第3話 嘘が招いた修羅場


「…………だれ?」


「うん?」


「相手は誰なの? 私より可愛い子?」


 マズイ……この感じ。

 僕が誰かを答えるまで質問攻めしてくる気がする。


 ……はぁ。

 適当に誤魔化す事にしよう。


「……うっ、うそだよね?」


 そう来るか……。

 いや涙目で見られても……。

 僕にどうしろと……?


 ったく……仕方がない。


「うん。嘘だけど」

 僕の一言にクラスの静寂が終わり、騒がしくなる。

 何で葵を含めた全員が安堵するんだろう。

 僕には彼女が出来たら駄目なのか……。


「なら放課後時間あるよね?」


「うん」

 コクりと頷いた。

 とりあえずここは頷いて放課後図書室で時間でも潰せばやり過ごせるだろう。

 下手に家に帰って、それが葵にバレて僕の家に来られても困る。


 なにより今の彼氏を紹介されても、正直仲良くする気はない。


 元カレの僕の事なんて正直放っておいて欲しい。

 せめて後数ヶ月で君の事を忘れる事は出来ると思う。

 だからそれまでソッとしておいて欲しいのだが、そうはいかないのが現実。


 葵を敵に回せば正直面倒だ。

 葵は学年でもその明るさと誰にでも優しいことから人気がある。

 こう言っては未練がましいのは分かってるが、葵は容姿が良く綺麗だ。


 一年前の春。

 僕は葵を救った。

 それがきっかけで仲良くなり、告白され付き合う事が出来た。

 だけど、結局は振られた。


 まぁ本を書くのと本を読むことが好きな僕。

 それ以外に特に趣味はなく取り柄がない僕にとっては葵は高嶺の花だったのだと思えば当然の結果なのかもしれない。


 柔らかい表情で呟く葵。

「ありがとう。なら放課後私達の思い出の場所で待ち合わせね?」


「うん」


 僕が返事をすると、キーンコーンカーンコーンとチャイムの音が鳴った。

 そして教室の扉がガラガラと音を鳴らし、一人の女性教師がクラスに入って来た。

 僕達の担任の先生だ。


 女性教師はクラス全体に視線を泳がせて確認する。

「えっと……皆いるわね……?」


「よし。皆いるわね、なら出席確認はこれで終わるわ。今から始業式なので皆廊下に並んで、並び終わったらそのまま体育館に行くわよ」


 皆が一斉に立ち上がり、廊下に並ぶ。

 そして皆が並び終わると女性教師を先頭にして皆で体育館に向かった。



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