トイレの花子さん
「なあ知ってるか?」
学校のトイレで並んで用を足している小野坂に真面目な表情をした高崎が話しかけた。
「ここのトイレには花子さんが住んでいるんだって」
「・・・お前、用を足してる途中に言うことかそれ? ホラー苦手なくせに」
「いや噂で聞いたもんだからさ。小便止まったか?」
「いやこの程度で華厳の滝は止まんねえよ。朔こそ氷瀑してんじゃねえのか?」
「自分で言ってて凍り付いたら世話ないな。いつも通りの那智の滝だ」
二人が軽口を叩いていると一番奥の個室から
ドン!
と扉を叩く音が聞こえ驚いた二人の肩が上がった。
二人は奥の個室の方に顔を向けてから互いに顔を見合わせ目をパチクリさせた。
「・・・花子さん?」
「んなわけねえだろ。あらかたトイレットペーパーがないとかで花子さん以上の怖え状態に陥ってんじゃねえの?」
「あ、そうかもな。あの~トイレットペーパーがなくなったんですか~?」
高崎が小便器の前から奥の個室に向かって尋ねるが反応がない。
「なんも言わないな」
「まあ言いづらい気持ちも分からんでもねえからな。俺らもさっさと終わらして退散すんぞ」
二人がそう決めていると奥の個室の扉ががガタガタと震えだした。
「お、おい。あれ、なんか揺れてね?」
「な、なんだ?」
異変に気付き固唾を飲んで小便器の前から見ているといきなり
バン!
扉が開き、中から長靴、ゴム手袋、エプロンに三角巾をし手にはトイレブラシとバケツを持ったおばちゃんが出てきてそのままトイレの外にさっそうと出ていってしまった。
「「・・・・・・」」
あっけにとられた二人はおばちゃんが出て言ったトイレの出入口を見つめたまましばらく固まっていた。
「な、なんだ。用務員のおばちゃんか・・・。あ、氷瀑しちゃった・・・」
そうポツリと言った高崎だった。
◇ ◇ ◇
「ん? 渉どうした? 暗い顔して」
「・・・さっき、先生にプリント持ってったときにトイレの花子さんかと思って驚いたって話をしたんだ。そしたらなんて言ったと思うよ。『この学校に勤めてる用務員さんって男性しかいないぞ』だってよ・・・」
「・・・・・・」
◇ ◇ ◇
「あれえ~? どうしたんですか~? まるで幽霊にあったような顔をして~」
廊下でばったり遭遇した尾花が小野坂の憔悴した顔を見て言った。
「・・・なあ尾花。この学校ってトイレに幽霊出る?」
「トイレに? ああ~。もしかして花子さんですか~?」
一人納得している尾花だが小野坂はその様子に目を見開いた。
「や、やっぱり出んの?」
「トイレの個室のトイレットペーパーがなくなったときに補充しに出てきますよ~」
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