第26話 キャッシュトラップ
「先輩!! なんですかこれは先輩!! 彼がさらに強化されてるじゃないですか! しかも今までの単発的な強化とは違って、今回のはやばいですよ!?」
今日も後輩は元気だな。あと、件の彼も。本当に話題の絶えない子だ、どうしたらここまで途切れることなくやらしかし続けられるのだろうか? そういう星の元にでも生まれてきたのだろうか?
それと、今回は後輩の元気がいつもとは少し違う気がするな、しっかり話を聞いてケアをしてあげなければ。後輩のメンタルの安定の為に話を聞いてあげるのも先輩の役目だろう。
「どうしたんだい? そんな顔をして彼がこれ以上やらかすことがあるのかい?」
「今回ばかりはスズチャンにも責任の一旦があるかもしれません。なんと、彼が新たな称号を獲得したのです。その名も千の屍を超えし者、です」
千の屍を超えし者、か。確か彼は以前百の屍を超えし者という称号を獲得していた気がする。ということはそれの上位互換ということだろう。
「それは以前のものとどう違うのだ?」
「それが、ステータスの上昇幅が大きくなったのです。倍率が0.01が0.02に変わっただけですが、それでも二倍になったのです。つまり、彼は今までの二倍強化されている訳です、キングオーク戦を控えてこの強化は、もしかしたらもしかすると、ワンチャンあるかもしれませんよ」
なるほど、そういうことだったのか。0.01しか強化率は増えていないのだが二倍になっているのだから確かに大幅な強化だな。これは彼の勝率は七対三くらいまで上がっただろう。彼が七の方だ。
彼がこれを見越して死に続けているとしたら、恐ろしすぎるのだが私たちですら完全には理解出来ていないSSZSを完全に理解し、今に至るまでの振る舞いをしているのは流石に考え辛い。
ふぅ、だがこれで彼のキングオーク戦に向けての準備は完了したようだ。決戦当日は明日だ、何故か私も緊張してしまうのだが、リラックスしてサッカー観戦でもするような面持ちで臨むように心がけよう。
後輩にもケアをしてあげないとな、このままでは明日の一番盛り上がる時間を楽しめずに終わってしまう可能性があるからな。
「大丈夫か? 浮かない顔をしているぞ? そんなに彼のことで気を病んでいるのか? まあ、確かに彼は問題ばかり持ち込んでくるが、その反面私たちに楽しい刺激を与えてくれているのも事実だろう?」
「確かにそうですが、楽しさより不安や心配が勝ちます……」
「そうだろうな、でもお前が楽しいと思ったらそれが楽しいものになるんだ。もともと楽しいもの、面白いものがあるんじゃない、自分がどう感じるかなんだ」
「そうですけど……」
「よし、わかった。こういう時は美味いもんでも食いに行こう。美味しいものは嫌なことを忘れさせてくれるからな。御馳走してやる、何食べたい?」
「本当ですか!? ありがとうございます! ならー、寿司が食べたいです!!」
後輩はキラキラした瞳で俺にそう言った。
くそう、現金な奴め、嵌められた気分だ。
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