第8話 野蛮な戦い
トレスには群れを成す魔物が多い、上位個体が他の魔物を従えてると言った方が正確か、同種や同系統で、稀に他種も混じっている。
フォルト街の銀級の狩場は主にトレスだ、1度に相手する数は多いが効率が良く上位個体の素材は高値になりやすい為だ。
試験なのでハルが1人で戦わなくてはならない、数が多い場合銀狼の3人も巻き込まれる場合がある、その為索敵を十分に行い相手を選ぶ必要がある。
トレスに入って小一時間、条件に合う相手を見つける。
オーガとオーグレス、オークを4体引き連れている。
オーガの特性として手下を先に仕掛ける、とどめを刺す場面か手下が全滅した場合オーガが戦闘に加わる。
鬱蒼とした場所でハルが矢を放ち戦闘開始だ。
まずは数を減らす、背後から狙った矢はオークの頭に刺さったが頭蓋を貫くことは出来ず僅かなダメージを与えただけだ、短弓の速射性を生かし手持ちの矢を全て射る、木々が邪魔して射線が限定されるが、その分敵の接近も遅い、2匹に限定して矢を放った効果で2匹づつに距離を開けることができた。
目前の2匹のオークがほぼ同時に棍棒を振るう、上からの振り下ろしと横に振り払うように、躱すのが上策、だが受ける、左腕と盾、右足と左足に魔力を集め右からの振り払いに小さな一歩で体重移動を済ませたサイドキックで受ける、振り下ろしには盾を斜に当て弾き飛ばす、振り下ろしを弾かれたオークはたたらを踏んでいる、足で受けたオークは棍棒が持ち手から折れ驚き困惑している、体勢を整えたハルが棍棒の折れたオークに正面から飛びかかる、すぐに立ち直ったオークは首を狙っているだろうハルの攻撃を腕で守る、そんな行動を嘲笑うかのごとくグラディウスを腕の隙間に滑り込ませ首を刺し貫く、飛びかかられた衝撃で後ろに倒れるオーク、グラディウスを抜いた瞬間もう1匹のオークが襲ってくる。
飛び退いて躱す、仲間の死体をぶん殴っているがお構いなしに再度棍棒を振り上げる、一撃躱して体勢を整えたハルが 二撃目を躱す動きと膝を攻撃する1歩目とを繋ぐ、膝を切り裂かれたオークは立っていられない、下がった頭を流れるような攻撃で切り飛ばす。
間髪入れず2、3本の矢を受けているオークが2匹迫る、手負いのオークの動きは緩慢で瞬く間に斬り伏せたハルがオーガを見る。
オークとの戦闘中もオーガへの警戒は怠らなかったが特性通り手下が全滅したタイミングで共に斧を持っているオーガとオーグレスが動き出した。
オークよりひと回り大きく、膂力や素早さは数段上、知恵もある、オーガとオーグレス番か?連携をとってくるだろう、油断なく迎撃の態勢で待つハル。
お互いをフォローできる距離を保ちながら近づいてくる、ゆっくりとした足取り、あと一歩で間合いに入るという所でオーガが飛びかかったてきた。
オーガが目前迫り斧を振り上げる、その巨大故に視界からオーグレスが見えなくなる、躱す方向が限定されてしまった、左右に避ければオーグレスからの攻撃更にオーガからの追撃で後手後手に回ってしまう、後方へ大きく飛び退く、振り下ろされた斧が大地にめり込む、オーガの後ろからオーグレスが現れる、後ろに避けたのは正解だったと思いながらも厄介だなと顔を顰める。
ハルの戦闘を見ている3人、ホワイトが喋り始める。
「やはり防具の貧弱さと火力不足は否めないな」
「そうだな、あのレベルを2体相手取るのは今のハルの装備じゃ厳しいかもな」
「魔力量も足りない」
「魔力量が増えれば攻撃力も防御力も上がるけど、それは魔力操作で何とかなるんじゃないか?」
「確かに対処はできるだろう、だが捨て身でこられた場合一撃もらう、その一撃が今の防具じゃ致命的だ」
「確かにな…ニールはどう思う?」
「うーん…武器や防具が良くなれば選択肢は増えるだろうけどよ、ハルにはあんま関係無いんじゃねぇかな…さっきのオーク2匹、最初の方な、初撃を盾と足で受けただろ?多分数カ所部分的に魔力を振り分けてたぞ」
「なんだと⁉︎」
「そんなこと出来るわけ…」
ホワイトが驚愕しロキが困惑する。
「グランドコブラの時も止めの一撃の時は腕と剣に魔力を集めてた筈だ、ハルは魔力が見える程はまだ無いから聞いてみないとわかんねぇけどな」
確かにグランドコブラへの一撃は不思議だった、魔力操作によるなんらかの恩恵だろうと無理矢理納得していたがニールの言葉に信憑性を感じてしまっているのも事実だ。
その後は3人とも無言でハルの戦闘を見届ける。
何度かの攻防でハルの表情は元に戻っていた。
オーガとオーグレスの攻撃の起点は必ずオーガからだ、膂力と頑丈さを活かして体当たりの様に突っ込み得物を振り回す、オーグレスはオーガの影に隠れ飛び出した相手に攻撃する、このパターンばかりだ、次のオーガの攻撃を躱して攻撃に転じようと決めた。
オーガの突進、斧を横に持ち振り払う、後方に飛びギリギリで躱す、ここからオーガに斬りかかる為に避けると同時に前傾姿勢になっていた、が、視界の端に影、オーガを飛び越えオーグレスが現れる。
この体勢から回避するには左右どちらかにしか行けない、そうすればオーガの追撃にあう、更にオーグレスの追撃、それは不味い、振り下ろされる斧を咄嗟に魔力を左腕に集め盾で受け止める、盾が割れる、左腕にも痛みが走るが動かせる、オーグレスが目の前に着地する、全体重をかけて攻撃した後だその体勢はすぐに動けるものではない、ピンチの後にチャンスあり、右腕とグラディウスに魔力を集めオーグレスの頭に叩きつける、頭が割れ首までの付け根までめり込んだ。
チャンスの後にはまたピンチ、グラディウスが抜けない、激昂したオーガが斧を振るう、剣を手放し飛び退く、尚も迫るオーガの攻撃をヒラヒラと躱す、盾も剣もない、弓もとうの昔に手放している、無手だ。
ここでハルは意識をオーガだけに向ける、周囲の警戒を捨てて出来る限り早くオーガを倒す事だけに集中する。
オーガが袈裟斬りに振るう斧を細かいステップとダッキングで避け懐に飛び込み腹を殴りつける、超接近戦だ、この時魔力操作の技術を遺憾なく発揮し避ける際には目と両足に3割ずつ集め、殴る際には両足に1割ずつ、右腕に7割を集める、懐にいるハルを捕まえようとする腕をサイドステップで潜り抜け、右足に2割、左足に7割を込めて三日月蹴りを脇腹に突き刺す、緻密な魔力操作で場面場面に合わせ最大の効力を発揮させる。
後は一方的な展開であった、叩きつけた拳や蹴りが20に達した時オーガが崩れ落ちた。
すぐさま周囲を警戒しながらグラディウスを回収しに行く、力任せに抜く、曲がってる…
悲しくなった気持ちを表情に出しながら倒れて身動いでいるオーガに近づき魔力を右腕とグラディウスをに集め首を両断する、更に曲がる…
周囲を見渡し新手がいないのを確認して銀狼に声をかける。
「終わった、武器が無くなったから早く帰りたい」
悲しそうな表情のハルに笑顔で駆け寄るニール、ロキとホワイトは驚き疲れたのか苦笑いで歩み寄る。
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