邯鄲の夢
勝利だギューちゃん
第1話
「君には一生、彼女が出来ないね」
女の子にそう言われた。
自分でもそう思うが、面と向かって言われると、さすがに凹む。
「なぜなら、君は優しすぎる」
優しい・・・
他に褒めるところがないから、とりあえず言われる言葉だ・・・
「君は、女の子に少しは厳しくなったほうがいい」
「どういうこと?」
「女の子を、叱る事できる?」
確かに出来ない。
弱虫なだけなのだ。
僕には、受ける事しか出来ないのだ。
情けないとは思う。
でも・・・
あらから、数十年経った。
僕もすっかり、おじさんだ。
あの時、彼女が言ったように、恋人はいない。
独身だ。
でも、それでいいと思っている。
やはり、僕には向いていなかったようだ・・・
仕事に生きがいがあるかというと、そうでもない・・・
ただ、自然の流れで就職をし、今にいたる。
仕事が恋人なんてかっこいいものでもない。
ただ、収入を得るための手段なのだ・・・
そして、1人寂しく、定年退職をすることになる。
(義理で)社員は、退職祝いをしてくれた。
でも、ありがたいものだ・・・
特に趣味のなかったつまらない僕は、余生を遊んで暮らせるだけの、蓄えはあった。
この先は、海外に移住して、静かに暮らそう。
その為に僕は、生きてきた。
(それでいい?)
「君は?」
(忘れたの?あの時の私よ・・・)
そう、僕に「君は一生彼女は出来ない」
そう告げた彼女だ。
変わらない姿で、そこにいる。
なぜなら・・・
(私の事、恨んでる?)
「いや、むしろ感謝している」
(どうして?)
「おかげで、夢が叶えらる」
あの時の彼女は、高校卒業と同時に、人生を棄権した。
自らの手で、幕を下ろした。
(残念だけど、君の夢は叶えられないわ)
「どういう事だ?」
(君は、もう一人じゃないからよ)
今更、何を言うつもりだ。
(目を閉じて・・・)
言われるままに閉じる・・・
そして・・・
ガヤガヤ・・・
周りが騒がしい・・・
ここは・・・教室?
「どうだった?」
彼女に問われる。
「どうって?」
「君の事は、わかったわ」
「見えてたみたいだね」
「うん。本当の人生は、私が君の支えになる」
中国故事に邯鄲の夢というのがある。
一瞬の間に長い夢を見ると言う事だが、彼女はそれを見せたのか?
「もう、同じ失敗はさせないわ。海外に移住するときは、そばにいるからね」
邯鄲の夢 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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