第18話 苦悩と対策と抵抗
彼の修羅の道及びステータスの件についてかなり間議論を交わした。修羅の道の効果を一部改変する案や、彼に謝罪を入れて直接的に何かをする案など、結構いろんな案が出たのではないかと思う。
ただ、やはりこのゲームの自由性や運営の不干渉性、それらを諸々考慮するとやはり行動に起こすのはどれも躊躇われるであろう、机上の空論ばかりだった。
この議論の論点はこのゲームの一番のアピールポイントである自由性を保つか、それともゲーム内のバランスを保つのかという大きく分けて二つの観点から話合われている。
彼は今のところ、何も咎められることはしておらず、ただ、自分の好きなことをしていただけだ。唯一不可解なのは、何故あれほどの自殺を繰り返したのかだが、それをしてはいけないという規則もないし、脳波も正常の範囲内だった。
そう、だから彼の行動に干渉する、もしくはなんらかの措置を加えた時点でこのゲームは本当の意味での自由ではなくなってしまうのだ。
だが、それと同時に彼はこのゲーム内のバランスを壊しかねないほどの存在だ。まだ、彼だけならば彼が特別であっただけだと済ませられるかもしれないが、もしそのやり方が公開でもされたら大変なのだ。
ん? 彼だけならば良いのか? それならば対策を講じることは出来るかもしれない。
この一連の事件の発端はどうみても明らかに彼の自殺から始まった。つまりプレイヤーの自殺を抑制すれば良いのだ。そうすることで第二の彼の発生は防げる。
具体的な対策としては自殺を多く繰り返した人に対して何か心配するようなアナウンスを入れよう。規定回数に達した場合自動的に送信されるような設定にしておけば我々の負担も減るだろう。
これをすることで自殺はいけない事だと思ってくれるかもしれないし、心配されてまでやろうとも思わないだろう。まあ、確実に防げる訳ではないが抑止力にはなるだろう。
だが、これだけでは対策にはならない。何故なら事件の犯人である、彼がその手口を一挙に公開する可能性があるのだ。今はまだソロだから良いが、いずれ仲間も出てくることになるだろう。そして、一度第三者にそれが知れ渡るともう人の口に戸は立てられなくなり、瞬く間に知れ渡るところとなるだろう。
それだけはなんとしてでも阻止したいのだが、こればっかりは何も良い案が出てこない。
メッセージをいくら行ってもやる人はやるだろうからな。
よし、こうなったら逆転の発想だ。彼にどうやって辞めさせるのかではなく、徹底的に第二の彼を生み出さないことに力を注ごう。
まず、アナウンスをしても自殺を繰り返す輩が現れた場合に、こちら側から何か装備品を贈呈するのだ。その装備はその時点で手に入れるには強すぎるくらいのレベルにしておいて、これ以上死ぬと装備出来なくなる仕様をつけておくのだ。そうすることである一定数の自殺数で止めることが出来るはずだ。
もし、これが誰かに知られた場合、手っ取り早く強くなるための方法として周知させられる可能性が高くなってしまうが、最悪の事態は防げるだろう。いずれその装備もいつかは使えなくなるし、そもそもデスペナもあるのだ。大丈夫と信じたい。
あと、彼へのささやかな抵抗として、デスペナルティを少し重めにしておこう。まあ、気休め程度にしかならないと思うが、ダメ元で彼が辞めてくれたら万々歳だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます