「不良って肩で風を切ってるけど、あれって侍の鞘当てみたいに『肩が当たった』ってやるためなのか?」


「あん? やんのかコラ」


 疑問をぶつける高崎朔を睨みつける鬼島。


「え、今の売り言葉に変換されるの?」


「気さくに話かけてくんじゃねえってこった」


「ちょっと気になったもんで」


「ふん」


 高崎がまったく気後れした様子を見せないので鬼島はつまらなさそうに鼻を鳴らしてから、つまらなさそうに応える。


「ま、絡む手段として肩当てしてくる野郎がいるのは確かだ。中にゃ初手殺しってんで肩をサンドバッグとかにぶつけて鍛えに鍛えてから当ててくる野郎もいるぜ。大概肩すかしな野郎ばっかだがな。肩を大げさにいからしてくる野郎もいるが、肩慣らしにもなんねえな。おかげで俺と肩を並べる野郎はまだ会ったことが――そういや1人いたな」


「え、いたの?」


「ああ。ケンカは弱えが肩が強え奴がいたな。今は確かプロの野球選手だったな」


 鬼島は懐かしそうに言った。


「そういやあん時、『肩は悪くねえがケンカはまるで悪い。野球選手にでもなるんだな』って吐き捨てたことあったな」


「じゃあその吐き捨てた一言が切っ掛けになったんだ」


「チッ。俺は吐き捨てたんだ。なにも拾うことはねえってのによお」


 言い方は荒っぽいがどことなく嬉しそうにしている鬼島でもあった。


「釘バットとか振り回してたことある?」


「ああ? 釘バット? そういうのは野球部どもに任せてる」


「野球部が?  あ、そうか。変化球対策か」

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