第24話 剣先の行方


 斬撃障壁についての考察はもうし尽くしたな。だがそれでもまだ他にも彼は称号やスキルは手に入れている。それらの説明は彼女から聞く前に考察を開始してしまったからな。その続きを聞こう。


「ありがとう、かなり考察が深まった。他にもまだスキルや称号を手に入れているんだったよな? それについても聞かせてくれ」


「はい、話を元に戻しますね。彼は斬撃障壁に加えて、精神苦痛を和らげてくれる精神耐性というスキル、斬撃の威力を補正してくれる人斬りという称号、ギロチンカッターというかなりチートなスキルを取得出来る断頭者という称号、を手に入れました」


 相変わらず情報量が多すぎるな、一つずつ整理していこう。


 先ずは精神耐性だな。これを手に入れたということはやはり彼もある程度苦痛を受けていたということなのだろう。流石に自分で自分の首を刎ねるのはきついだろうな、しかもそれを何度も何度も繰り返したんだから相当だろう。


 精神耐性はその人が本能的に嫌だって思うことに対して、客観的に見つめさせることでその事象と距離を置き、冷静にさせることで精神を安定させている。少し難しいがザックリ説明するとこんな感じだ。細かいところでいろいろあるとは思うが基本的にはこれをベースにメンタルケアを行っていると考えてもらえればいい。


 まあ、つまり何が言いたいかというとこの精神耐性というスキルはかなり有効だということだ。精神を安定しやすくなるから、恐怖や怒り絶望などに対して強くなり、いろいろな場面で活躍してくれるのだ。人間と感情とは切っても切り離せない存在だからな。


 次は人斬りか。この称号は本来ならば盗賊などの悪者につく称号である。普通にプレイしていたらモンスターは斬っても、人はなかなか斬る機会がないからな。どうしても偏ってしまうのだ。


 更に、冒険者ギルド等を利用できない盗賊に向けての称号であるため、気持ち上昇幅が大きくなっている。つまり普通に地味だが使える称号なのだ。


 それを彼は自分を斬ることで犯罪者になることなく獲得してしまった。恐ろしいことではある。私に出来ることは彼が計算ずくで行動したのではないことを切に願うだけだ。


 ここまでは軽く流してきたのだが、最後の称号が問題児なのだ。なんだギロチンカッターとは、即死スキルなんてこのゲームにどれほど存在するだろうか。それをこんな序盤で手に入れるなんてほんっとにどうかしている。


 唯一救いなのはその成功確率が低いことだが、彼は修羅の道を歩んでいる、そして死ねば死ぬほどステータスが上がり、幸運LUKも上がってしまう。そうなってくるとかなり成功確率が上がってきそうだ。


 もし、二分の一くらいの確率で即死なんて撃たれた日にはこのゲームが終わってしまいそうだ。彼が出来るだけこのスキルに有用性に気づかないで欲しい。


「なあ、この断頭者の称号は人の首を斬りまくったらいいのだろう? それくらいのことならもう何人もこのスキルを取得していてもおかしくないと思うのだが、そこんところどうなっている?」


「私もそこが気になりスキルの保有者を調べてみましたがどうやら彼しか持っていないようです。これは私の仮説になるのですが、称号に断頭者とあるようにこれは処刑であることが分かります。つまり、その形式か本人達の同意のようなもの等を含む意識などを全て考慮しているのではないでしょうか。彼は全ての要件に当てはまりそうですし、実際当てはまったためこのスキルをゲットしたのでしょう」


 なるほど、そういう考え方も出来るのか。でも確かに彼しか持っていないことを考えるとその可能性は大いにある。まあ、それか彼ほど人の首を斬ったことのあるプレイヤーがいないっていう可能性もあるな。


 まあ、彼の場合は全て自分なんだがな。


 彼が人に攻撃するのはいつになるのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る