第28話 意外な結末と驚愕の事実


 とうとう彼とエンペラーオークが対面した。恐らく彼はまだエンペラーオークをキングオークだと思っているのだろう。


 今にも集落に襲い掛かろうとしていたオークの群れに対して、全速力で彼が駆けつけてきた。最初のようにゆっくり歩いていたら、間に合わなかっただろう。しかし、エンペラーオークに加えて三十体ほどのオークがいる。流石にこれはいかに彼と言えども詰みではなかろうか。勝てるビジョンが全く見えない。


 そう思っていた時期もあった。しかし、彼が見ているビションは違った。彼は相手がオークの群れであることを確認するや否や、一切の躊躇いなく群れに突っ込んでいったのだ。武器は何も持たずにただただ拳で殴り殺している。時折りギロチンカッターも交えながら着実に数を減らしていっている。


 これはこれはもしかしたらもしかするかもしれない。いや、でも流石にないか? こんなに処理できていることに驚いているが、それはあくまでもステータスとスキルによる力だ。その両方が通用しない相手にはそもそもHPを削ることすら厳しいといったところだろう。


 だが、もしかしたらという希望を抱いてしまうほどには彼の手際は鮮やかだった。彼は今まで殆ど戦闘をしてこなかったが、これほどまでに成長しているとはな。彼と同じタイミングに始めた他のプレイヤーとは隔絶した強さを持っているぞ。


 遂に彼とエンペラーオークが対峙した。彼はまだまだ余裕そうで、逆にエンペラーオークは部下を皆殺しにされて少し苛ついているのがみて取れる。これは徐々に風向きが変わってきたのか?


「おっ!!」


 先に動き始めたのがまさかの彼の方だったのだ。その場でジャンプをしてエンペラーオークの顔面にパンチを入れたかと思いきやそのまま落下しながらも断続して殴りつづけた。空中で殴り続けるのはかなり難しいと思うのだがそれをいとも簡単にやってのけている。


 そして、その後も彼は高い機動力を生かしてエンペラーオークの攻撃を躱しながらもずっと殴り続けている。もうかれこれ五分間くらいずっと続けているのだろうか、かなりのスピードで飛んだり跳ねたりしながら攻撃を避け、殴り続けていた。


 気づくともうエンペラーオークは瀕死の状態にまで追い詰められていた。そして、


「え?」


 なんと最後は彼が首斬り自殺をした時に使った、彼自作の剣をオークの顔面に向かって投擲したことで決着がついた。なんとも呆気なく終わってしまったな。まさか彼が勝ってしまうとはな。誰がこんな結末を予想していただろうか、大どんでん返しすぎるぞ。


 この結果について後輩はどう思っているのだろうか。これで更に彼女が悩むこととなるのかもしれないな。一旦話を聞いてみよう。この感動を是非とも共有したいからな。


「なあ、まさかの彼が勝ってしまったぞ! これは大変な事になってしまったな」


「え? 何を言ってるんですか? こうなることはもう分かっていたようなものでしょ。彼にはHP1残りと自動回復があるじゃないですか。だから物理的に彼が負けることはないんですよ。それに死なないだけじゃなくて彼には蓮撃もありますから、殴り続けていたらいずれ相手も死にますからね、むしろ負ける方が難しいでしょ」


「あ、そうですか」


 ちょっと家に帰って休もう。最近仕事のし過ぎで疲れているんだろうな。

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