第15話「ふたりの証」
商品はほぼ無くなり。
残ったものをシェラーさんの従業員の人達にあげて、売り上げから間借りした料金を支払う。
シェラーさんはいらないって言ってくれたけど。
商売してるんだから、そこらへんはキチンとしないと。
手伝ってくれたメイド三人衆にも、賃金は支払わないとね。
それを差し引いても、良い収入になった。
これは、商売としてやっていけそう!
「ダニー。今日は私が奢るよ。」
「…女性に払わせるわけには、」
「良いから!どっか、安くて美味しい料理屋さんに行こう!」
さすがに、今日の稼ぎで高級なのは無理だからね。
ダニーが案内した料理屋さんは、街の中心部にある、大衆食堂のようだった。
男女問わず賑わっていて、料金もリーズナブル。良かった。
文字はまだ読めないけど、お金関係はすでに完璧よ。
…金の
「ダニーは、このお店よく来るの?」
「まぁ。新兵時代に、よく来ていたな。」
「へぇ。そうなんだ。」
今や、魔王チックなダニーだけど。
新兵の時は、初々しかったんだろうなぁ。
「ここのおすすめは?」
『
む。この声は。
「こら、アズール。すみません、副団長。あ、異世界人様。ニックです。」
「…どうも。」
異世界初日に会った、私を不審者認定した男と。
私を小馬鹿にしまくった
香味鳥の丸焼きて。共食いやろ。
あ、守護獣は食べないか。
『竜の子は息災か?』
「お陰様で。」
『おや。今日は、特別な匂いがしておる。』
「ちょ、嗅がないでもらえます?」
わざわざ顔を覗き込むように右頬に密着しやがった。
ニヤニヤしないでもらいたい。
「やめろよ、アズール。」
『
「こら、アズール!」
なんて自由な鷹だ!
うちの子なら!…うちの子なら。
…もっと自由ですね。
「あんたと酒飲んだら、まずくなりそう。」
『ほう。そうか。先に
馬鹿にした顔。潰すぞ。
「おねえさーん。強いお酒、二杯!」
だれだ。しょうぶするっていったの。
わたしか?
「なによう!ずるいじゃない!しゅごじゅうは、おさけのめないなんて!」
『クククッ』
「しょうぶするのが、にっくって。ありえないでしょ!」
「すみません。アカネ様。」
にっくは、かおいろひとつ、かわってない。
なによ、もう。わたしだけか?
「アカネ。もう、それ以上は。」
「むぅ。」
だにーがぐらすを。
「わたしのおさけ!」
「アカネ。」
「じゃあ、にっくのちょうだい。」
「え、いや、それは。」
「なんか、ひえるね、ここ。」
さむくなって、にっくにもたれる。
わーわーうるさいなぁもう。
なんか、さらにれいきが。
「アカネ。帰るぞ。」
「えぇ?」
だにーの、かお、ちかい。
「だにー。あったかい。ぎゅってして。」
「…あぁ。」
ふふ。やさしいなぁ。
あ、らうちゃん。ばかどりにかみついた。
「いいぞー。もっとやれー。」
なんか、いどうしてる?
じぶんで、あるいてないのに。
ずっと、ふわふわ。でも、すごくあんしん。
だって、だにーのかおがみえる。
だにー、すきだなぁ。
「ねぇ、だにー?」
「何だ?」
「だにーは、わたしのこと、きらい?」
「…急にどうした?」
「じゃあ、すき?」
「…まぁ、な。」
「じゃあ、なんで、きもちにこたえてくれないの?」
「……。」
「こたえてくれないのに、やさしさは、くるしいよ…?」
「それは…。そうじゃない。」
「わたし、みりょくない?」
「そんな事はない。」
「じゃあ、こいびとにしてよ。」
「もう、恋人だろう?」
「ごっこでしょ。わたしは、ほんめいになりたいの!」
「本命だ。アカネはもう、本命になっている。」
「しょうこは?」
「証拠?」
「しょうこ、みせてよ。わたしだけって、しょうこ。」
「…それは、酔ってない時に見せよう。」
「やだ。いまじゃなきゃやだ。」
「アカネ…。」
「おや、旦那様。…アカネ様、どうされたんですか?」
「あ、せぶすさーん。」
「おや?」
「アカネが酔った。もう休む。」
「かしこまりました。」
「おやすみなさーい。」
みなれた、へや。
かえってきたのかぁ。
ふかふか、べっど。
だにーのかお、はなれちゃった。
「アカネ。水を。」
「のませて。」
「…ん?」
「のませてよう。だにー。」
じっとだにーをみつめる。
いっきのみした。
とおもったら。
そのままかおがちかくなった。
「…んっ。…ぁ。」
「っ。
みず、おいしい。
「もっと。」
たくさん、みずのんだら。
きすのじかんがながくなった。
うれしいなぁ。
「しあわせ。」
「…そうか。」
「だにー。」
「ん?」
「ずっと、いっしょにいてね?」
「あぁ。」
「せんそういっても、かえってきてね?」
「…あぁ、約束する。」
「あかしが、ほしい。」
「え?」
「わたしのなかに、あかしがほしい。」
「それは…。」
「あんしん、したいの。」
だにーのかおが、よくみえない。
「おねがい。だいて。」
それから。
ぼんやりとした思考の中で。
ダニーは、私を優しく抱いてくれた。
好きだって言ってくれた気もするけど。
可愛いって言われたのは確か。
温かい腕の中で、何度もダニーを呼んだ。
その度に、何度も返事をしてくれて。
すごく嬉しかった。
今も、気持ちいい。
「っ。アカネ。大丈夫か?」
「んっ。…ぇ?」
ダニーが心配そうにこっちを見てる。
それよりも、
「ぁっ。んぅ。…はぅ。」
自分の声が、抑えきれない。
何て声出すんだ。自分。
「アカネ?」
「あっ。はずかしい…。」
「ふっ。今更。……酔いが
「んっ。あ、だにー。」
「…状況を、理解しているか?」
「あっ。んぅう。」
確実に、ダニーが入ってる。
そう感じただけで、感じてしまう。
はやく、動いて欲しい。
「どうしてこうなったか、覚えているか?」
「ん。ぁ。おぼえて、る…。」
もう、すでにこんな状態なのに。
顔が赤くなってしまう。
だって、願ってた展開なんだもん。
大人女子としては、大切な展開でしょうよ。
「うれしい。あぅ…ダニーに、っ抱いてもらえて。」
「アカネ…。」
「ぁんっ。ふぅ、ん。」
大きくなった。ふふっ。
「余裕があるなら、もう良いな?」
「んぅ。え…?」
ゆっくりと、出て、入ってくる。
焦らすようだけど、私の反応を、じっと見てる。
ちゃんと、見てくれてる。
ほんと、好き。
「あっ。んぁっ…んふぅ!」
「アカネ。」
ダニーがキスしてくれる。
あぁ、幸せ。感じ過ぎちゃう。
「こら、締めすぎだ。」
「んぅ。だって。」
唇を触れ合いながらの会話。
感じるなって方が、無理な話。
「アカネ。」
「ぁっ。ん?」
「
今、言ったよね。
婚姻って。
「ほんと?」
「あぁ。」
「ほんとに良いの?」
「もちろん。」
「私、
「ふっ。そうだな。」
「甘えてばっかりかもよ?」
「そうなれば良いな。」
「面倒くさいかも。」
「そこが、飽きないところだな。」
「ダニーのこと、幸せにできないかも。」
「楽しませてくれるから、良い。」
あぁ、自分がこんな事言うなんて思わなかった。
ドラマのヒロインだけだろって。
でも、好きだから不安で。
どうしても確認しちゃうんだなぁ。
うん、理解したよ、月9ヒロイン。
「ダニー。もう、一生、私のものだから。」
「あぁ。アカネも、俺のものだ。」
しあわせ!
「あっあぁっあんぅ!」
「アカネっ。」
激しくなる動きに。
ダニーにしがみ付く。
耳元で、そっとキスしながら、ぎゅっと抱きしめてくれる。
この腕が、本当に、大好き。
「あっ。やっんぅ。ダニー!」
「あぁ、そろそろっ。」
ダニーが起き上がって、私のお腹を押さえる。
そんなことしたらっ。
感じ過ぎる!
「あぁっ!」
「くっ…!」
まっしろ。きもちいい。
あ、中、熱い。
ダニーが、私のものになった。
私の。
何て安心感!
逃がさないぞ、ダニー。
最後まで注ぎ込もうと、揺れてる姿にきゅんと来る。
私、変な性癖あったんだなぁ。
「アカネ…?大丈夫か?」
「んあっ。うん。」
まだ、中にダニーが。
「上手くいった。」
「んぅ。…何コレ?」
私のお腹に、不思議な形の
押さえられたから…?でも、手の形じゃないなぁ。
…ん?
ダニーのお腹にも。何か、大きめの、
「婚姻の証だ。」
「え?」
「これで、正真正銘の夫婦だ。」
「へ?」
…赤ちゃん作ろうぜ的な話かと。
これで、夫婦ですか。
なんで、ここだけファンタジー…?
「よし。夫婦になったことだし。」
「んぁぁっ。」
ダニーが私を抱き起こす。
入れたままで。
「まだ、イケるだろ?」
絶倫って、都市伝説じゃ、ないんだネ。
あれから、明け方くらいまで、
長年相手がいなかった分、溜まりに溜まっていたものを、全てぶつけられたのではなかろうか。
人生で初めて、おなかいっぱい、って言葉を。
食事以外で言うはめになるとは。
「アカネ。生きているか?」
「………
「ふっ。」
元々、甘々だとは思ったけども。
朝、起きると。
じっとこっちを眺めていて。
起きたって気づくと、ちゅっとキス。
おはようって、かすれ声で言われると、ドッキドキですわ。
でも、明け方まで付き合わされた、運動不足女にとっては。
本当に、瀕死状態で。
今に至る。
「んん゛。」
のどが渇いた。
「アカネ。」
水のグラスを。
受け取れずぅ。
ダニーが飲みぃ。
まさか。
「んぅ!」
口移し!
シラフでこんな事するとは!
甘すぎるやろ…!
「まだ、いるか?」
「もう、だいじょぶです…。」
心臓が、持ちませんて。
また、ぎゅっと抱きしめてくれる。
「こうしていると、」
「うん?」
「本当に落ち着く。」
「ん。私も。」
「そうか。」
同じって、嬉しいな。
「ねぇ、ダニー。」
「ん?」
「大好き。」
「ふっ。俺もだ。」
おでこにキスしてくれた。
「初めて、言ってくれたな。」
「えぇ?」
「言葉にしてくれたのは、今が初めてだ。」
「…嘘だぁ。」
「なんとなく、好意を持ってくれているとは思ったが。」
「いやいや。言って、」
回想。
う~ん…?
あれ?言葉に出した覚えが…。
「…ないね。……思ってたから、言ったもんだと、ばかり。」
わぁ。
勝手に当たり散らしちゃったなぁ、昨日。
お酒の力とは言え…逆ギレ女でねぇが。
「…ご、ごめん。」
「うん?」
「答えてくれないって、当たり散らして…。」
「覚えているのか?」
「…まぁ。」
私、お酒飲んでも、記憶は無くならないのよね。
所々、ふわっとした所はあるけど。
「気にするな。それで、アカネが手に入った。」
ちゅ。
頭にキス。
意外とキス魔だな。
キス魔王だな?…ちがうか。
「…そろそろ、風呂に入るか。」
「あ、そうだね。」
今日は、仕事の日ですからな。
ダニーがベッドから降りた。
先に入るのかな。
って、わぁ!
「私も?!」
「そうだ。昨日、無理させたしな。」
お姫様抱っこで風呂場に向かう。
「お、おふろは、ハードルが、」
高いんですけど。
もう、浴室は温かくて。
湯舟も満杯。
洗い場にダニーが座って、その上に横抱きのまま。
「ダニーが準備してくれたの?」
「いや?多分、イザベラあたりだろう。」
「ふ~ん。」
………。
それってさ。
「もう、イザベラさんには、バレてるって、こと?」
「ん?あぁ。…多分、全員に、だな。」
はずっ!
そんな!
さすがに、やりましたよねって把握されてるのは、恥ずかしすぎるっ。
「んーっ!」
「まぁ。深く考えない方が良い。」
「え?」
「あいつらには、何もかも、筒抜けになる。」
何となく、わかっていたけども。
いつの間に部屋に入って、準備したのさ!
……考えたら、恥ずかしさしかなくなるから、やめておこう。
ダニーがお湯をかけてくれる。
はぁーあたたかー。
「気持ちい~。」
「熱くないか?」
「ん、ちょうど良い…ぁっ。」
変な声、出た。
だって。
股の間から、何か流れ出る感触がするんだもん。
これってさ。
ダニーのさ。
あれさ。どこさ。せんばさ。
「どうした?」
「あ、あとは、自分でやるから。」
出した張本人に、見られるのは恥ずかしいでしょうよ。
「いやだ。」
「え?」
「俺が、全部やりたい。」
「っ!」
…かわいすぎるやろ!
そんな、ちょっと拗ねたような顔すな!
きゅんとくるやろ!
「大丈夫だ。今はもう、しない。」
うん、一気に安心できなくなったな。
男のこういう言葉は、守られる気がしない。
…物語の中だと。
「目を閉じて。」
「ん。」
横抱きのまま、身体を支えて頭を洗ってくれる。
至れり尽くせりだなぁ。
恥さえ捨てれば、最高だね。
……捨てるか。恥。
「あ~気持ちいい。」
「そうか。」
「ダニー。うまいね。」
色々と。
やだ。恥捨てたらエロ親父みたいになっちゃうな。
そのまま、身体も洗ってくれたけど。
本当に無心で洗ってくれるから、私も無心になることにした。
風呂場で一発は、物語の中だけですわ。
洗い流した時に、私の痕を触って、嬉しそうに笑うダニーに。
鼻血出そうになった。
そのまま湯舟に入れてくれて、ダニーは自分で洗う。
さすがに、洗われると我慢できないらしい。
いやん。カワユス。
「そう言えばさ。」
「ん?」
ダニーの、所々に傷がある、ナイスマッチョを眺めながら。
「婚姻の証って、何?」
傷物になりましたってか。
特に痛くもないし、ちょっとぷくっとはしてるやもだけど。
…私の腹が出てるだけ?
「愛し合う人間の間で結ばれる、契約のことだな。」
「契約ってことは、これが結婚の証明になるってこと?」
「あぁ。国営局に書類提出もするが、実質の結婚は、この婚姻の証を結ぶ事だな。」
「へぇ。」
そうか。
例えたら、披露宴部分が国営局で、婚姻届け提出が証を結ぶってことか。
「これは、どうやってつけたの?」
「それは、女性の体内に精子を出す時に、男性が婚姻の言葉を言い、相手の同意が得られた上で下腹部を押さえると、自然に現れるようになっている。」
「へぇ。そうなんだ。」
だから、あんなピークで、押さえる行動を。
さらにダニーを感じて、大変だったんだから。
洗い終えたダニーが湯舟に入ってきて、後ろから抱きしめるように座った。
私の証の部分を、嬉しそうに撫でながら。
「変わった形だよね。何の形なの?」
「これは、狼だな。」
「狼…。」
う~ん、よく見たら、走ってる狼の、シルエットかな…?
ぷーまみたいな?
「ダニーのは、これと形違うよね?」
くるっと向き合って、お湯で見づらいけど、触ってみる。
すべすべ肌ですな。
「俺は、竜だな。」
「へぇ。同じ契約なのに、形が違うんだね。」
「あぁ。これは、相手の守護獣の形になる。」
「え、じゃあ、これ、ラウちゃんってこと?」
「そうだ。」
ラウちゃん、狼なのか。
大きな犬だと思ってたわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます