第30話 抜け道
「彼が取得した称号が、帝王の討伐者というものなんですが、この称号がかなり問題でして、効果が主に二つあります。一つ目は服従というスキルの獲得なんですが、これが一番の問題児なので説明は後に回します。そしてもう一つの効果がかなり特殊でして、自分よりもレベルの低いモンスターが近寄らなくなる代わりに、自分よりもレベルの高いモンスターが近寄ってきやすくなる、という効果なのです。
一見そんなに問題児じゃなさそうにみえますし、なんならかなりプレイしていく上で足かせになりそうな効果ですが、実はこれかなり彼との相性が良いのです」
自分よりもレベルの高いモンスターとしか遭遇しなくなるという効果か。確かに普通のプレイヤーであれば強いモンスターと戦えるという恩恵も多少はあるかもしれないが、それよりも安全に戦えるモンスターがいなくなるというデメリットが生じる。
これはかなりのデメリットで、レベル上げをしようと思った時、普通は自分よりも低いレベルのモンスターを相手にする。それは効率がいいからだ。一度にもらえる経験値が多いからといって、ギリギリ勝てる相手と毎回死闘を繰り広げてしまうと、総合的に得られる経験値の総量が低くなってしまうのだ。
それよりかは一瞬で倒せるもしくは苦労せずに倒せる相手を倒し続けた方が経験値、精神的負担、アイテム等、様々な面からしても効率がいい。
ただ、彼の称号はそれを許さないと言っているのだ。つまり、実質レベル上げを封じられたようなものだ。例え格上と戦い続けていてもいずれは追い抜いてしまうのだから、結局はコロコロ相手を変えなければならなくなる。
まあ、これはあくまで一般的な場合の話であって、彼には当然当てはまらない。何故なら彼はそもそもレベル上げをする必要がないのだ。死ぬだけでステータスが上がるのだからな。
それに、仮にレベル上げをしたいと思っても、彼の場合はレベルに相応しくないほどステータスを死んであげるだけで良いのだ。実際今の彼がその状態だしな。それによって普通の人よりも遥かに効率よくレベルを上げることができてしまう。
「先輩、先輩! 聞ーてますかー? もうほんと人が話しているときは自分の世界にトリップしないでくださいよね。まあ、そんなわけで彼とこの称号の効果がとても相性が良いのです。
続いて先ほど飛ばしたスキルの説明なんですが……」
良かった、話は聞いていなかったが彼女が言っていたことと私が考えていたことは大体同じようだったな。いかんいかん次は話を聞かなければ。
「服従というものなんですが、これは簡単に言うと自分よりも弱い相手を自分の従魔に出来るというものです。そしてこのスキルの恐ろしいところは、相手の許諾が一切関係のないところなんです!」
なに? それは些か強すぎるのではないか?
「これは単純に相手との力量さで判定が出されるため、自分が強ければそれだけで従魔にすることが可能になります。そして、どうやらこのスキルにはそれだけではなくさらに抜け道のようなものも存在するようなんです」
抜け道?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます