第17話「旅立ち」
その後、ダニーはもう一回、注ぎ込んで。
そのまま朝までずっと、抱きしめてくれた。
なぜか、入れたままで。
どちらかが身じろきすると、感じちゃって。
その度に軽く揺すられたけど。
イかせるような感じではなくて。
ただ、相手を確かめるような動き。
ダニーが優しく背中をさすってくれたりもして。
この状況だと、つらい。ずっと軽くイッてる。
ダニーは所々、眠っているようで。
私も、ダニーに合わせてうとうとして。
どちらかの身じろきで起きる。
ってことを、明け方近くまで延々。
…さすがに、一発イって、終わりにしたい。
ずっとムラムラする。
「あ、だにー…?」
「…ん…?」
寝ているのか、かすれ声で、反応も薄い。
なぜか、そんなことにまで感じちゃって。
きゅって締めた自覚はある。
「だにー、ごめん。」
出発の日に、疲れるかもだけど。
どうしても、我慢出来ないんだ。
てか、ダニーのせいだぞ!
そう言い聞かせて、ちょっと腰を動かしてみる。
粘着質な音が響いて。恥ずかしいっ。
ダニーを起こさないように、ゆっくりと。
ダニーの寝息と、粘着質な音しか聞こえなくて。
何だか、ダニーを襲ってる気分。
きゅん。
やだ、また変な性癖が。
「…それじゃ、中途半端だろ…?」
「へ?」
突然、奥まで激しく動かれて。
チカチカ。
「あぁぁうんぅ!!」
まっしろ。おりてこれない。
「はぁ、かわいいな。」
「うぅんっふぅ!」
中あつい。かんじちゃう。
「アカネ。」
優しいキスで、フェードアウトした。
「…ん。」
「おはよう。アカネ。」
「…おはよ。」
「俺が、無理させた。」
…嬉しそうですな。
しっかりと騎士団の服を着こんで、私を覗き込んでる。
「あ、もう、行くの?」
「あぁ、そろそろ出る。良かった、起きてくれて。」
ちゅっとキス。
普通に寝かせてくれれば、普通に起きれたんですけれども。
「あ、見送りたい。」
「無理はするな。」
「ん。大丈夫。」
昨日より、大丈夫そう。
ベッドから降りて、服を着る。
トロリ。
慌ててトイレに。
出た分だけ拭って出ると、嬉しそうな顔。
なんか、変な扉、開けさせちゃったかな…。
玄関に皆で並んでお見送り。
何か、凄く寂しくなって。
もう一度、ダニーとハグ。
そのまま、ラウちゃんともハグ。
「ダニーも、ラウちゃんも、気を付けて。」
「あぁ。早く戻る。」
「うん。待ってる。」
「俺以外で、無理はするな。」
ちゅっと頬にキスをして、馬で颯爽と走り去る。
…去るあーたは良いかもしれないけど。
後ろがギャーギャーうるさいことになってるんですが。
ダニーがいないので、王城に行く必要もなくなり、休職状態に。
他で、少しでも収入を、と。
お家で、アロマ製品を大量生産することにした。
ダニーが帰るまでに、一財を築くのだ。
『ママー!ひまー!』
おぉ、我が子よ。
そっちで遊んでてくれない?
『らういないとつまんない!いっしょにいけばよかった!』
「ぴーちゃんが一緒に行っても、足手まといになるだけよ。」
『じゃあ、つよくなる!』
「そう、ママ、嬉しいわぁ。」
『ほんきだよ!せぶすにたのむもん!』
「そ、」
「強くなりたいのですか?」
何か、仙人みたいな登場しやがった。
うちの子に、変な影響を与えないで欲しい。
「気にし、」
『そうなの!つよくなって、らうまもるの!』
「そうですか。では、私共の訓練にご一緒されますか?」
『うん!する!』
私を置いて、何やら決まったみたいだ。
「……いいんですか?私としては、相手をしてもらえるのは、ありがたいんですが…。」
ちょっと、運動量が激しいので、うちの子。
「えぇ。そろそろ、力の使い方も覚えた方がよろしいかと。」
あ、そっか。
最近、ダニーが一緒だったから、忘れてたわ。
「ぴーちゃん!力使えるように、ガンバ!」
『うん!がんばるー!』
セブスさんに連れられて、ウキウキと出て行った。
そういや、どこまで離れて良いんだろう。
今のところ、お屋敷内なら大丈夫そうだけど。
はしゃいで、その範囲を超えないよう、祈るばかりだわ。
あれから一週間。
何だか、一日があっという間に感じるなぁ。
アロマ製品作る、ご飯食べる、寝る。
それくらいしか、してないもんなぁ。
ダニーがいないだけで、こんなに違うのかぁ。
…あ、そろそろ、シェラーさんの所に行かないと。
「奥様。シェラー様がいらっしゃいました。」
「え、ナイスタイミング!」
「お通ししてよろしいですか?」
「はい。お願いします。」
では、こちらへ。
と案内されたのは、ここに来た初日に通された部屋。
「アカネ様。お久しぶりです。」
「お久しぶりです。ご無沙汰してます。」
「ご結婚されたようで、おめでとうございます。こちら、お祝いです。」
「わぁ、ご丁寧に。ありがとうございます。」
綺麗な包装に包まれた箱。
この場で開けて良いのかしら。
あ、イザベラさんが回収していった。
「もう少し早くお会いしたかったのですが。ご結婚されたと聞きましたので、お邪魔かと思いまして。」
「いえ、そんな事は。」
いつの間にか、結婚情報を流されたんだな。
そこでニヤニヤしてるメイド三人衆に。
「早速ですが、本題に移らせていただいても?」
「えぇ、構いません。」
「あの後、あろま石鹸と香り袋に関する問い合わせが相次ぎまして。」
「本当ですか!」
「えぇ。そこで今後、商品として、私のお店で販売させていただけませんか?」
おぉ!マジか!
「良いんですか?」
「えぇ、もちろん。」
やった!
評判を聞くついでに、そろそろ商品として取り扱ってもらえないか、相談しようと思ってた。
まさか、先方から依頼が来るとは!
「そこで、ご相談なんですが。」
「はい。」
「アカネ様がお一人で作るとなると、数が限られますでしょう?その上、他のお店にも卸されてしまわれますと、品数が少なくなってしまいます。なので出来れば、うちの専売品として取り扱いたいのです。」
「ほう。」
その方がありがたい。
数を作るとなると、人手が足りない。
でも、人を雇うのは大変だし。そんな器量も持っちゃいない。
お金は欲しいけど、自分でやった分だけで良い。事業はこわい。
「人を雇われるご予定が?」
「いえ。このまま、一人で続けるつもりです。」
「そうですか。そのほうがよろしいですわね。質を落とされても困りますし。何より、職人を育てるのは大変ですしね。」
「そうなんですよね。」
ほんと、それ。
人を育てるって大変。
後輩にクソ舐められた記憶しかない。
…あいつ、呪われろ。
「では、専売契約という事で、よろしいですか?」
「はい!よろしくお願いします。」
「そこで、卸値についてですが、試作品の時の大きさですと、いくらでお考えですか?」
「えっと、」
それから、細かい内容を決めて。
あまり多く作りすぎても、希少価値がなくなるとの事で。
それぞれ50個を一週間毎に納品。
慣れてきたら、オーダーメイドの商品も受け付ける事に決まった。
やっほーい。鼻が壊れない限り、安定した収入だぞー。
俄然やる気が出て。
様々な花が咲く庭園がお屋敷内にあると聞いて。
うきうきと、庭に来た時。
「はい、1,2,1,2、くるっと回って!」
『まわるっ!』
………。
強くなるんじゃなかったの?
サーカスにでも入るつもりなのか。
「そこで、あの的に!」
『がうー!』
ボウっと木の的が燃えた。
炎の力が強くなってるなぁ。
『あ、ママ!どう?ぼくすごい?』
「うん、立派なサーカス団員だよ。」
『ほんと?やった!』
それで良いのか。我が子よ。
『ママ、みてみて!』
パタパタと腕を動かす。
少し、ホバーリングしてる…?
…どらえモン並の浮き方だな。
『すごいでしょ!』
「そこまで淡く浮けるのがすごい。」
『もっと、すごくなるからね!』
パタパタと劇団員の元へ戻っていく。
めざせ、ボリショイ。
庭にも、色々な花が咲いていて。
何ていう花かはよくわからないものが多かったけど。
良い香りのものばかりだ。
庭師のおじいさんに花の名前を聞きつつ、爽料に出来ないか聞いたら。
とても、驚いた顔をされた。
「奥様は、お花を召し上がるので、ござるか?」
何か、時代劇になっちまったな。
「食べはしないが、アロマ石鹸に使えるのでござる。」
「そうで、ごぜぇますか。わっしは、爽料の作り方はさっぱりで。」
「え、そうなんですか?」
「へぃ。うまく作れるのは、爽花屋の人間くらいでごぜぇましょう。」
そうなのか。
じゃあ、爽花を卸してくれるおっちゃんの所に行ってみるか。
「ところで。」
「へぃ。」
「時代劇って、御存じですか?」
この世界には、私の求める時代劇はないらしい。
まぁ、そうだよね。文化違うもんね。
白馬で走る、暴れちゃう将軍、いそうにないもんね。残念。
水戸のご老公に仕えれる強そうな爽花屋なら、目の前にいるのに。
「お、嬢ちゃん。…何か、でかくなったなぁ。」
「え?」
そんな成長した覚えは…。あ、ぴーちゃんか。
「そういえば、でかくなったねぇ。」
落ち着きがないから、確認しづらいけど。
私と変わらない背丈に、なりつつかるかな。
『ぴー、おおきくなったでしょ!』
「あぁ。うるさくなった。」
おっちゃんは、ぴーちゃんを気にする事なく、商品を袋に詰めていく。
一応、伝説なんですけどね。
「あ、お聞きしたい事が。」
「ん?」
「持ち込んだ花を爽料にしてもらうことって、できます?」
「あぁ、やってやるよ。」
「おぉ。ありがたい。」
「加工料はもらうぞ。」
「はい、構いません。どれくらいの量を持ってこれば良いですかね?」
「そうだな、種類にもよるからなぁ。どこから花を持ってくる気だ?」
「お屋敷の庭です。」
「じゃあ、明日あたり、見に行ってやるよ。」
「本当ですか。助かります。」
「構わねぇよ。お得意さんだしな。」
優しいおっちゃん。
庭師のおじいちゃんと、黄門様ごっこ、してくんないかな。
翌日、お昼を過ぎた頃に、おっちゃんがやって来た。
庭師のおじいさんと相談しながら、花を回収するらしい。
私も手伝おうとしたら、必死な顔で、やめてくだせぇっておじいさんに縋りつかれた。
私は、悪代官か。
ベンチに座って、眺めることに。
その奥の方に、劇団員のレッスン風景。今日も平和だ。
「嬢ちゃん。必要な分は回収したぞ。出来次第、納品の時に渡すで良いか?」
「はい、それで構いません。ありがとうございました。助かりました。」
「良いって事よ。」
本当に、良いおっちゃんだなぁ。
…ん?何かをじっと見て。
イザベラさん?
「あの…?」
「あ、あぁ。じゃあ、またな。」
「ストップ。」
「ん?」
「少し、お話でも。」
話を聞くと、どうやら、イザベラさんの事が、気になるらしい。
頬を赤くして。ぼそぼそと喋る。
小学生か。初々しいな。
お節介おばちゃんが、とっておきのイザベラさん情報を教えたげるっ。
………………。
そういや私も、メイドでスキル高いって事しか知らないや。
使えないって顔でこっちを見るんじゃない。
「じゃあ、デートに誘ってみれば良いじゃないですか。」
「でーと?」
「あぁ、お出かけの事です。」
「そりゃあ、誘ってみたさ。」
おぅ?!
意外と積極的ね。
「それで?」
「自分より強いと、証明しろと。」
「…はぁ。」
何それ。男の友情か?
「俺は、好いた女と戦う趣味はねぇ。」
「まぁ、そうですわな。」
「それ以外で、証明するってのが、難しい。」
まぁ、そうだわな。
証明するってことは、イザベラさんの前でしなきゃだもんね。
ただでさえ、あまり会う事ないだろうし。
伝説級の魔物退治とかが、あれば良いんだけどねぇ。
………いるね。うちに、伝説が。
「あのですね、一つ、提案が。」
「なんだ?」
「うちの子に、戦いを、教えてもらえませんか?」
「は?」
「このままだと、ボリショイしか道がなくなりそうなんで。」
「何言ってんだ?」
「そうしたら、認めてもらえるかもです。」
「はぁ?」
私の作戦としましては。
まず、ぴーちゃんを、鍛えてもらう。
多分、メキメキと成長すると思うので。
そこで、ぴーちゃんと互角に戦う。おっちゃん強いらしいので、多分イケるかと。
それを見て、認めてもらえたら、万々歳。
ぴーちゃんも強くなるし、一石二鳥!
「…どう転んでも、嬢ちゃんは得って事か。」
くっ。バレたか。
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