第27話 友達
5ヶ月後、、、
龍の住処の麓で2体のミノタウロスと戦っているチームアリア。
「いったぞ!」
アリアの声でハルが風を使って飛び上がる、ハルを狙っていたミノタウロスの斧が空を切りハルを目で追う、その隙にソフィが迫り右手の片手剣でミノタウロスの膝を砕く、バランスを崩し片膝をつきソフィを睨む、そこに空から降ってきたハルが首を斬り落とした。
アリアは迫る横振りの斧を両手剣で叩き落とす、ミノタウロスの斧は地に叩きつけられたが空いている腕でアリアに拳を振り下ろす、飛び退いて避けるアリア、そこにソフィの直径2mはある火球がミノタウロスに直撃する、炎に包まれながら吹き飛ぶ、アリアが追う、煙を上げながら立ち上がろうとするミノタウロスは迫るアリアに反応できず首を斬り飛ばされた。
剥ぎ取りをしているハルにアリアが告げる
「森を抜けるぞ」
既に王都に近い場所まで来ていた。
ハルは下層で4ヶ月程魔物を狩まくり、魔力量が上がりにくくなった頃アリア達と合流し龍山の麓で一緒に戦っていた。
ハルの装備はボロボロで当初持っていたファルシオンはとっくに折れている、短弓はこの辺りの魔物には通用せず袋で死蔵している。
アリアとソフィは特に変わりはない、上等な装備は長い遠征でも輝きを失っておらず、加えて日頃から龍山で戦っていた2人は慣れている場所だ被弾も殆どなかったのだろう。
度々街に寄りながらもこの5ヶ月、戦いに明け暮れたハルは金級上位程の魔力量に達していた。
「走れば日暮れには森を抜けれる、近い街に一泊して王都に向かう」
「わかった」
「いくぞ」
フロンティーラ森林を走り抜け、森に近い街の宿屋に着いた。
「ここから西に馬車で1日行けば王都だ、王都に着いたら私は用事があるからあたしは別行動するからソフィに案内してもらえ」
「用事?」
「友達に会いにいく、魔族が来る確証は無い、来るとしても暫く日もあるだろうし時期も明確にわからん、魔族と戦える程の奴を雇い続けるのは難しい、だから友達に頼みにいく、戦力の増強だ」
「友達いたんだな」
「失礼な!友達くらいおるわ!お、多くは無いが…」
「1人だけでしょ?私を除いて」
「…その1人、ビンスが王都に居ればついてきてくれるはずだ、いい奴だからな!」
「たしかにいい人ね…」
「見た目は独特だが、腕は確かだ、ついてきてくれれば心強い味方になる」
「独特?」
「ハル、初めて会う時は困惑すると思うけど、すぐ…徐々に慣れるわ」
「?」
「ハルの装備の調達に時間がかかるかもしれん、その間は休暇にしよう、久々のな」
「わかった、師匠」
「よし、今日はもう休もう…フフッ」
「だいぶ落ち着いたわね」
「あぁ」
「何をしてる!部屋に戻るぞソフィ!」
翌朝、馬車に乗り込み王都に向かう。
馬車の中ではハルの装備と3人の連携の話が主だった。
王都、大きさはフォルトの20倍程で人口は30万人、田舎者から見れば毎日がお祭りのように映るだろう、その活気は日が沈んでも衰えない、人が溢れ、光の絶えない場所、それが王都レブリングだ。
王都に着き馬車を降りる3人。
「あたし達が使っている宿に向かう、部屋を取ったら、あたしは別行動だ、ハルはソフィに付いて行け、人が多いから逸れるなよ、行くぞ」
「わ、わかった」
入ってきた門では馬車の往来が激しく、中を見れば所狭しと人が行き交っている。
ハルは初めて王都に来た、その光景に目が回りそうになりながら確かに逸れる可能性があると、逸れた場合どうすればいいのかわからないと思ったハルはほんのちょっぴり魔闘術を発動した。
魔闘術を発動したおかげか人混みの中をアリアとソフィを的確に視界の中央に捉え後をついていく。
宿に着き部屋を確認してソフィの部屋を訪れたハル。
「アリアはもう行ったのか?」
「えぇ、私達はギルドに向かうわよ」
「わかった」
冒険者ギルドに向かう途中。
「ハル、素材を売るのに時間が掛かると思うわ」
「あぁ、山程あるもんな」
「その間にアリアがビンスを連れて来ると思うの」
「アリアの友達か」
「彼、ちょっと強引な所があるから気をつけてね」
「嫌な奴なのか?」
「いいえ、とてもいい人よ…いい人過ぎて強引なの」
「ん?」
「見た目のインパクトもあるから少し気合い入れときなさい」
「わ、わかったよ」
冒険者ギルドに着く、フォルトの数倍大きく作りも頑丈そうだ、中に入ると磨かれた石の床がピカピカと光っている、時間帯のせいなのか冒険者は少ないが皆上等な装備を着けている。
王都に冒険者はそう多くない、冒険者の大半を占める金級以下はフロンティーラ森林の側の街で生活している。
金級以上が必要な依頼は難度が高く、取って来る素材は高級だ、そういった素材を扱える商会は限られる、そのような商会は主に王都にあり、冒険者ギルドへの依頼は主にそこから出されている。
その為金級以上は王都に常駐するものが多く、金級以下は少ない、必然的に冒険者の数は少なくなる。
10はある窓口の1つでソフィが素材の売却を伝え、量が多い為か別室に促されている、ハルは入り口近くの椅子に座りソフィを待っている。
暫く惚けていたり依頼書などを見てもみたがまだソフィは戻ってこない。
更に待たされ椅子に座りながらウトウトし始めたハルに声が掛かる。
「ハル!ギルドに来て正解だったな、コイツがビンスだ!」
アリアに突然声を掛けられビクッとなる、振り向くとアリアと…
「ビンスだよろしく!」
様々な色を使い、遠近が分からなくなるような模様の衣服を纏い、靴と帽子は虹色で帽子には金色の羽が2本刺さっている。
長く待たされていたハルは眠くなる程気を抜いていた、そんな時に突然現れた珍妙な格好をした者に驚き視界が歪む感覚に襲われた。
「聞いたよ!アリアの弟子なんだって?それなら僕達はもう友達だ!王都レブリングは初めてなんだろ?案内してあげるよ!さぁ行こう!」
ビンスはハルの返答を待たずにハルの肩を掴み立たせ、肩を抱きながらギルドを出て行った。
その様子をアリアはニコニコして見ていた。
ソフィは売却が終わり、部屋を出て、ハルの所へ戻ろうとしていた時にビンスがハルを連れて行くのを遠目に見る、「遅かったようね…」そう一言呟き、アリアに駆け寄る。
「大分時間が掛かったみたいだな」
「5ヶ月分あったからね…ハルはどこに連れて行かれたの?」
「ビンスと仲良くなって王都を案内してもらってる」
「仲良くなったかどうかは疑問だけど…私達もいきましょ」
アリアとソフィは連れ去られたハルを追った。
「ハル!見てご覧!ここ王都レブリングに流れるレブル川だ!この川があったからここに街ができ、王都レブリングになった!今ではこんなにも大きく美しい街並みだが、ここに至るまでの歴史は平坦なものではなかったんだ、初代レブリング王が…」
今も尚、肩を抱かれたまま呆気にとられているハルを他所にビンスは言葉の奔流をハルに浴びせ続ける。
「向こうを見てご覧!あの教会の歴史は古くあそこに祈りを捧げに行く人は何千人もいる、信仰している神様は龍の住処にいるとされているんだ、だからこの綺麗に並んだ建物の中で教会だけ向きが少し右に傾いているだろう?龍の住処に向いているんだよ!他の街の教会も皆龍の住処を向いているんだ!その信仰している神様っていうのはね…」
ハルは口を挟めるタイミングを見失っていた、常に聞こえるビンスの声は柔らかく素直に耳に入ってくる、だがこのままではいつまで付き合わされるのかわからない、思い切って声を出す。
「あ、あの…!」
「どうしたんだい?あー!お腹が空いたんだね!もうすぐお昼だからね、お店には入らずそこの屋台で買ってしまおう、美味しいお店は夜に連れて行ってあげるよ!でも屋台のご飯も美味しいから心配いらない、僕に任せて!手に持ったまま食べれるからこのまま王都レブリングを見て回ろう!さぁ行こう!」
止められない…ハルはこの流れに逆らえることが出来ない。
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