第2話 現れたモノ、翼人の降臨
これから何が起こるのか、私はまぶたを閉じ、心の声に耳を傾けた。
私の心にはたくさんの魂が宿っている、そのうちの一つ「いとうみこと
(ナウシカのテトがひょいと視界に入り込んでくるよ)
私が言われた通り目を開けると、それはいた。赤茶けた大地の上に手のひらサイズに収まる小さな生き物が、まるでぬいぐるみのようにぴょこんと座っていた。耳が縦に長く、太くて大きな尻尾、茶色のふさふさの毛をさわさわさせながら、エメラルドグリーンの瞳がこっちを見ていた。
キツネリスがなぜこんなところに、一体どこから? 一匹で生息できるはずがない、ともすれば近くにはおそらく……
「ほう、どうやら生きているようだな」
その声が耳に届くと同時に、心の声が叫んだ、「坂井令和
(トレンチコートの男がやってきて、おもむろにコートをはだけポロリするよ)
私は身構えた。そのまま視線を上げると、そこにはトレンチコートの人物がばっ、とコートをはだけるところだった。
(くっ、こんなところで……)
思わずつむった目をゆっくりあけると、少しずつそのはだけたシルエットが見えてきた。そこに見えたのは意外な人物だった。
「あなたは……」
「はははは、露出狂とでも思ったか。何回やっても皆の驚く姿はたまらんな」
そこに現れたのは、変態オヤジの裸——ではなく、まるで女性の裸のように膨らんだ胸、くびれたウエスト。そしてすべすべとした白く艶やかな肌。顔から放たれる微笑みは、女神という名にふさわしいまばゆさを携えていた。
先ほど脱ぎ捨てたコート、トレンチコートと思っていたベージュのローブからは今もなお、陽炎のように魔力がゆらめいている。
「これを着ていないとワタシの
まるで男のような口ぶり。それでいてまるで山あいを流れるの清流のような涼しさと透明感を持った女性の声が響いた。その人物は背中に生えた白色の羽をわさわさとと揺らした。その様子はまるで、涼を取るためにうちわでも扇ぐかのように。
翼人。
一言で言えばその表現が的確だろう。大きな白い翼と、その神々しい輝きを見れば、その姿を天使と呼ぶものがいてもおかしくない。
「電咲響子
先ほどのキツネリスが翼人の肩にひょいと乗り、その頬をなめた。
「ん? お主、その様子では記憶をなくしているな。まあよい、大抵私たちの必要な記憶は片手に収まる程度だと言われている。そなたに今必要なことはとりあえず二つのみ」
あと少しで思い出せそうだ、この翼人は確か、カク……
「お主が知らなくてはいけないことの一つ目、それはここでまもなく起こること。それはもちろん知っているよな、お主の心の声が教えてくれたはず」
そうだ、忘れていた。「須藤二村
(でっかいブルドーザーみたいなロボットが掃除しに来ますよ)
ブルドーザー、掃除、その意味が分かるまでにそう時間は要らなかった。
地平線の奥から、なにやら騒がしい音が聞こえて来た。ガガガガガ、という騒がしい機械音とともに、奥の山が霞むくらいの砂埃を巻き上げながら、それはこちらへと一直線に向かって来ていた。
「ほーら、早速おでましだ。あいつにかかればここら一帯は一瞬にして『無』に返される。それからお主が知らなくてはいけないことの二つ目」
翼人は、さっ、と私の前のスペースを指差した。すると眩い光が瞬いたかと思うと、そこに現れたのは細長く、その体を鈍く光らせた碧い塊。
「ベルトネア銃に光弾を詰めておいた。あとは好きにするがいい、それを用いてやつを払いのけ、
ブルドーザはまるで猛獣が獲物を捕らえるかのような勢いで、こちらへ馳せてくる。
「それが嫌なら、銃口をそなたの口へ向けろ。引き金を引けばそれまでだ、もう苦しまなくてもいい」
二の腕がずきり、と痛んだ。数分前の監禁の記憶が蘇る。あの苦しみ味わいたくなければ、ここで終わりにすることもできる。
「どちらでもよいよ、ただこれだけは忘れないでくれ。そなたは最後の希望だということを——
ブルドーザはもうあと数秒でここにたどり着く。おそらく今いるこのスペース全てを無に返すほどの威力を持っているだろう。
私は咄嗟にベルトネア銃を手に取った。さてどうするか?
私は
戦うか、それとももうここで自ら幕を引くか。
戦うならどうやってこの銃で倒すか、あの巨大な鉄の塊であるブルドーザを。
(次の展開をどうしますか? 自由にコメントをどうぞ!)
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