第4話 ある少女の言葉


 始業式が終わり、皆が教室に戻って来た。

 そこで担任の女性教師から後日の連絡を聞いて今日の学校は終わった。


 隣に視線を向ければ葵が仲の良い女友達とお話しをしている。

 僕はそのまま図書室へと向かった。


「ふぅ……まぁこれで悪いけど葵とは話さなくて済みそうだ」

 図書室についた僕は奥の方にある席に座り、今書いているネット小説の内容を考えた。本を書いていると言うと大変そうとか凄いと言う人が多いがそれは間違いだ。商本ならクオリティーがそこに求められるが非営利目的の本においては今はネット環境が充実し誰でも書けるしそれを投稿し世間に見てもらう事が簡単に出来る。


 去年は恋人が出来た嬉しさのあまり書いていた小説を強引な形で終わらせてしまい中途半端な形で連載を終了させてしまった。

 だから今回は一人のWeb小説家として僕が原点に戻る為にも今一度新しい物語を作ろうと考えている。

 そうすれば趣味に夢中になって葵を忘れられると少なくとも僕はそう思っている。


 僕は葵からされに本を書いて読む。

 葵は僕からされ新しい彼氏とのを送れる。


 どちらにとっても悪くない話しだ。


 何より図書室はいい。

 静かで何かを考えるにはもってこいの場所だ。


 ルーズリーフに僕は思い付いた内容や物語の構成を書き出していく。

 僕以外にも三人程図書室の利用者がいたが、距離的にも内容は見えない距離。

 なので人目を気にせずに思った事をシャープペンシルを使い書きだしていく。


「やっぱ書くなら人気があるラブコメかファンタジーだよな……」


 僕が過去に投稿していたサイトはラブコメとファンタジー系が人気だった。

 それは今も変わらない。

 最近は読専に徹していたが、そこら辺の情報はしっかりと毎日見て把握している。


「……でも戦闘描写を書くのは面倒なんだよな」

 別に苦手と言うわけではない。

 ただ時間がかかるのだ。

 後は描写背景を読者に伝えるのに労働力がかなり必要になったりと……。


「……ならラブコメの方向でと」

 ルーズリーフにこれも書いていく。

 その後『短編にするか長編にするか』を検討した。

 ファンを増やす事を目的とするなら断じて長編だろう。

 だが長編だからこそいい作品と言うわけではない。

 僕はあくまで自分なりに自信を持って人様に見せられる作品を作りたい。


「……う~ん、これは悩むな」

 一旦手を止め、目を閉じて頭の中でイメージする。

 どちらの方が書きやすいか。

 そして読者にどう作品を伝えられるか。

 なによりこの場合どちらの方が読者が喜んでくれるかを。


 読者の事を考えないで作った作品は作者の完全な自己満足による所が大きい。

 と、僕は思っている。

 それが悪いとも思わない。

 だってそうゆう作品は良くも悪くも作者の色がハッキリ出てくる。

 世界中の人が認めてくれる作品なんてこの世にないだろう。

 そう考えれば本に正解はあってないと思う。


 逆に読者の事を考えた作品と言ってもこれも難しい。

 世代や性別が違えば求める物が違う。

 これは当たり前のことだ。

 結局の所全世界の人が求めている作品は作れないのだ。


「さて色を出すべきか、少しピンポイントで読者を狙いに行くか……」


 僕は悩んだ。

 自分が作った作品をネットサイトに投稿すると言う事はそこに評価がある。

 評価とは読者からの感想、意見、応援コメントなどがある。

 勿論、その中には批判的な声も。

 ならば世間に公開しなければいいと思う人もいるかもしれない。

 だが、それは創作者として悩みどころである。

 やはり作ったからには誰かに見て貰って評価して認めてもらいたい。

 と思うのが作家だけでなくプロ、アマ問わず多くの人が抱く感情だろう。


 その時、サイトである少女が昔僕に言っていた言葉を思い出した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る