背後霊

 小野坂が廊下を歩いていると前から首に一眼レフカメラをかけた尾花実が歩いてきた。


「よお。コンクール用の写真は撮れたか?」


 小野坂が片手を挙げてあいさつがてらにコンクールの話をすると、尾花はにへらと気味が悪い笑顔を浮かべた。そしてのんびりとした口調で


「う~ん。色々と撮ってはいるんですけどね~。なかなか良い撮れ高がなくて~」


「・・・学校内で色々撮れるのか?」


「そうですね~。この学校は比較的素材が揃ってますけど~」


「揃ってんのか・・・」


「構図にこだわる人もいますけど、やっぱり被写体にこだわりたいんですよね~」


「こだわりなんてあんのか?」


「あんまり活き活きしてる幽霊はちょっと~」




「渉。そいつ誰だ?」


 二人のところに高崎朔が来た。


「え、ああ。こいつは隣のクラスの――」


「あ、あのっ、僕、尾花実っていいます! どうぞよろしくお願いします!」


 小野坂が紹介する前に尾花がすごい勢いで高崎朔、の背後に向かって頭を下げた。


「ん? なんだ? 俺の後ろになにかあるのか?」


「・・・・・・」


 事情を知らない高崎はワケが分からず、事情を知る小野坂は凍りついていた。


「あ、あの良かったら、写真を撮らせてください~!」


「え、俺の写真? アイドル事務所にでも送るの? まあ別に構わないけど」


「え、ホントですか~! ありがとうございます~!」


「そんなに喜ばれるとはな。というかさっきから全然こっち見向きもしないけど、どういうことだ?」


 高崎、の背後に向かってますます嬉しそうにしゃべる尾花にますますワケが分からない高崎。そしてどんどんと凍り付く小野坂であった。




次の日


「なあ、シャワー浴びてるときに後ろに気配感じたことない?」


 教室で隣の席の小野坂に話かける高崎朔。


「俺、昨日シャワー浴びてるときめっちゃ気配感じたんだよな~」


「・・・・・・」


 小野坂はもう何も言えなかった。

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