第14話 《妖精》

 男は出会いを求めていた。

 それ故だろう、こんな胡散臭いアプリケーションに手を出してしまったのは。

 それが原因で男の運命は大きく変わってしまったのだ。


一郎「つい、深夜テンションで登録してしまったが…。こんなアプリひとつで人生が変わるわけないよなぁ…。はぁ…。出会いが欲しい…。」

ミカ「その願い、叶えてあげる!」

一郎「え?だれ!?」

ミカ「私よ。私。」

一郎「私わたし詐欺!?」

ミカ「失礼ね!私は妖精。出会いの妖精。あなたに素敵な出会いをあげる。まずは好みのタイプを教えてくれる?」

一郎「信じられない!まさかこんなことが起こるなんて!こんなチャンスは二度とないかもしれない…。正直に話してみよう!」


 男は純粋だった。

 その上、すこし馬鹿だった。


真二「好みのタイプかぁ…。そうだなぁ。純粋で…表裏が無くて…なんだか、守ってあげたくなるような娘。かな!」

シホ「なるほどねぇ…。ふふっ。よぉくわかったわ。それじゃあ早速、あなたのお相手を探しに行きましょうか。」

真二「え!?もう行くのか?」

シホ「ええ。私たち妖精に導かれた人たちは、永遠の絆で結ばれる。それこそ、一生に一度の出会いをあなたにプレゼントしてあげる。」

真二「でも…ほら!なんか…準備とか、しなくていいのか…?」

シホ「そんなものいらないわ。ありのままのあなたを愛してくれる相手に巡り合うんだもの。」

真二「そうなのか?まぁ、妖精が言うことに文句つけたっていいことないよな。よっしゃ!行くか!」

シホ「うんうん。その意気よ。」


 そして、男たちは街に繰り出した。


シホ「あなたの好きなものは?」

真二「漫画かな?あとゲーム!」

ミカ「あなたの苦手なものは?」

一朗「ホラー映画かなぁ…。」

シホ「あなたの欠点は?」

真二「飽きやすいこと…とか?」

ミカ「あなたの特技は?」

一朗「柔道。かな。」


 男たちは妖精に連れられて、"運命の相手"に出会った。


一郎「なぁ、俺たち何時から遊んでたっけ?」

真二「え?ああ…何時だったかなぁ。忘れた。」

一郎「今何時?」

真二「一時。」

一郎「え!まじ!?終電ないじゃん!」

真二「大丈夫だよ。」

一郎「大丈夫じゃないよ!泊まる金とかないし!どうしよぉ。」

真二「俺ん家がある。」

一郎「え…?」

真二「俺ん家近いんだ。ちょうど明日まで親いないし。…俺ん家来いよ。」

一郎「ほんとに?」

真二「俺たちの仲だろ?遠慮すんなよ!」

一郎「うわぁ!まじか!助かるよ!ありがとう!!…そういえば俺たち、どうやって会ったんだっけ?」

真二「は?このゲーセンで、隣の台でゲームしてて、意気投合して…」

一郎「いや、その前!誰かに案内されてたような…。」

真二「そう言われてみれば、そうだったような…。」


 彼らを遠くで見守りながら、妖精たちは語らう。


シホ「こうして彼らは運命の出会いを果たし、永遠の絆で結ばれましたとさ。」

ミカ「めでたし。めでたし。だね!」

シホ「ええ、彼らは私たちのことを忘れて、仲良く生きていく。」

ミカ「新しいカップルの誕生…。それは私たちにとって至福のひと時!」

シホ「妖精は気ままな存在。」

ミカ「だれも私たちを止められない!妖精の力は恋の力。」

シホ「恋する心は誰も邪魔できない。人それぞれの望みなんて関係ない。」

ミカ「私たち妖精は、私たちの目指す楽園のために働く!」

ミカ・シホ「たとえ人間という種そのものを、破滅に導くとしても……」

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