乗ってみたい
「お、パトカー。あれお前ん家に向かってるのか?」
二人の横をパトカーが通りすぎると高崎朔が茶化すように言った。
「んなわけねえだろ。でもなんも悪いことしてねえのに少しドキッとするよな」
「それはな、悪いことしてるからだ」
「ちゃんと人の話聞けよ」
「昔はあのパトカーにめっちゃ乗りたがったもんだけどな~」
「ああ~。それは分かる」
「そういえば小学生のときに『昨日俺の父ちゃん、パトカーの後ろに乗っていったんだぜ~』って自慢してる奴いたよな。そんときは『スッゲー! 俺も乗りてえ!』って憧れたもんだけど」
「今思うとその自慢話やべえな」
「家に帰って母親に『どうやったら乗れるの!?』ってめっちゃ聞いたけど応えてくんなくて。『いいもん! 大きくなったら乗るもん!』って言ったら怒られた記憶がある」
「仕事としてならいいと思うけどな。俺も親に『乗るようなことになるような話には乗らないように』って言われたことあんな」
「そういえば車と事故ってたやつもいたな。しかも駆けつけた救急隊員に言われた言葉が『車のほうがひどいケガだ』だって。すげえ状況じゃない?」
「それよりすげえ状況として、前にコンビニに車が突っ込んでるの見たことあってよ。てっきりバックしてるときに踏み間違えたんかと思ったら、コンビニの向こう側にもポッカリ穴が開いててな。どうやら向こう側からコンビニを突き抜けようとした状況だったんだよな」
「『救急車に一度でいいから乗ってみたい。
ケガをしろ。
パトカーに一度でいいから乗ってみたい。
ケガをさせろ。
霊柩車に一度っきりだけど乗ってみたい。
ケガが元。 』」
高崎はそらんじてみせた。
「どれにせよ乗らないようにすんのが賢明だがな」
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