ボツ小説集

内藤悠月

拝啓、地球の皆様。私は月のダンジョンマスターになりました。

 拝啓、地球の皆様。

 突然ですが、私、月にダンジョンを作る事になりました。


 現在地球では、雨後の筍の如くダンジョンが出現しててんやわんやだと思いますが、まあ聞いてください。

 ごめん適当言った。私のダンジョンを含めて10あるかないかでしたね。

 てんやわんやなのは事実だとは思いますが。

 連日ニュースでやれ自衛隊がダンジョンに突入したやら、好奇心で乗り込んだ若者は死んだやら流れていますしね。


 いやね? 私、夢の中で神を名乗る不審者に出会ったんですよ。

 そういう話、皆さんも聞いたことがあると思いますが。

 こっちはダンジョン騒ぎの関係であまりニュースに流れなくなりましたけども、スキル持ちがその能力が使える前にそういう事があるって話が取り上げられてたはず。


 その神が私にもスキルをくれるって言うんで、まあもらったんですよ。

 あの場末のショッピングモールに置いてそうな、でかい筐体のガチャからスキルが出てくるっていうんで、回す……回す? ボタンを押したら自動でカプセルが回転して中から排出されたんですけど。


 出たスキルがこれがまた、「ダンジョンマスター」とやらで。

 まあ見たまんま、ダンジョンを作るスキルなんですけども。


 これを見た瞬間、私は悟ったね。ダメだこれ、死ぬわって。


 日本だと確か有名なダンジョンが「鉄の塔」でしたっけ。

 そう、東京の中央に生えてるアレ。

 アレの他に、九州と北海道に1つづつある、ってのはみんな知ってるとは思うんですが。


 違うんですよ。

 ダンジョン、実際は日本に450個あるんです。

 じゃあなんでそれが全く知られてないのかって言うと。


 この3つのダンジョンが、他のダンジョンを食い尽くしているんです。

 原理はまあおいおい説明するとして、ダンジョンは他のダンジョンを養分として食うことでレベルが上がるんです。


 ダンジョン騒動の裏で、突然人間が破裂して死ぬっていうショッキングなニュースがありましたよね。

 あれ、ダンジョンマスターです。

 ダンジョンを食われるとああなって死ぬんです。


 もう大体わかりますよね。

 ダンジョンマスターになるってことは、つまりイコールで死です。


 しかもね、このスキル。たちの悪いことに、時限式なんです。

 ダンジョンを作らないと、1ヶ月で干からびて死ぬんです。


 作っても死、作らなくても死。

 しかもダンジョンは自分の場所だと認識している場所にしか作れないんです。


 この事実に気がついた私は、1週間寝込みました。

 だってもう死ぬしかないもんね?


 そこから更に1週間悩みに悩んで、私はあることに気が付きました。


 ということで。


 地球の皆様、私は月にダンジョンを作りダンジョンマスターになります。なりました。

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