第23話 二人寄れば何の知恵?


「んぱい、せんぱい、せーんーぱーいー! 大変です! また彼が死んで強くなってしまいました。しかもその方法がなんと彼、自分の首を掻っ切って死んだのです!」


 ふぅ、まあこれだけ死んでいるのだからいずれやるだろうとは思ってはいたが、実際こうして現にされると、複雑な感情だな。自分で自分の首を刎ねるなんて正気の沙汰じゃない。これで精神的に大丈夫で脳波も正常という方が怖い。まあ、法律や規約でもどうにも出来ないため考えるだけ無駄なのだが。


 しかも、死に方で驚いてなんかいられないのだ。死んだ後にどうなるかの方が重要なのだ、彼は称号やスキルが得られるまで死ぬため、何も得られずに終わるということが殆ど無いのだ。それにもし、本当に何も得られなかったとしても、死亡数が稼げて結果的にステータスがその分上がるから良いのだ。


 彼の状態は本当に恐ろしい状態なのだ。


 なんの労力無しにとは言わないが汗臭い努力をせずに強くなれるのだ。まあ、その分彼は血生臭い努力? をしているのだから一概にズルイとは言わないが、側から見ればかなりズルく映る可能性が高い。


「それで、彼は一体どんなスキルを手にしたんだ?」


「それなんですが、今回も恐ろしいです。スキルは斬撃障壁、精神耐性を獲得しており、称号は人斬りと断頭者、というものを獲得しております。

 斬撃障壁とは、斬撃を食らった際にそのダメージを軽減する障壁を生み出す、というものです。精神耐性は、


「いや、ちょっと待ってくれなんだそのスキルは斬撃障壁? 無効じゃないのか? それにダメージを軽減するだと? 斬撃はこのゲームでのPvPでは一番発生率が高いだろう? それが無効になるとは一体……」


「ちょっと先輩! 私に散々疑問をぶつけて勝手に自分の世界に入らないで下さいよ! 考察は一人でするより二人でした方が捗りますし、何より私の話を途中で遮らないで下さいよ! 一旦報告を済ませてくれてもいいじゃないですか!」


 おっと、そうだそうだ、この後輩の話を遮っていい思い出はないな。うっかり失念していた。その分その情報のインパクトが凄かったのだろうが。


「確かにそうだな、悪かった。あまりにも衝撃的すぎる内容だったのでな。どうしても気になる内容であるか共に考察しようじゃないか」


 こういう時は自分がしたい事に彼女も巻き込むことで何とかなる。まあ、すんなり言うことを聞いてくれる訳ではないが、大火事になるよりかはマシだろう。


「ふぅ、分かりました。では先に斬撃障壁の件から片付けましょう。まず、彼がこのスキルを取得した経緯についてですが、彼は自作の剣を作成し、その剣で死亡し続けました」


「ふむ、彼は自作の剣で自殺したと言うのか。自作であったから斬撃無効ではなく、障壁だったのだろうか? つまり、本物の剣であれば斬撃無効を手に入れることが出来たのだろうか?」


「私もその線は考えました。ですが、自作と本物の剣の境界とはどこでしょう。初心者用の剣では決して業物とはいえませんし、彼の武器と攻撃力の面で大した差は無いのではありませんか? それで言うのならば攻撃力で区別されていた、と言う方が妥当かと」


「確かにそうかもしれないな、攻撃力で区別されていた方が納得はいく。そうだな、一応別の可能性として斬撃というのはかなり頻度が高いため、ゲームバランスを考慮して無効ではなく障壁にしたというのはどうだろう? 可能性としてはそこまで高くはないが無くもないだろう。なんていったって剣の使用率は圧倒的に高いからな」


「確かに無くはない話ですね。しかし、使用率というのはどうも不確実なような気がします。将来別の武器の人気が急に上がるかもしれませんし、些か弱い気が。ですが、それはあくまでも仮の話で、私の主観や一般的に考えると、これからもずっと剣の使用率は不動の一位を誇ると思います。もしそれをスズちゃんが考慮しているとすると、あり得なくはありません」


 やはり彼女は有能であるな。彼女のいった通り二人の方が考察は深まったため、流石としか言えないな。


 それでも答えは分からない。答えは神とSSZSのみぞ知るってやつか。気になるな、SSZSにコミュニケーションスキルを搭載して、直接話でも聞いてみたいな。

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