第32話 主人公のライバル


「よし、飯にいくぞ。一旦何もかも忘れて飯に行こう。こういう時は飯が一番だからな。どこが良い? 今日も私が奢ってあげるぞ?」


「オムライスがいいです! あとパンケーキとタピオカに行きましょう!」


 ん? オムライスは分かるがパンケーキ? それとタピオカだと?


「タピオカってもう何十年も前に流行ってたやつじゃないのか? それこそ私がまだ小さかった頃だった気がするんだが……」


「え、何言ってるんですか先輩! 今タピオカのブームが来ているんですよ! そんな以前いつ流行ったかなんて知りませんが、今タピオカを片手に持って歩かない女子はモグリって呼ばれるほどなんですよ? それを知らないだなんて情報はお金より大事なんですよ? しっかり世間の動向もチェックしておいてくださいよね?」


 お、おう。これが正しく一をいうと十返ってくるってやつだな。いや、文字量的に二、三十はあるだろう。想像してた五倍は返ってきたぞ? それに、今タピオカが流行っているのか? タピオカそのものは芋のデンプンだから高カロリーだし、その飲み物も糖質の塊みたいなもんだぞ? いわゆる女子の天敵だと思うが大丈夫なのか? それよりも飲みたいという欲求が出てしまうのだろうか。


 まあ、こんなおじさんに若い子の気持ちが分かるわけないのだが、歳を取ればとるほど遅れたくないという気持ちからか理解しようとしてしまう。その分歳も離れ理解しづらくなっているにもかかわらずにな。


 それよりもオムライスにパンケーキにタピオカって多すぎやしないか? そんなに食べられるのだろうか。因みに私は自信がない。どこかでお休みするか、出来るだけ小さいものを食べるとしよう。


「行きたいお店とかは決まっているのか? どこでもいいならナビに任せるが……」


「勿論決まっているに決まってるじゃないですか! 私がナビしますのでご安心下さい! とっておきのお店なので先輩も気にいると思いますよ!」


「そ、そうか」


 食いつき方が恐ろしいな。彼の件で項垂れて発狂しそうになっていた彼女は一体どこへ行ってしまったんだ? それほどまでにこの食べ物たちの力は強いのか。彼と匹敵するのだろう? これは本格的にマークする必要がありそうだな。


「分かった。では早速行こうか」


 三軒も回るのにどれほど時間がかかるかも分からないからな。こちらから言ったことではあるが帰るのが遅くなりすぎるのもアレだしな。



「一軒目はここです!」


 移動時間は自動タクシーを使って約二十分ほどだ。いかにもオシャレで高級感も漂うお店だ。内装もいい感じで人気が出るのも頷ける。まさか店の中にこんな大きな木が生えているとは思わなかったが。


 料理の内容も素晴らしかった。オムライスはライスの上に卵を乗せてパカっと切り開く仕様のもので、中はフワッフワだった。デミグラスソースとホワイトソースをかけて食べたのだが、私が幼い頃に食べたケチャップのオムライスは一体何処に行ってしまったのだろうか。


 オムライスを食べること自体何年ぶりかも分からないほど久しぶりの食事だった。味は本当に美味しかったのだが、いかんせん雰囲気が若すぎる。私はどこかの喫茶店でケチャップのオムライスを一人で食べる方が性に合ってる。


「先輩! 次はパンケーキですよ! 行きましょう!」


 頼む、頼むからそんなにキラッキラした目でコッチを見ないでくれ。そんな目をされると、次をお休みしようだなんて口が裂けても言えないじゃないか……

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