第12話 4人組

今日は銀狼と一緒に依頼を受けている。

依頼内容は魔物の素材採取だが中層トレスの奥に分布する魔物な為、達成率を鑑み、銀級4人以上のパーティー限定になっていた。

ハルの目的は金ではない、金は必要だが今回の主目的は夜営の経験値を積むことだ。

日帰り出来る距離ではなく必然的に夜営が必要になる、状況によっては3日4日とかかるだろう。

フロンティーラの森に着いた頃。

「今回は歩いていく、急ぐ必要はないからな」


ロキの発言にハルは苦笑い、ニールは欠伸し、ホワイトは無表情だ。

「さっき話した通り索敵は俺がする、陣形は俺が先頭で3人は…まぁ今はいいか、中層に入る時に細かく確認するから」


皆頷き森に入る。

上層では油断こそしないが警戒は程々に進む。

「なぁハル、夜営の練習が目的つーことはそろそろ行くのか?山」


ニールが問いかける。

「あぁ、今回夜営を経験したら挑戦するつもりだよ」

「そうか…更に差がついちまうな」

「差って言っても、同じ銀級だし、俺達同士が戦うわけじゃないだろ?」

「そりゃそうだけどよ、悔しいじゃねぇか…先輩としては」

「あーなるほど、敬意を払えだったっけ?」

「それは忘れろ」

「ハハハッ、わかった忘れる」


ホワイトが話に入ってくる。

「お前はハルの事となるとウジウジなるな」

「うるせぇな、ほっとけよ!」

「ほっとけるか、パーティーで行動してるんだ、士気に関わる」

「そうかよ!もう大丈夫だよ!」

「なにもハルは最初から特別だったわけじゃない、鍛錬の賜物だ」

「もう大丈夫だっつってんだろ!」

「お前だっていずれ辿り着ける、間違いなくな」

「お、おう、当たり前だ」

「このパーティーのリーダーなんだシャキッとしろ」

「任せとけ!リーダーについて来い!」


索敵や陣形を無視してズンズン進んでいくニール。

ロキが一言。

「助かるよ、ホワイト」

「これぐらい簡単だ、それに本心だからな」


フォレストウルフと無駄に会敵したがニールがパパッと片付けた。

ロキがニールに小言を言い、ニールがしょんぼりしながら元の位置に戻り、ロキを先頭にして歩みを再開する。


中層入り口。

「俺が先頭、次にホワイト、次にニール、殿をハル頼む、来る時に話してた通りの陣形だ、なるべく戦闘を避けて進むぞ」


皆頷き陣形を整える。

「まだこの辺りじゃ魔物の強さは気にならないが、トレスに入ってもこの陣形で行く、自分の警戒する方向、範囲をしっかり把握してくれ、ハルは後方の警戒もあるから魔闘術を使ってくれ、その方が安全だ、きついようなら言ってくれ、ニールと替える」

「わかった」

「ウノの中腹で休憩予定だがそこまで会敵しなければ、休憩前に1戦やる、合図は俺が出す、行くぞ」


行動開始だ。


ロキの斥候は完璧だった、地形を理解し、一早く魔物に気付き、進路を決める。

ハルは知識は豊富にあるが経験が浅い、後方を警戒しながらもロキの技術を盗む為観察していた。


暫く進んでロキから合図が出る。

示す方向を見るとコンガーが4匹、猿型の魔物だ。

皆が視認したのを確認するとロキが矢を番る、ハルも矢を番るが今放つ訳ではない。

ロキが矢を放つ、ホワイトとニールが飛び出す、その後ろをハルが追う、コンガーがこちらに気付くが1匹はロキの矢が頭を貫き絶命、3匹が襲いかかってくる、ホワイトがヘイトを集める為声を上げながら敵中に突っ込んでいく、盾を構え2匹の攻撃を受ける、もう1匹はサイドからホワイトを襲うつもりだ、そこにハルの矢が飛ぶ、木の上から飛びかかろうとした所で矢が胸を貫いた、それを見ていたニールが剣をそれぞれの手に持ちホワイトの後ろから飛び出しホワイトに攻撃を受けられ隙の出来た2匹を斬り刻む、胸に矢を受けた1匹は死んではいなかったが動けないようでハルが近づいてとどめを刺した。

「動きに問題はないな、何かあるか?」


ロキが後方から現れ聞く。

「ロキとホワイトはいつも通り動いて構わねぇ、ハルも自分の判断で遊撃しろ、俺が合わせる」

「わかった」

「初めての連携だったがスムーズだったんじゃねぇかな?」


3人が頷く。

「じゃあ休憩にすっか」


動ける程度に腹を満たしながら、ロキがハルに話かける。

「ハル、最近ロズワイド商店に魔法の袋買いに行ったか?」

「名前は覚えてないけど1番大きい店で買ったよ、この前」

「やっぱりか、俺の彼女がハルを担当したんだよ」

「えっ…」

「とんでもない世間知らずが来たって言っててな、容姿の説明でハルだとわかった俺は笑っちまって怒られた」

「ご、ごめん」

「気にすんな、笑い話だよ!でも聞いた限りじゃ嫌がらせととられても不思議じゃないな、あれは」

「そんな拙いことしてたのか?」

「まぁ、金を数えるのも仕事だけどな、次からは教えてもらった通りにすれば嫌な顔されないだろ」

「難しいな…女の人」

「男にとっちゃ、女は人生最大の難問だからな!」


こんな砕けた会話をしながら休憩を終えてトレスへ向かう。


道中2度戦闘を行なったが問題無かった。

ニールがハルに矢を放つタイミングについて話していたら、中層トレス区画に着いたようだ。

「さぁ、ここからが本番だ、陣形はこのままで何度か戦ってみよう、日が落ちる前にウノに戻って夜営の準備をする」


3人が頷く。

「よし、行くぞ」

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