な状況。どうにかして食べきることができそうな小さいものを狙っていくしかなさそうだな。
店の店内は先ほどと同様かなりオシャレだ。しかし、ターゲット層が若干下がったように思える。私からすれば殆ど誤差だが、こちらの方がより明るい気がする。
「どうですかこのオシャレな感じは! とってもいい雰囲気ですよね? さっきのお店は私も初めて行きましたが、ここは私の行きつけなのでハズレは確実にないですよ!」
後輩は席につくなり興奮した様子で俺にそう言ってきた。ここに通ってたのか、やはり本当に女子の生態は分からないな。
「そ、そうか。それはいいな、なら間違いなく美味しいのだろう」
「勿論ですよ!! では私がオススメの料理を教えますね、これと、これと、これのセットがとっても美味しいんです! あと、さらにこれをトッピングして……」
間違えた。これは完全にルート分岐を間違えたようだ。どこで彼女にこれほどの火がついたのだ? 間違いなく美味しいのだろうっていう言葉か? それがトリガーなんて分かりにくすぎるだろう。どんな鬼畜ゲーなんだ、もっとヌルゲーにしてくれないと困るぞ。
ついに登場してしまった。俺の倒すべきモンスターが。ただ一つ問題なのが、こいつらがまだラスボスじゃないってことだ。おかしいだろ、私の胃の容量とまったく見合ってないぞ。それに彼女は私よりずっと量が多いようだし、一体どうなっているんだ?
私のパンケーキは三つあるのだがその中央のパンケーキにバニラアイスが乗っており、全体的にメープルシロップもかかっており、とても美味しそうではある。ただ、どう考えても甘いであろうこれは、一個で十分なのだ。なぜ三つにしたんだ、あと二つさえなければ私は幸福感に包まれただろうに。
そして彼女のは私の完全なる上位互換である。三つのパンケーキの上にバニラアイスとメープルは共通しているのだが、それに加え周りにたくさんのイチゴとホイップクリームが乗っているのだ。見ているこっちが胃もたれしてきそうなんだが、彼女は嬉々としている。
「ふぅ、お、美味しかったな」
味に関して言えばそりゃ美味しかったぞ。それぞれ違う味がして良い感じではあったのだが、とにかく覚えていない。食べるのに必死だったのだ。ただ目の前の敵をガムシャラに倒すという作業。かなりしんどい。
「ですよね! 是非また来ましょう! パンケーキだけでもいくつかオススメのお店がありますし、なんなら一緒に開発していきましょうよ!」
「お、おう。また、機会があればな」
正直もう勘弁してほしい。オムライスに続きパンケーキで卵をどれだけ摂取したと思っている。それに糖分、脂質共にかなり凄いことになっているだろう。若者には良いかもしれないが、もうこちとらおじさんだぞ。少しは労ってほしいものだ。
それに私の残り胃容量も既に一割を切っているのだ。もう限界だぞ、そもそも食事は限界までするものじゃないしな。
「先輩! 次に行きますよ!」
全く衰えを見せない後輩に連れられ、到着したその場所にあったのは……
若い女子の長蛇の列だった。
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