一日目④

 結局、そこで会話が終了してしまった自分達は、

安立あんりゅうと共に、未だ名前を言わない”女性”

の後をついていった


そんな最中、自分も思い切ってもう一回同じことを”女性”に話しかけてみた

もしかしたら言葉足らずだったかもしれないし 


「えっと…さっき、後、二人…?って言ってたけど…

その人たちも自分たちと一緒で、異世界…?から来る人なんですか?」


言葉がつっかえるのは同じだが、さっきよりはうまく話せたと思う


「ええ、そうですが~?」

とやはり気だるげに返答した


なんだろう、文章にすると煽ってるようにしか見えないんだが?


 とはいえ、やっぱりこれ以上会話するようなこともなく、安立は自分の髪の毛を

くるくる指でいじりながら

暇そうについて来ている


さっきまでの動揺が嘘みたいに、驚いている様子もない


 そうして、また目の前に扉が…


そして、”女性”は今回、以外にもあっさりと入っていった


案の定、ベットがあるのは、もはや当たり前になってきたが

やはり、ここにも少女がいた


この少女を、仮にも”少女B”とでもしておく

少女は黒髪のショートカットで

見た目は自分よりも年下のような印象だ

そんな中、服装がジャージというのに

すごく違和感を覚える


やはりと言ったらいいのか

安立や”女性”にも負けず劣らずの美少女である


しかし、どういうわけかあまりそういう風に感じない

他二人が自分にとって印象が強すぎるからか?


というより、ここ(?)に来てから美少女3人と出会うとか

どんなハーレムだよ


『なろうお約束』でも、最近こんな状況あんまりないぞ

定番すぎやしないか?

 

”少女B”は状況が分からず、少しおびえているようで

毛布をぎゅっと握りしめている


そんな状況を見て、ふと、横が気になると

安立が何かイライラしている感じがした


なんかギャルというよりヤンキーみたいだったので

何も見なかったことにする


こういうのは、話しかけると自分がまきこまれる可能性がある


自ら火事に飛び込みたくない

ちょっと面白そうだけど *良い子は絶対にマネしないでください


そんな状態に一切気づいていないのか

”女性”はまた同じことを言った


「どうか…*以下略」

同じことを言ってるので(略)


ここでもやる気のなさを発揮する”女性”

”少女B”は予想通り、状況が把握していないようだ

だが、何かを決心したような顔で話しかけてきた


「あっ…あの!えーっと…質問…みたいなの…いい…でしょう…か…?」

最初は思い切って喋ったが、途中から、消えそうな、か細い声に

なった、そんな印象だ


「ええ、構いませんが~」

もう誰が言ったのか分かるくらいのやる気のない声


「あなた…達…の名前…教えてくれません…か…?」


何故かこんな状態に、意外と戸惑いもなく

自分たちの名前を求める”少女B”


ここでようやく気付いた


この”少女B”は自分と同じ『コミュ障』であると

コミュ障ならではのしゃべり方、

分かってると知りながらも

いきなり話しかける相手に名前を求める点

名前を知っておくことで、いったん話題を作るしかない様子

分かりやすい


 そんなことを理解しているように見えない

安立は『威圧的』に自己紹介をする


「あーし、安立小町っていうの

よろしく

っていうかなんか、あんたみたいな

キャラ、あんまり好きじゃないのよね~」


 怖っ!、なんかキャラ変わりすぎだが?


まあ同じようなこと、さっき言われたけど

自分からすればこっちの方が本当に怖い


 ともあれ、次は流れ的に言えば、自分の自己紹介か

「えっと、自分は八瀬樫尾って言います

自分は安立さんとたぶん同じで、異世界から?

来たと思います

そこの女性からほとんど聞かされてないので

詳しくは知りませんが」


今回は以外にもうまく言えたと思っている

何回おんなじ会話するのだろうか?


そんな中、一つ気になったことがある

何故かこの”少女B”には

どこか親近感がわく


コミュ障と違う、どこか根本的なところが


 さっきも同じようなこと思わなかったっけ?


 「私はあと一人来てから言いますので~」

そんな感じで自己紹介終わり

と思ったら、そういや当の本人の

自己紹介がまだだ


「えっと…わたしは布市ぬのいちしのぶ…って言います

よろしく…お願いします…」


 そんな時でも安立は目だけで布市を威圧

それに気づいた布市は泣きそうな目で自分の方を見てきた


もちろん、何か声をかける、といったことはできない

目を逸らすしかない


自己紹介ってしんどい

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