モデルの誘い

「あれ、尾花じゃねえか。どうした?」


 街中で尾花を見つけた小野坂が声をかけたが尾花はジッと向こうを見つめていた。


「なに見てんだ? ん~?」


 小野坂が尾花の視線の先を追うとOLの後ろ姿があった。


「おい尾花・・・あれは生きてる人でいいんだよな?」


「あれ? 小野坂くんじゃないですか~」


「今ごろ気がついたか。さっきから声かけてたんだぞ」


「すみません~。ちょっと気になる人がいたもので~」


「気になる人ってもしかしてあの女性か?」


「そうなんですよ~」


「やっぱりそうか。あのよ、あの女性は・・・生きてる人か?」


「もちろん生きてる人ですよ~」


 その言葉を聞いた瞬間、小野坂はニヤリとイヤらしい顔を浮かべた。


「なんだなんだ~? 尾花もやっぱりそういうの気になる年頃か~?」


「あ~。分かっちゃいます~?」


「分かる。分かるぜ。俺たち男だもんな」


「そうなんですよね~。僕、思い切って声かけたんですよ~。写真撮らせていただけませんか~?って」


「お~お~。まるでナンパだねえ」


「最初は向こうも乗り気だったのに僕が『心霊写真家を目指してる』って言ったら怒っていっちゃったんですよ~」


「そりゃあ怒んだろ」


「そうですかね~。怒るもんですかね~」


「次は上手いこと言って撮らせてもらうんだな」 


「でもあんないいモデルを背負った女性は中々見ませんよ~」


「え・・・」


 それまで茶化していた小野坂の表情が凍り付いた。

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