心霊写真部員

学校の廊下の突き当りの角に向かって一心不乱に一眼レフカメラで写真を撮る生徒がおり、たまたま横を通りがかった小野坂。


(確か、隣のクラスの奴だったな)


「廊下の角っこ撮っててピューリッツァ賞取れるのか?」


 声をかけるとその生徒は写真を撮る手を止めて顔だけ振り返った。


「どうでしょうね~。僕の撮ってるジャンルはちょっと特殊ですからね~」


 その生徒はのんびりとした口調で応えた。


「なに撮ってるんだ?」


「もちろん心霊写真ですよ~」


「え?」


 生徒の言葉に小野坂は凍り付いた。


「あ、僕は尾花実おばなみのるって言って心霊写真部の部員なんです~」


「し、心霊写真部? そんなのあったか? 今初めて聞いたぞ」


「失礼な~。ちゃんと僕のほかに幽霊部員が4人いて部活として成り立ってますよ~」


「幽霊部員・・・。じゃ、じゃあ顧問は?」


「顧問なら部室にいつも自縛してますよ~」


「あ、ある意味にぎやかな部活だな」


 小野坂は顔が引きつりながら言った。


「そうなんですよ~。特に今はコンクールがあるんでみんな張り切ってて~」


「コンクール?」


「あ、もちろん心霊写真部門のやつですよ~。あ、そうそうこれは僕が撮ったものではないんですけど去年グランプリ取った写真なんですよ~」


 尾花が小野坂に差し出した写真に写っていたのは椅子に座った行儀よく座りカメラ方向を見る女性の写真だった。


「これがグランプリ撮ったのか? なんか普通の人物写真っぽいが」


「よ~く見てくださいね~。実はその女性が、なんですよ~。こんなにはっきりと写った写真は未だかつてないってことでグランプリなんですよ~」


「・・・・・・この写真見た奴は呪われるとか、ねえよな?」


「大丈夫ですよ~。その辺は打ち消し加工されてるみたいなんで~」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る