衝突
視界が真っ白になってから目を開けると、森の中に居た。俺様はカイン。このブルーシリウスのリーダーだ。横に目をやると、同じ班のメンバーであるアリス・フェイジアが居た。
「よお、アリス。どうやら俺達はユウとミーシャから離れて配置されたみたいだな。」
「ええ、そうね。恐らく、ユウくん達も二人組で動いてる筈。下手に無防備に合流しようとすると狙われるリスクもある。ここはツーマンセルで動いた方がいいね。」
「なるほどね。それは良いアイデア。所で、あちらさんも俺等と同じ条件みたいだぞ。」
俺達の数メートル先には、レッドオウルのエリザとカズマサが居た。
「やあ、カインじゃないかい。初っ端からアタシ達と遭遇するとは、運が無いねぇ。しかも、こちらは前衛二人なのに対して、あんたは前衛一人。とても不利だ。」
「へっ、言いやがれエリザ。去年は俺達が敗退したが、今回はその雪辱を果たす。では行くぞ。」
「ああ、いつでも来な。」
「サモン!来い、バアル!」
「サモン!来な、アドマデウス!」
「召喚!力を貸せ、ラーフ!」
「サモン!お願い、イシュタル!」
それぞれがゴーストを呼び出し、己に憑依させる。身体能力と術式が強化され、魔術回路が加熱し、まるで彼等の身体は薪を炉に焚べたように発熱した。
「ヴィナス・パワーパシブ・フェイジア!カイン、強化したよ!」
「あいよ!こちらも霊力全開だぜ...!」
ここで術式の詠唱について。術式の基本ルールとして、ゴースト固有の詠唱、術式の種類の詠唱、最後に術師固有の詠唱をすることで発動する。
中には、脳で詠唱をイメージするだけで術式を発動させる、詠唱破棄というスキルを会得している魔術師もいるがそれは一部の例外であり、基本は声に出すことで発動させる。では、本筋に戻る。
「カズ、アタシが先行する!アンタはアタシの追撃に合わせて攻撃しろ!」
「了解!」
エリザは赤い稲妻のような魔力を滾らせ、カインに突撃し、全神経を込めた、必中必槍の一撃を放った。だが。
「遅え。」
カインは、エリザの放った渾身の一撃を紙一重で躱し、莫大な霊力を込めた拳でエリザの放った獲物を破壊した。
「マジか...」
「下がれエリ!追撃来るぞ!」
カズマサはエリザを庇うようにカインに突貫、それぞれの魔力と霊力がぶつかり合い、閃光を放つ。
「助かったよカズ。」
「礼はいい、一旦引いてケイ達と合流するぞ。お前の獲物も造り直さねぇといけねぇからな。」
「カイン、私達も下がりましょ。お互い、先程の衝突で相当なマナを消耗した筈。」
「そうだな。後、ちょっとそこら辺から木の実でも取ってくる。あれはこのシュミレーターが作ったマナ回復用のモノだ。取っておけば、役に立つ。」
「私も手伝うよ。」
それから二十分。
「あ、いたいた!カイーン!アリスー!」
「おお、ミーシャとユウじゃねぇか!良かった、無事合流出来て!怪我はねぇか?」
「大丈夫、倒した相手から回復スプレーも貰えたし、問題ないよ!」
「で、誰を倒したんだ?」
「えっとね、僕はその時、隠れてたから見てなかったけど、ユウくんがエルくんを倒してくれたんだ。」
「マジで!?前回、一番多く脱落者を出したエルを!?すげぇじゃねぇか、ユウ!」
ユウの背中をカインが思い切り叩く。
「痛い、痛いってカイン。」
「おお、ごめんごめん。つい気持ちが昂って。」
「俺も、途中から意識を失ったから、どうやって倒したかは分からないんだ。ただ、あいつは自分の心象風景で現実を塗り替える禁術、心象侵蝕って奴を使ってきてた。だから、そのイレギュラーな何かが起こらなければ、俺は負けてたと思うよ。」
「マジか...それを使えるのは一部の大魔術師の家系しか出来ないって聞いたんだけどな...まあ、何はともあれ、お前らが無事で良かった!」
「あ、四人も揃ったことだし、休憩にしない?木イチゴが取れたから、それでマナを回復しましょ!」
「「「さんせーい!」」」
「ふう、中々マナも満たされた。皆、そろそろ出立するか。」
「そうだな、カイン。」
と、一行が移動しようとすると。
「危ない、皆!アズラ・ウォーターウォール・ブレイバー!」
咄嗟にユウは、初めて魔術を行使し、仲間の窮地を救った。だが、まだ魔術回路が不完全であり、先程のエルとの戦いで損傷した傷をアズが再生するのに、大量のマナを使った為、ユウは気絶してしまった。
「ユウくん!」
「コイツはマズイな...全員、防御陣形を取れ!ミーシャはユウを連れて逃げ、アリスは俺のバックアップを!」
「は、はいぃぃぃ!」
ミーシャは半狂乱になりながら、ユウを連れて逃げてく。
「ヴィナス・オールパラス・フェイジア!」
「最大強化、ありがとな!さて、これからが本番だぜ!」
カインにとって、負けられない戦いが幕を開けた。
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