第12話 《占い師》
よく当たる占い屋。そんな評判が定着してからというもの、最初に比べて儲けがぐんと増えて、店は順風満帆。
しかし、この店の占い師は別に霊能力を持っているわけでも、予知能力があるわけでもない。そんな占い屋が繁盛した理由とは…
「これも、アンタらのおかげだよ。」
占い師は、黒い衣装で統一した怪しげな集団と、店の裏で話していた。
「礼なんていいんだよぉ。こっちも忙しくなってきたんだ。もっとお駄賃を上げてくれないと、いつばっくれるかわかんないぜ。」
「はいはい。わかったよ。これが今月分だ。また頼むよ。」
先月よりも少し増えた"お駄賃"を手に怪しげな集団は去っていった。
つまりこの占い屋、共犯者の助けを借りて名を上げてきたのである。
そのためテレビ撮影はお断り、建前上は直接訪れる本当に困っている人のみを占うのだ、との触れ込みである。
だが実際のところ、占い屋にやってくるのは恋の悩みだの、博打がどうのだの、大した問題を抱えた人は訪れない。そんな奴らには、ありきたりで適当なことを言って、それと似たようなことを共犯組織に起こさせる。大体は、悪いことがあるから気をつけなさいと言っておいて、ガラの悪い連中に絡まれる現場を演出する。彼氏が欲しいだのなら、それを少し男前な知り合いに助けさせる算段をつければいいのだ。
本当に困っている人は、占いなどに頼るという考えさえ浮かばないんだろうと、占い師は繁盛し始めてから気づいたのだった。
そんな占い師に転機が訪れた。
本物の霊能力に目覚めたのである。
昨日、店を閉めた後、酒の飲み過ぎで生死の境をさまよった。するとどうだろう、いわゆる幽霊たちの声が聞こえるようになったのである。
店に来る客の背後霊に悩みを聞いて、それを口にすると客には驚かれ、大体の背後霊が客の悪いところを教えてくれた。それを指摘してやると、なるほどその通りだ、と客も頷かざるを得ない。本当にどうしようもないことに関しては、正直に話すようになった。
それを機に、共犯者たちには金がもう払えなくなったと言って追い払った。後で泣きついてもしらねえぞ、と捨て台詞を言われたが、店は今まで通りに繁盛し続けた。
占い師は、今までにない充実感を感じていた。その矢先、テレビ番組に出演してほしいといういつもの誘いがあった。
今度は後ろ暗いこともない。自分の力で人を占うことができると自信を持って出演を決意した。
当日、小さな番組に出演した占い師は、いつも通りに背後霊と話すために客からは見えない所に隠れようとすると、カメラがある前でやってくれとスタッフに留められてしまった。仕方なく話し始めると、スタジオは凍りついた。
スタッフには明らかに頭がおかしい人物だと決めつけられ、放送はされたものの放送局側の演出のせいで、ゲストと結託していたのではと疑われても仕方がない放送内容になり、その評判は瞬く間に広がった。
当然客足は減ることとなった。
結局、場所を変えて再開することにした占い師は、また無名の状態に戻ることになった。
「今なら本当に当てられるのに…」
『今まで悪いことをした罰だねぇ。また最初から頑張りな。』
独り言に対して、自分の背後霊である祖母が言葉を返す。
「あんとき、ばあちゃんが言ったように、テレビ撮影なんて断っておけばなぁ…。」
『だから、言ったでしょう。あんたは向いてないってぇ。』
「今度から俺が喋らないで、ばあちゃんが客の背後霊と話してくれれば…!」
『あんたは、まぁた…懲りないねぇ…。馬鹿は死んでも治らない…。じいさん譲りだねぇ…。』
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