第6話 fire with fire

 桑田市で起きたことは、だれにも言えなかった。別れ際に「言ってはダメ。」と言われたら、喋っていたかもしれないが、女に喋ればいいと脅されたことで、心日しんかの口不意地になっていたのだった。


 3時間目の授業が始まる前、輝空こうきが心日の背中をつついてきた。

「次の後藤先生は、火を操るからお母さんのこと聞いてみろよ。」


 後藤先生は還暦手前の毛髪が少々少なめの先生だ。悪態を突くやつが、「炎系の術を使うと、後藤先生みたいになるから気をつけろよ。」なんてことを言っていたのを心日は思い出した。先生は授業開始と同時に、右手で指を鳴らし、その人差し指に炎を出現させた。


「何度か見せましたが、これを今日みなさんにやってもらいます。火が起きる原理は、もう分かってますね。唯一ゆいとくん説明して。」


「はい。」


 唯一はスッと立ち上がり、説明を始めた。


「燃える物質と酸素があれば、あとは着火するだけで、火は燃えます。」


「そうその通り。とても簡潔でよろしい。この空気中には、無数のチリと酸素があります。それだけで、火は十分に起こせるのです。着火は静電気です。私が指を鳴らすと静電気がおき、周りのチリに着火するのです。静電気は水の術にも応用できますから、みなさん、今日は張り切って、パチパチさせてください。」


「あと、どうしても、着火しない子には、わたくし特製のマグネシウム玉をあげます。ただし、火傷にはじゅーぶん注意してくださいね。」


 教室のそこら中で、指パッチンが始まった。心日は、これもからっきしだった。もし、薬をやめてたらつくのだろうか…。そんなことを考えていたら、輝空の声がした。


「やったあ、できた!」


「おっ、すっげえ輝空!」


 周りが驚くのも束の間、


「あっ、なんだあ、もう消えた。」


 輝空の火は数秒で消えてしまった。後藤先生は輝空に近づき、こうアドバイスした。


「火が起きたら、指で小さな渦を作りなさい。酸素、チリ、摩擦、このどれが失われても火は消えます。」


 輝空ができたのならと誰もが一層真剣に取り組み始めた。その矢先、またしても輝空の声がした。だが今度は叫び声だった。


「アッチィー、うわ!先生助けて。」


 輝空の右手が、肘の辺りまで炎で包まれていた。


 後藤先生は、手から水を出現させ、輝空の火を消した。


「君はなかなか炎の属性に恵まれていますね。かぜんぼう様が憑いてくださるかもしれませんよ。」


「はあー…。」

 それを聞いた輝空は落胆したように見えた。


「先生、そいつダメですよ。違反してくぐっちゃいましたから。」


「ほう、やんちゃ坊主ですね。それでどなたが憑いてくださったのですか?」


「ぬっぺっぽうさまです。」


 後藤先生は残念そうな表情を輝空に向けて、輝空の肩をポンポンと二回叩いて、他の生徒のところへ向かった。


 数分すると何人かの生徒が着火し始めた。


「では、まだの人には、この玉を渡していきます。左手に載せて、その上に静電気を送りなさい。」


 心日は、そのまだの人だった。しかし玉を載せてもいっこうに発火せず、とうとう落ちこぼれの中の1人になってしまった。授業が終わると、心日は後藤先生に質問した。


「先生、全身を炎で包むことは可能ですか?」


「できますよ。一瞬だけなら、ここでも。」


 先生は、両手で指を鳴らすと、ほんの一瞬だけ全身を炎で包み込んだ。


「おお!」


 教室がざわめき、心日も驚いた。


「術だけですので、強い炎ではありませんが、これは短時間しかできません。わけは、心日くん分かりますか?」


「熱いから、ですか?」


「それと?」


「うーん。」


「あるものがなくなります。」


「あっ、服です。着てる物、うーん髪の毛ですか?」


「ハハハハハ。」周りの生徒が笑い、心日は後藤先生に睨まれ、気まずくなった。


「違います。酸素ですよ。さっき言ったでしょう。転入生だから仕方ありませんが、しっかり聞いてなさい。」


 心日はこの話から、母親はジェロニモに燃やされる前から、熱と酸素不足で苦しんでいたことが分かり、胸がしめつけられる思いがした。




「どうした?元気ないな。輝空。」


 心日は輝空の横で弁当を広げた。目の前の輝空は、弁当を開いたまま箸をつけず、かなり落ち込んだ様子だった。


「別に。」


 返事もあり得ないほど無愛想だった。いつもの輝空なら、3時間目に火を起こせたことを大威張りで話していそうだったから、心日にとってはそのギャップが不思議で仕方なかった。


 隼之助じゅんのすけもやってきて、弁当を食べ始めた。この会話を聞いていた隼之助は、心日だけに聞こえるように言った。


「あいつ、ルール違反して、ぬっぺっぽう様とつながったこと後悔してるんですよ。」


「どうして。」


「何も知らないのですね。ちょっと廊下に出てもらえますか?」


 心日は、隼之助に言われるまま廊下に出た。


 隼之助は廊下の窓を指差して言った。


「あそこに鳥居がありますね?知っていますか?鳥居。」


「そのくらいは。」


「鳥居は、異世界に通じる門みたいな物なのです。そこをくぐると、この世には存在しない様々な霊魂れいこんと交わることができるのです。昔の人たちはそれを妖怪や幽霊と恐れたり、神として崇めたりしたのです。そしてある程度の修行をした伊賀者が霊魂にすがりたいとひたすら念じると、自分の属性に一番近い霊が近づいてくるのです。」


「そして、もしもその霊に認められたら、それ以降、その霊は力を貸してくれます。その儀式を伊賀者はと言っています。心日がそれを知らないのは、A組の生徒ではないからです。A組になると正式にくぐることが推奨されます。ところが輝空は違反を犯して、自分の属性が曖昧なままくぐってしまったんです。その結果憑いたのが、ぬっぺっぽう様というわけです。ある意味自業自得ですが、ぬっぺっぽうは、戦闘にも作戦や防衛にもあまり役に立つとは思えません。輝空は、自分の属性が炎にあると知って、今、めちゃくちゃ後悔しているのだと思いますよ。」


「なんか、複雑なんだな。」


「わたしも、吹き矢しかまだ特技ないから、何か属性見つけないといけませんが、…あなたもですね、心日。」


 2人は教室に戻って、弁当を食べ始めたが、輝空は落ち込んだままだったので、母親の技のことも、薬のことも話せなかった。




 心日は帰り道にある神社の鳥居を試しにくぐってみた。


「やっぱり何も起こらないよな。」


(こんなことでなにかに取り憑かれても、恐いよな。)

 少し期待していた自分がバカ者のように思えて、なんとなく納得しながら、家に向かった。


 家の近くへ来ると、けたたましい消防車のサイレン音が聞こえてきた。


「おいおい、またかよ。」


 桑田市のことが思い出され、嫌な予感がしてきた。火事は心日の家からそれほど遠くない場所で起きていた。


「しんちゃん、行くよ。」


 家から出てきた琴波さんに声を掛けられた。


「野次馬?」


「違う!ボランティア!ケガ人いるかもしれないでしょ。」


 近くへ行くと、大勢の野次馬がいて、近づくどころではなかった。家が一軒燃えると、これほどの煙と熱が発生するのか、と心日がぼうっと見ていると、伊賀高の生徒2人が声をかけてきた。


「おい、何してるんだ。」


 心日は名前も知らない伊賀高生に気安く声をかけられたので、無視を決め込んだ。


「なに無視してんだ?お前B組の生徒だろ?ここがどういう場所か知ってるのか?」


「オレはただのボランティアで来てんだよ。気安く声かけんな。」


「なんだと?」


 喧嘩腰になる丸刈りの男を、もう1人の眉が太くメガネをかけた男が抑えた。


「落ち着けって、こんなやつに構わず行くぞ。」


 どうやらA組の生徒らしかったが、心日はこの火事がただの火事ではないということを、彼らの言動から感じ取った。


「しんちゃん帰るよ。やっぱ、ボランティアどころではないわ。すごく火の回りが速いし、邪魔になるだけから。」


 ますます激しくなる炎と煙を背に、2人は家に向かった。


 家に帰る途中、公園の横を通ると、琴波が肩を叩いて言った。


「しんちゃん、あの白い山みたいな遊具見て、横に人の頭みたいなの見えない?ちょっと見てきてよ。」


 心日がふわふわドームに近づくと、若い男性が1人倒れていた。心日は、琴波の方を向いて、手招きした。



「ひどい、そこら中火傷して…、しんちゃん、救急車!」


 その声に反応するように、それまで全く生気が感じられなかった男はふらつきながら立ち上がった。心日は餓鬼がまた出現するのかと身構えた。


「やめろ、電話するんじゃない。」


 男は声を絞り出し、琴波に訴えた。


「でも、そのままじゃ死にますよ。」


「とにかく電話…は…。」


 気を失った男は琴波に覆いかぶさるように倒れた。


「琴ねえ、だいじょうぶ?」


「な訳ないでしょう。」


 身長が180センチはありそうな男に、潰されそうになりながら琴波は言った。


 心日は男を担ぎ上げ、家まで運んだ。焦げた匂いと若干の血の匂いが心日の鼻をついた。


「仕方ない。家で面倒見ましょう。」


「そんな、…絶対にやばいやつだって、琴ねえ。」


「ちょっとの間だけよ。歩けるようになったら、出てってもらうから。しんちゃんも覚悟決めなさい。」


 心日は、Aクラスの生徒とこの男がつながっているような予感がして、胸がざわついた。




 次の日、輝空にだけはこのことを話した。


「Aクラスかあ、だとすれば、風魔の強いやつか、餓鬼かもしれないな。でもその人の様子だと餓鬼ではないから、風魔か。…あとバンパイアという線もあるなぁ。するとかなりヤバいぞ。」


「やっぱり先生に相談するしかないな。」


 立ち上がった心日の服を輝空は引っ張って座らせた。


「まあ、待てよ。一回見せてくれよ。その男、なっ、琴ねえも見たいし。…お前ん行くわ!」


「いいけど、変なこと言うなよ。」


「変なことってなんだよ。お前が琴ねえのことを本当のお母さんみたいに怖がってることか?」


「怖がってなんかいねえよ。」


「ほら、当たった。クククク。」


「変な笑い方するなよ。」


 輝空は、3日後心日の家へ行くことにした。3日待ったのは、ちょうどテスト期間と重なった。という高校生らしい事情で、特に寮生である輝空は、テスト期間中外出禁止という決まりがあるからだった。



 3日経つと、流動食を食べられる程度に男は回復していた。琴波に言わせると「普通の人の3倍」という回復力だった。また、男はあまり話したがらなかったが、陽介ようすけという名前だけは教えてくれた。



「琴ねえってどんな人かなあ、オラ、ワクワクするゾォ!」


「なんだよ、アイデンティティか?似てねえから。」


 約束通り輝空を連れてきた心日は、家まで数メートルというところで、琴ねえの叫び声を聞いた。


「琴ねえ!」


 心日は家に向かって走る途中、陽介を担いで逃げる女性らしき人影を目にした。


「しんちゃん、あいつを追って。」


 琴波の声を聞いた心日は、カバンを家の入口に放り投げ、2人を追った。


「オレも行くぜ!」


 輝空も続いた。2人が陽介を担いだ人物に追いつくのに、それほど時間はかからなかった。


「悪いことは言わない。私たちのことは諦めて帰りな。」


 陽介を担いでいたのは、やはり女性だった。女は陽介をゆっくり歩道に置くと、額の前で指を交差した。女性の後ろに、赤毛で大きな目をした子供のような妖怪が見えた。


「お前、風……。」


 風魔と言おうとした輝空の口を心日はふさいだ。まだこちらの正体を明かしてはいけないと思ったからだ。


「この町の人間は信用できない。どうしても私たちを止めるなら、あなたたちを敵とみなして攻撃する。」


「なぜだ。オレとあの家にいる人は、この男の人を介抱したんだぞ。」


 心日は正論で返した。


「フッ、この男が頼んだのか?そうじゃないだろう。そういうのを余計なお節介と言うんだ。それに隠したって分かる。お前たち伊賀高の生徒だろ。」


「ひねくれたやつだなあ、やっちまおうぜ心日。」


 輝空はやる気満々の様子だ。


「やっちまう?相手の力も計れない青二才が、殺しはしないが、1ヶ月くらいは立てなくしてやる。かかって来い。」


 やる気満々の2人に対して、心日は両手を広げて女性の方へゆっくりと歩いた。


「オレは、あなたたちとは、戦いたくない。せっかく繋いだ命を絶やすようなことはしたくない。」


「今さら分かったようなことを。」


 女は両手から青い炎をあげた。


「やめるんだ、二千翔にちか。」


 気絶していたと思っていた陽介が声を上げた。


「この人たちは悪くない。伊賀者だが、家を焼いたやつらとは関係ない。」


 そして心日の方を向いて言った。


「オレのことは、もう大丈夫だから、このまま行かせてくれないか。彼女が家に押し入ったことは謝る。君達の誠意には心から感謝している。」


 二千翔と呼ばれた女性も両手を下ろし、戦いの意思がないことを示した。


 その時、心日の後ろから無数の矢のようなものが飛んできた。


 陽介は二千翔を庇うように立ち上がり、炎の幕を作ったが、数本の矢は防ぎきれず、陽介の体を貫いた。


「B組のやつらが何でいるんだ?お前たちでは相手にならんから、下がってろ!」


 火事現場にいたA組の生徒が現れて、心日と輝空を押しのけた。


「陽介!」


 二千翔は倒れそうになる陽介を支えた。


 A組の2人は両手に水の塊を作り出すと、槍のような形に変化させた。


「二千翔さん!」


 心日は思わず叫んでいた。


 4本の水の槍は、二千翔に向かって一斉に放たれた。心日の声に反応していた二千翔は青い炎を出現させ、全てを蒸発し、消し去った。


 立ち上がった二千翔は、A組の生徒に対する怒りをあらわにして、両手の炎をさらに燃え上がらせた。


「お前たち、皆殺しだ。」


 A組の2人は、近づく二千翔に水の矢を無数に放ったが、二千翔の足を止めることはできなかった。


 二千翔と高校生の能力差は歴然としていた。丸刈りの男をキッと睨みつけた二千翔は、燃える手で男の右手首を掴んだ。男はやや狼狽えながらも、防御となる水の膜を全身に作った。しかし激しく燃える二千翔の炎を阻むにはあまりにも劣弱な技だった。水は一瞬で水蒸気と化し、あたりを霧のように包んだ。炎は皮膚と肉をじりじりと焦がし、男を痛めつけた。まるで愛する人を傷つけた憎き敵を二千翔がいたぶっているように見えるほど、一方的な戦いだった。男は声にならない叫び声をあげ、苦痛で体を強張らせながら倒れた。眼鏡の男は、相方の右手が真っ黒に焦げるのを見て、水の攻撃を諦めた。武術での勝負に切り替え、短刀を抜き、最短距離で二千翔の首を狙った。だが、その刃は二千翔に届くことはなかった、二千翔には男の動きがスローモーションのように見えていたかもしれない。それほどまでに2人のスピードには差があった。二千翔の左手から発せられた火球が、凄まじい速さと熱で男の胸を貫き、男の抵抗を許すことなく命を絶った。


「おい、B組のやつ、何ぼうっとしてるんだ!」


 手首を焼かれた男は震えながら、心日たちに助けを求めた。その横に立った二千翔は、心日を見て言った。


「あんたら2人も後で殺してやるから、よく見ておきな!」


 二千翔の怒りは、もう止められそうになかった。両手から発せられた炎は、A組2人の体を包んだ。まさに断末魔の叫びとも言うべき声が一瞬だけ響き、2人は焼却された。それを見た心日は恐怖で言葉を失った。


「地獄の業火に焼かれて死にな。」


 2人の体は骨だけになり、あたりには、異臭が立ちこめた。


 心日と輝空は再び二千翔と対峙することになった。


「あんた、やっぱり風魔だな。」


 輝空の言葉を聞いた二千翔は、輝空をキッと睨みつけた。


「風魔?風魔って何か知っているのか。」


「…」


「風魔なんて者は存在しない。伊賀を抜けた者をお前たちがそう呼んでいるだけだ。私たちは、生まれた時から伊賀者として生きることを運命づけられ、その意思と関係なく、戦いに駆り出された。そんなのが嫌で、陽介と私は逃げてきたんだ。逃げるのがそんなに悪いことなのかい?」


 このトラブルに巻き込まれただけの2人は、全く事情が分からず、返す言葉はなかった。


「私たちは能力も隠して、普通の人間として暮らしてたんだ。それを、あんたらは何もかも奪っていった。」


 二千翔の火球が輝空に飛んだ。


「輝空!」


 輝空の胸に火球が当たるのが見えた。しかし燃えたのは制服だけで、体には、火傷の跡すらできていなかった。


「熱くない。」


 輝空が信じられないという表情で、心日を見た。


「これがぬっぺっぽうの能力か。ただ体がぶよぶよになるだけかと思っていたけど、火の耐性が強いというわけか。」


 輝空はA組の生徒が戦っている間に、自らが唯一できること、ぬっぺっぽうの憑依を行っていたのだった。


「よし、それじゃ、やってやるぜ。目には目を火には火をだ。」


 両手で指を鳴らし、二千翔に対抗するように、拳を炎で包んだ。


 輝空はやる気だったが、心日には、とても叶わないことが分かっていた。


「輝空、止めろ!。叶うはずがない!さっきの見ただろう。」


「心日くんはよく分かっているようだ。それでは、爆弾にマッチ棒で対抗するようなものだ。賢い人間のやることではない。」


 陽介が血を吐きながら、体を起こした。


「二千翔、最後の願いだ。この子達を見逃してやってくれ。恩を仇で返したくない。」


 二千翔はしばらく考えた後、炎を鎮めた。


「分かったよ。陽介の言う通りにする。」


「君たちは、この世の中のことがまだ見えていないかもしれないが、伊賀とて、正義ではない。転生様と呼ばれる得体の知れないリーダーたちが、目的もないまま大勢を戦わせているようにわたしには見える。そして今日、命を失った2人の若者も、伊賀に生きていなければ、こんなことにはならなかっただろう。心日くん、きみも伊賀に生きるのなら、自分の正義はどこにあるか、よく見極めて戦ってくれ。」


 2人には、その意味がよく分からなかったが、別れの間際、真剣に語る陽介の言葉は、心に響いた。


 二千翔は陽介の体を抱き上げ、2人を見た。


「私はお前たちを許したわけではない。今度会った時は、あいつらと同じだ。覚悟しておけ。」


 心日は立ち去る2人を無言で見送った。あたりには異臭と、骨だけが残り、炎と水の戦いの凄まじさが、感じられた。


「どうするよ。この骨。…学校に連絡するか?なんとか処理してくれるだろ?」


 気を張っていた輝空が力なく言うと、その後ろに人影が現れた。後藤先生とA組の生徒だった。


「救援というわけにはいかなかったか。」


「君たちは無事か?」


 2人が頷くと、一緒に伊賀高に行くように言われた。心日は、風魔とは知らずに男を介護したこと。連れ去る女性を追いかけると、殺されかけたこと。男のおかげで助かったことなどを話した。ただ、二千翔が言った風魔のことや、陽介が言った転生様のことは言わなかった。なぜか自分達が触れてはいけないことのように感じたからだった。そして、それは輝空も同じだった。










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