二日目⑤ 折れない枝と心…

 簡単に折れそうな細さなのに…固い…


腕が折れそうなくらいだ…


「あれ~?おかしいっすね~、

割と固いと思うけど~、『基礎能力』が上がってるから、

割と簡単だと思うんすけど~?」


そういや、『基礎体力』もあったんだっけ?

なら、なんでなんだ?

さすがにモヤモヤするな…


「えっと、どれくらい…上がるものなんですか…?」


「そ~ですね~…元の世界の1,5倍とか~?くらいでしたね~たしか~…」


「「えっ、それだけ……」」


自分と安立は思わずツッコんだ…


よくある『俺目立ちたくないから!』とか言って、無双の限りを尽くすヤツでも


最低100倍くらいの力あるんじゃないか…?


多分…


知らんけど…


 さすがに1,5倍か…


「えっとですね~、『それだけ…』とか言われてもですね~

『チーナス』がある上にそもそも強いってかなりなんですからね~


あと、強さ1,5倍って、すべての運動能力が1,5倍なので

基本的に、普通の人の1,5倍、力があるってことですよ~


『異世界から来た人限定!』てやつですよ~

よくある宣伝文句ですよ~

なかなかだと思うんですけどね~ それで文句言われましても~

私からすれば、正直うらやましい限りですよ~」


そういうものなのか…?

 たしかに、攻撃力がインフレしているようなゲームとかでも、

1,5倍は脅威になるだろうな…


ただ、やっぱり、素直に『すごい!』と喜べるのか分からない…


「まあいいや、ヤツセガシさん、ちょっと腕相撲してくださいよ~」

そう言って、エアリーは腕をまくって、うつ伏せに芝生に寝っ転がった


えっと・・・ウデズモウ…?


変な単語が出てきたことに気を取られ、

名前を間違えられていることに気づかなかった


さすがに唐突すぎて、一瞬言葉が分からなかったが

頭の中で、『腕相撲』に変換できた


「えっと…どういう意味ですか……?」

「いや~そういえば、なんで枝折れないのかって話だったのを

思い出したんで~

一番わかりやすいでしょ~」



異世界に来て、初めてのイベントは腕相撲なのか…

まあ、ほかの三人は『チーナス』の確認だろうけど…


芝生で腕相撲、(自然と触れ合わない)それも腕相撲自体(やる相手がいない)

ほとんどやったことがないの


それでも女子には流石に負けるわけにはいかない

俺にも紙程度のプライドだがあるにはあるのだ


 自信ありげに少しでも見せるように

自分も腕をまくって、エアリーの目の前でうつ伏せに…


と思って今になって気づいた


顔が近い…!まつげ、なっが!

だめだ、顔をまじまじと見れない…

だから、じっとこっちみる…な…


目を逸らすしかできない…


それよりももっと大変なことがある


手、握らんとあかんやん…


今更になって気づいた…

でも、今断るとなんか気まずいし、『意識してるのかなw』とか思われそう…

そもそもそんな勇気無いし…


「は~や~く~」

ばしばしと芝を叩いて催促されても…


しぶしぶ、握った

っ!指も細い…肌がすべすべしてる…


さっきから変態みたいだな…自分…



これで負けたらどう言い訳しよう…

目の前に御園生と安立いるし…


安立に至っては、オドオドしている自分から何かを察したのか、

蔑んだ目でこっちを見ている…視線が痛いし、そもそも

注目されたくない…


「じゃあ~御園生さん~なんか合図だしてくださ~い」

こっちの気持ちも一切気づいていないのか、

いつもの声で御園生に呼びかける


もう、こうなったらヤケクソである

在って無いような自分のプライドにかけても…


「それじゃあ、やりますねー レディ…ファイト!」


全力で自分の力をかけた…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「ということは~もしかして、『来る前から力なかった~!』とか

やっぱそういうのですかね~?」


心臓がバクバクいってる

ドキドキした、というより、とても恥ずかしい…


結果?惨敗だったよ…

というより、本当にびくともしなかった


何もできず、ただただ圧倒された

さっきまでのラブコメみたい(?)という

自分にとってビハインドなな状況を加味しても

誤差の範囲ってレベルで…


案の定、御園生と安立を見ると、今にも吹き出しそうになっている


エアリーは肩をぐるんぐるん回して、少し誇らしげにいた


えっ、やっぱり運動とかしてないからなのか…?

遊びに行くときの電車代を節約するために、自転車を乗り回している以外、

体は全く動かしていない…からだったのか・・・?


絶対それだろ…

心の中でセルフツッコミをこなす


まっ、まあ『チーナス』さえ、なんとかなればいいんだ…


「ああ~、でも~、これ折らなきゃ『チーナス』は使えないっすからね~


どしようかな…」


まさかのエアリーも困惑顔である

やばい、エアリーの語尾からでもやばいのは伝わってくる


冗談じゃないぞ…元から何にもできないうえに、『チーナス』いや、

チート特典も一切なしとか…


やっぱ、どこ行っても居場所…ないのか…



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