ニーボマー
「スポ薦で高校に行った米沢って覚えてっか?」
「米沢? もしかして陸上部のか?」
肯定するように小野坂はうなずく。
「米沢と昨日ばったり会って近況を話たんだ」
「お互いに高校生やってるって話たのか?」
「それは話すまでもねえだろ・・・。あいつ、陸上部辞めたらしいんだ」
「え、スポ薦で入って辞めれんの?」
「事情を考慮して学校には在籍出来るとよ」
「なんで辞めたんだ?」
「どうやらな、膝の爆弾が起爆したそうだ」
「マジで? 爆弾処理班は?」
「お手上げだそうだ」
「マジか~・・・。いつ爆弾設置されたとか分かるのか?」
「どうやら中学のときにもう設置済みだったそうだ。結果出すために頑張りすぎたってよ」
「そういえば中学の時点で高校レベルだったもんなあ。もし街中で爆弾騒ぎになってたらこんな風になってた思うな――」
◇ ◇ ◇
「うわ~! この男爆弾抱えてるぞ~!」
「キャー!!」
「わー!!」
膝を抱えうずくまる米沢を見て周りの人たちが阿鼻叫喚に包まれる。
そこへ装甲車両が乗り付け、中から対爆スーツを装着した隊員たちが降りてきた。
「隊長、あそこで膝を抱えている男がニーボマーだそうです」
対爆スーツ姿の隊長に隊員が状況を伝えた。
「どうします? ロボットをつかって様子を見ましょうか?」
「いや、あの膝の様子だと爆破時刻が近そうだ。俺が行く」
「気をつけてください隊長」
隊長はクーラーボックスを肩に下げて米沢に近づいていく。
「こ、来ないでください!」
米沢が隊長に気がついて悲痛な叫び声をあげる。
「落ち着くんだ! キミの膝を正しに来た!」
「む、無理です! 俺の膝はもう・・・」
「それ以上膝を屈するな!」
「そ、そんなこと言ったって!」
「いいか落ち着け! 今からキミの膝と交える。もう少しの辛抱だ」
「う、うう・・・・・」
米沢は今にも泣き出しそうになっていた。
「落ち着け。落ち着くんだ」
隊長は自分にも言い聞かせるように言いながら慎重に米沢に近寄っていく。
「よし。膝に到着したぞ」
動きづらい対爆スーツの中で冷や汗を流しながら膝に到達した。
「は、はやく助けてくださいぃ」
「落ち着くんだ。膝を乗り出すが、勝手に動かすんじゃないぞ」
隊長はクーラーボックスを置いてから四つん這いになって、米沢が抱えている膝の周囲を慎重に観察してく。
「・・・くそ。この膝の爆弾を解体するのは容易じゃないぞ」
隊長は米沢の膝の状況がよくないことを察した。
「こ、こんなことなら昨日のマラソンになんか出るんじゃなかった・・・」
「マラソン、したのか?」
「そ、そうです。マラソンの抽選に当たったからせっかくだし出場したんです。だけど普段からそんな長い距離練習してなかったから、走ってる途中から膝に違和感は感じてたんです・・・。あのときにすぐに止めてればこんなことには・・・」
「ここは冷却させて起爆を防ぐしかなさそうだな・・・」
米沢の後悔を耳を傾けながら隊長は持ってきたクーラーボックスから氷嚢を取り出した。
「これを爆弾に当てて起爆を防ぐ」
「だ、大丈夫なんですか?」
「安心しろ。絶対に家族の膝元に送り返してみせる」
隊長が氷嚢を膝を当てた瞬間
「ん? どいうことだ・・・?」
「ど、どうしたんです? ひ、膝を打ったんですか?」
「いや下手は打ってないはずだが・・・。ど、どういうことだ? 膝
拍子が動き出しただと・・・?」
隊長はハッとした。
「ま、まさか! 温めるほうだったのか!?」
隊長感づいた瞬間、米沢の膝から『ニー! ニー! ニー!』とブザー音が鳴り響いた。
「く、くそお・・・!」
隊長は急い米沢から離れる。
「え、あ、あのー! ど、どうしたんだですかー!?」
「すまない! すまない! すまないー!!」
米沢の悲痛な叫び声を背中に、悔恨の念を連呼しながら必死に逃げる隊長。
そして―――
スドオォォーーーン!!
◇ ◇ ◇
「ってな感じでなってたかも」
「いや起爆はしたがそこまで被害は米沢だけだぞ」
「変形性膝爆関節性だったのかもな」
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