2話

「家出らしき女の子?君の横には誰もいないだろう?」

「大人なんだから、悪戯はしないようにね。いいかい?」

「すみません……」





「私を拾って」と俺に告げた鬼コスプレ少女(?)を家出か何かだと思い、交番に連れて行ったものの、捜索届が出ていないどころか警察官達に姿が見えていなかった。

そして、悪戯と認識された。

俺には見えたのに、何故。

この娘は一体何なんだ。

交番から少し歩いたところにある公園に行き、ベンチに座る。


「交番で預かってくれなかったでしょ。だからあなたが私を拾って」


この子、道端で初めて会って交番に届けにいく間もずっと「拾って」とうるさかったな。

というか、他人に姿が見えないとか訳がわからない。


「どうしてそこまで俺にこだわるんだよ。てか見えないとか何なの、お化け?」

「……あなたには私の姿が見えているからよ。行き場のない私を見つけたからにはあなたには私を家に受け入れる義務があるの。あと、お化けではない」

「何その義務。あ、首輪のない犬猫を保護するのと同じって事?」

「犬猫と同じに観られるのには不満があるけど、そんなもんね」


まぁ、犬猫と女の子を比べるのはおかしいと我ながら思ってしまうが……。


「で、君は……」

「鬼よ」


……「お化けではない」と聞いた時から薄々思ってはいた。

目の前にいるのは人外、見た目からして鬼であると。

「妖怪っているのか!?」と驚くところだが、俺は小さい頃、祖父母の家の近くで「ぽ、ぽ、ぽ」と連呼する長身の女性を見たことがある。

それも何度も。


「驚いたでしょ。あなた、平凡そうな面だし今まで妖怪や怪異といったものに遭遇したことがなさそうだもの」

「俺は平凡な人間ですよっと……拾わなきゃダメ?」

「ダメね。帰るところのない女の子を放置するのは最低よ」


……これじゃあ頼みより命令では?


「でも部屋、狭いけど?」

「私は小柄だから問題ないわ」


「2人分の食費って結構きついんだけど」

「お腹が空かないからご飯は必要ないわ」


「……」

「断わる理由を探そうとしても無駄よ」


女の子は俺の考えに気づいていたらしい。


「ま、ただで済むのは割りに合わないわね。……家事は私がする。これでどう?」


家事か……それはありがたいかもな。


「だったら、いいかな」


その時、女の子の表情が僅かに明るくなった。

そして立ち上がり、俺の前に来る。

金髪が月光に照らされ輝いていた。


「俺は元根海。よろしく」

「私は、かな。鬼族の金よ。今日からよろしく頼むわ、海さん」






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