第22話 パーティー名
ニールの背中を見つめるロキとその横を歩くウォール。
「ロキ…ニールはね僕のために戦ったんだよ、ホワイトも一緒だ」
「わかってる…」
「2人にちゃんと説明すればよかったと思ってるよ、反省してる」
「いや、ウォールさんは悪くない、説明してる時間なんてなかった筈だ…でも俺もあの場にいたらウォールさんだけ残して行けない…」
「ロキは冒険者として正しい判断が出来る、あの場に残ってても逃げる事を選択していたと思う、それが正しい選択なんだ、誰がなんと言おうとね、間違いないよ」
「…あぁ」
「でもハル君なんでいるんだろうね?早くてもあと3日後だと思ってたんだけど」
「多分…走ったんじゃないかな」
「走った?」
「小鬼の噂聞いたことないか?」
「なんか森を駆け回ってる…なるほどね、ハル君が小鬼だったんだね」
「だから山の中でも走ったんだろう」
「ハハハッ、あの山をか、たしかに小鬼、いやもう鬼かな」
「ハルがヴァンパイア倒したって言ってたよな?」
「そうだよ、魔力が可視化できるまでなってたし、それにあの動きは凄まじかったね、あれは未来が見えてるとしか言えないよ」
「ウォールさんから見てもそんなに…」
「僕は金級の中位くらいで引退したけど魔闘術には自信があって1時間くらい持つけど、ハル君はレベルが違うね」
「前に1日中使えるって言ってたな」
「ヤバイね!是非ギルドで働いてもらおう、魔闘術を使うと仕事が凄い捗るからね」
「才能の無駄遣いだな、それは」
「そんなことないよ!現に僕は使ってるし、そういえばアリアはハル君を見ても驚いてなかったね」
「白銀級レベル…」
「一概には言えないけど、近いレベルなんだろうね、でもよくアリア達を見つけたね、偶然かい?」
「あぁ、街道を体を光らせながら歩いてたんだ、高位の冒険者だと思ったから声をかけた、そしたら白銀級の2人だったんだよ」
「体を光らせながら?」
「夜道を照らす為だったらしい」
「それこそ才能の無駄遣いだね…」
ギルドに着いてウォールが説明し事態は終息した。
ニールとロキはホワイトを家族の元へ運んで行った。
ハルもついて行こうとしたがウォールに止められ、アリア達と共にギルド長室に来ている。
「白銀級『チームアリア』の2人に聞きたい事がある、ヴァンパイアの事なんだけど他にもヴァンパイアを始末したって言ってたね?」
ウォールが話し、アリアが答える。
「あぁ、2匹居たぞ」
「ヴァンパイアが計3体…どこにいたんだい?」
「隣町に近い森の中だ」
「隣町も襲うつもりだったのか…ハル君の倒したヴァンパイアが口にした言葉から目的が少しわかったんだけど、奴らは領地を持とうとしてるかもしれない」
「領地?」
「まず街を手に入れる目的で襲って来たみたいなんだ、それも計画的な可能性がある」
「最近の森の異変が関係してるのか?」
「そう、それだよ、1ヶ月くらい前から森の中で異変が起きてた、これがヴァンパイアの仕業だとすれば、この辺りを偵察していたんじゃないかと思う、森に入る冒険者の強さや街の様子を」
「あたし達は中央から南下してきた、3ヶ月前に中央でも些細だけど異変が見られてね、1ヶ月くらい金級のやつらが調査したみたいだけど原因が見つからなくて1組が未帰還だった、魔族が関係してるかもしれないって事で王都からあたし達が駆り出されたんだ、痕跡を辿りながら南下して途中でヴァンパイアだと確信した、だから南端のフォルトまで行くことは決めてたんだ」
「森に近い街を調べながらフォルトに行き着いたんだろうね、フォルトは金級以上がいない、下層に身を潜められれば見つけようがないからね、そこを拠点にしてたんだろう」
「街を調べながら南下して、自分達でも容易に手に入れられる街を襲った、なるほどね…でも領地となるとヴァンパイアの数が少なすぎる、奴らも馬鹿じゃない」
「それなんだけど、多分アイザイア、あーさっきハル君が倒したヴァンパイアがそう名乗ったんだけど、そのアイザイア達は捨て駒だったんじゃないかな」
「どういうことだ?」
「今回の襲撃の為にしっかり調査した、それで街を襲った、だけど少ない数で街を占拠しても時間が経てば奪い返しに強い人間が押し寄せる、それはわかっていた筈なんだ」
「だろうな」
「そうなれば調査した事が無駄になる、3ヶ月かけて調査した割にはあまりにも短絡的だ、だから彼らは斥候としてこっちの領域に来て魔族に、同じヴァンパイアにかな?情報を送ってたんじゃないかな、その後街を襲って人間達がどういう対応をとるかの調査をする…本人達に死ぬ気があったのかはわからないけど」
「…」
「人もそうだけど上の者や強い者には逆らえない、仮にアイザイア達が命令されて来てたのだとしたら、親玉がいるはずだ、今回得た情報を基にまたここに攻めて来るかもしれないね」
少しの沈黙の後、ウォールが続けて話す。
「隣町に2体いたって事はこっちにももう1体いたかもしれない、隣町とフォルトの戦力的な差はあまりないからね、その1体は情報を持って帰る役割で見ていただけかもしれない、だけど撃退された事も伝わってればもう来ないかもしれないし…かもしれないばかりのただの推測だけどね」
「あたし達の調査依頼の報告はヴァンパイアの仕業だった、そのヴァンパイアは始末したで終わりだ、仮に今言った話を伝えても唯の推測だって事で王都の奴らが何か対策してくれるって事はないだろうな」
「だろうね…推測で終わってくれる事を願うよ」
ウォールがため息を吐き、アリアが大きく息を吸った。
「よし!私達がここに残る!ハルもパーティーメンバーに加わった事だしな!」
「え?」
ハルが反応する。
「教えてくれとは言ったけど…」
「弟子は師匠の言う事を聞くもんだ!一緒に行動するんだ、パーティーに入れる」
「わかったよ…」
「わかっただけか?何か足りないんじゃないか?」
「わかったよ…師匠」
「ンフフフ、よろしい」
「わかったけど、パーティー名は変えてくれ」
「それは私も常々思っていました」
ソフィが入ってくる。
「なんでだよ!このパーティーはチームアリアだ!あたしの名前が入ってんだから完璧だ!」
「なんか嫌だ」
「私も嫌です」
「文句言うな!あたしが作ったパーティーなんだ、あたしが名前を決めるのは当然だ」
「ソフィと一緒に決めたんじゃないのか?」
「私がアリアと組む前に1人でチームアリアを名乗っていたの、『チームアリアのアリアだ!』って自己紹介してたわ、1人なのに、組む事になった時勝手にパーティー申請をその名前で出されてたわ」
「変体だな」
「えぇ、アリアは変体なの」
「目の前で悪口を言うな!パーティー名は変えないぞなにがあってもな、完璧なんだから、師匠と弟子と友、この3人でヴァンパイアハンターとして伝説になるんだ!その後また本をだして…」
ゴニョゴニョ言い出したアリアを無視してハルとソフィが話している。
その光景を見ていたウォールは苦笑いを浮かべながら、少しの安心を感じていた。
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