第2話 帰宅
次の日、登校して教室の自分の席に着く。
唯は何も無かったかのように、いつも通り本を読んでいる。昨日、告白を了承したあと、恋人同士なんだからということで、名前で呼び合おうと僕が提案した。彼女は快く頷いてくれた。
昼。一緒にご飯を食べようと、唯が僕の席まで来た。僕の両親は共働きで、顔を合わせない日も少なくない。お金を毎日置いてくので、それで適当に売店で済ましている。対して唯は弁当だ。自分で作っているらしい。
「司にも作ってあげようか。」
「いや、さすがにそれは申し訳ないよ。」
「そう。遠慮しなくていいのに。」
嬉しい提案だが、さすがにそこまでお世話になる訳にはいかない。
「今度、どこか行こうか。」
「デートってこと?」
「そう。」
「そうだね…」
まだ付き合い始めた翌日だけど、確かにどこかに二人で行きたい。
「午後の授業なんだっけ。」
「物理じゃなかった?」
「ああ…」
あまり乗り気じゃないみたいだ。実は、唯はあまり勉強が得意じゃないらしい。
他愛もない話をして、昼食を終えた。
「それ、捨てとくよ。」
返事をする前に、僕の手にもつゴミを奪うように取って、ゴミ箱の方に歩いていった。
昼休みが終わり、授業が始まる。
授業中、視線を感じて、ちらっと見てみると
唯がこちらを見ている。目が合うと、唯は微笑んできた。少し恥ずかしくなり、目を逸らしてしまった。
全ての授業が終わり、帰宅時間となった。
「おーい!司!帰ろうぜ!」
友達の皆川 涼太(みなかわ りょうた)が大声で呼びかけながらこっちに来る。僕も帰ろうと、立ち上がるとグイッと腕を後ろに引っ張られた。振り返ると、唯が立っていた。
「ごめんね、皆川くん。今日から司は、私と帰るから。」
なんもそんな話はしていなかったので、驚いて何も言えなかった。すると、涼太はなにか察したようで、
「いいよ。でも、今度話聞かせろよ。」
と、耳打ちしてきた。涼太は、人をよく見ており、こういう所によく助けられる。
「そっか。じゃ、俺は一人寂しく帰ろっかな。」
そう言って、涼太は教室から出ていった。
「それじゃ、帰ろっか。」
ニコッ、と唯は微笑んで僕の手を握る。
しかし、その目は笑っていなくて、真っ暗闇だった。
◇◆◇◆◇◆◇
家に着いた瞬間、自分の部屋に行き、ベッドに潜り込んだ。ポケットから、ストローを取り出す。それを咥えて、司のことを考える。授業中、司のことを眺めていたら、目が合った。微笑んであげると、顔を赤くして目を逸らされた。とても可愛い。食べてしまいたいくらいだ。皆川くんには悪いけど、司には可能な限り私といてもらう必要がある。いつ、ほかの女と喋ったりするか分からないから。
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