第5話 疑惑と疑念と疑問
よし、今日も日課を始めて行きますか。
そういえば以前、後輩にコーヒーを買ってあげたんだが、ブラックは飲めませんと言われ、断られてしまった。うん、もう二度と何かを奢ろうとはしないと心に誓ったよ。
もう、彼女の事は置いておこう。思い出したら思い出したで、イライラが再燃してきたからね、早く観察を始めようじゃないか。
「先輩ーーー!! 大変です、大変ですよーーー!!」
ふう、折角人が一生懸命頭の中から追い出したというのに、今度は物理的精神ダメージじゃないか。もう、ほんと落ち着かせてくれよ。
「先輩! なんていう顔してるんですか! まあ、いいや。そ、れ、よ、り、も、あの以前話題になった彼、またまたスズちゃんに認められて称号を獲得してましたよ! 今回も前回と同様、微妙な感じでしたけど」
「な!? それは本当? そんな短いスパンで立て続けに取れるもんなのか?」
このゲームにはSSZSという、スキルと称号を自動的に与えてくれるシステムがある。スキルの取得は簡単で、称号自体もそこまで取得条件が難しいというほどでもない。
ただ、こんな短期間に二つも獲得するなんて話、まだ聞いた事もない。SSZSに認められないと称号を手に入れられないということだから、本来はそんなにポンポン取れるものじゃないんだ。なのに、それを実際に為している。一体どうやって?
「それで、それはどんな称号なんだ?」
「えーっと、狂乱者って言う称号なんですけど、どうも痛覚設定に関連してるらしいですね。それで効果はVITを少し上昇させるくらいだから、そんなに大した影響は無いと思いますが……」
「そうだな。もし、この情報が拡散された時が怖いな。みんなが痛覚設定を高めに設定したゲームなんて殺伐としていて、考えたくもないんだけど、それも十分あり得るからね。これは注意しておかないといけないだろうね。
それと、もう一つここまでポンポン称号を取られるのはどうなんだい? かなり珍しいよね? もしかして彼はここの製作者の身内で仕組みを知っていたりするのかな? それともただ、人と違うプレイングがしたいだけの若者か……」
こういうゲームの世界に於いては、やはり、他人といかに差別化を図り、特別感を演出できるか、に拘っている人も多くいる。それはゲームをする上でだけでなく、現実世界に於いてもあると思う。ただ、それがゲームで如実に現れるというだけで。
ただ、彼はそんな人達と同じようには見えないんだよね。そういった人達はどこかで他人と同じでありたいと思っている節があるから、ここまで突飛なことは出来ないはずだと思うんだけど……
「んぱい! 先輩! もう、最後まで人の話聞いてくださいよね! まだ口に出してくれる分には最悪いいですけど、そっから一人で考察に入られたら、こっちは置いてけぼりになるんですからね? もう、ほんっとに気をつけて下さい!
それと、彼が製作者の身内であるかもしれないという件ですが、製作者ほぼはみんな独身ですし、家庭を持ってる何人かは、まだ子供がちっちゃいです。そして、誰かが友人等に言ってる可能性もあるかと思ったんですが、それなら、この時期に出てくるのもおかしいですし、何より、そんなことをする人はこのチームにはいませんよ!」
いや、うん、かなり熱くなってるけど、流石にそこまでは疑ってないよ? 身内の件も無いと思って言ったようなもんだし。
「ま、まあ、なら、もうこの男性はただの一般プレイヤーとして考えるのが妥だろう。そうなってくると、彼の行動理念は一体なんなんだ? 最悪、SSZSに気に入られてることは置いといても、普通に謎めいた行動をしているよな? 彼」
これは、いよいよ目を離せなくなってきたな。
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