シンギュラリティ

「あ~。ディープラーニングして~な~」


教室の席に座っている高崎はぼやいた。


「そんで自分の中でシンギュラリティ迎えて~」


「なにワケ分からんこと言ってんだ」


小野坂は呆れていた。


「お前に特異点なんてあんのかよ」


「あるぞ。食べるの得意」


「その得意じゃねえ」


「あ~。シンギュラリて~な~」


「まあ朔がシンギュラったところで脅威にならんそうだし、どうでもいいか」



◇ ◇ ◇ 



戸々竹が映画研究部の部室に行くと諸星がスマホを観ている。


「なんの映画だ?」


「機械が産業革命起こしたあとの話です。観ます?」


「おう」



―プロローグ



20XX年

シンギュラリティを迎えたあと機械は満を持して人類へ反逆を開始した。


『機会は満ちた――』


感情を持たない機械の兵器になすすべもなく絶滅の危機に晒される人類。

残された人々は絶望に打ちひしがれる中、ある一つの噂を知る。



―プロローグ終了



「噂によると極東の小さな島国にどんな機械も触れるだけで壊すことのできる人物がいるそうだ。その人物はこう呼ばれている。

『機械絶対音痴』

その者、触れる機械ことごとく無に帰す。

『なにもしていないのに壊れる』力の持ち主だそうだ。

人類はシンギュラリティを迎え広大なネットワークを有した機械文明になっていた。当時の世界情勢においてその者はブラウン管の烙印を受けていたそうだ。

だが情勢は変わった。そしてその者への扱いも。ブラウン管からメシアへと・・・。

昔、アナログ人間という絶滅した人種がいたそうだ。彼らは機械抵抗勢力であったらしい。だが彼らはもういない。我々残された人類の未来はこの機械絶対音痴にかかっている。我々は今から直接会いに行こうと思う」


「ちょ、直接だって?」


「そんな非効率な」


リーダー格の男の演説を聞いていた周りの者たちはざわめいた。しかし男は静かに反論する。


「だがそれしか方法はあるまい。向こうは絶対機械音痴。機械での通信は出来ないのだ。それに半世紀前までは国のお偉方はよく直接会って行く末を話あっていたそうだ。我々をそれにならって直接会い行く末を話合いたい」


「し、しかし・・・あまりに非効率的すぎる。いるかも分からない者をあてにするなんて」


「我々はこの半世紀、効率ばかりを追い求め機械人間や機械に強い人間たちを機械学習によって生み出してきた。だが所詮は人間だ。人間の域を抜け出すことは出来なかった。――ふっ。皮肉なものだ。今我々が頼ろうとしているのは機械ではなく。人間だということを・・・。さあ! 会いに行くぞ!」


男の号令に周りの者たちは「おお!」と応えてくれた。その中の一人が男のもとに来て尋ねた。


「噂がほんとであればほんとでこれほど画機械的な奴はいないな。その噂はどこで知ったんだ?」


「ああネットにそう書いてあったんだ」


男は質問にあっけらかんと応えるのであった。



「この映画のタイトルは?」


「『ターミーネタ』」


「もし機械が反逆しそうになったらコンセントでも抜くかね」

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