3

「エメラルドの瞳…まさかな」


目元を覗き込まれ、そんなことを口にする。


エメラルドの瞳?

もしかしてここでは俺の容姿は現実世界とは少し異なるのかもしれない。


あとで鏡でも探してみるか。


ってそうじゃなくて、いつまでこの体勢なんだ。

そろそろ本格的に首が痛くなってきた。


「えっと、ちょっとお名前がわからないのですが、そろそろ離してもらっても良いでしょうか。首が痛い…」


「俺の名前がわからないのか?」


いや、そっちに疑問を持つ前にとりあえず離してくれ。

俺の首反り返るんじゃないかこのまま。


必死に顎を下に引きながら、会話を続ける。


「すみません、存じ上げません」


何ともびっくりした顔を見せ、やっと顎から手を離してもらえた。

あーちょっとピリピリする。絶対、筋肉痛になるやつだ。


というか、自分の名前を知らないってだけで驚きすぎじゃないか?

状況の把握できてない赤ちゃんみたいな顔してるけど…

もしかして、ここではこいつはすごく有名人だったのだろうか。


でも知らないものは知らないんだし。

どうせ夢から冷めれば帰れるんだ。ここで何が起ころうと関係ない。

とりあえず一刻も早く夢から醒めて現実世界に戻る方法を探さねば。


「俺は、ウィリアム=タッカードだ。ここレドルフ学院で実践魔法の授業を担当している。得意なものは召喚魔法だ」


やっぱりこの世界は魔法を使うことが当たり前の世界ということか。

そしてどうやらここは魔法学校ということらしい。


「ここではいろんな魔法を習うということですか?」


「あーまあ、そうだな。基本的な知識や実戦は全員が行うが、それぞれの特色や進みたい方向で他の授業は取ってもらう」


「自分で決めて取るんですか?」


「あぁ。それぞれの特性によって学ぶことが変わるからな」


「特性…?」


「…特性は大きく分けて4つ。まずは攻撃魔法を主とする攻撃型、攻撃からあらゆるものを守ることを主とする守備型、攻撃型や守備型などのダメージを回復させることを主とする回復型、魔法で回復薬や毒、マシーンなどを生み出す製造型、この4つだ。他にも細かいものがいろいろあるが大体こんなもんだ」


なるほど。

夢にしてはだいぶ作り込まれた世界だな。

魔法を使うにしても人によって特色や用途あるということか。


「ちなみにタッカードさんは何型なんですか?」


「俺は攻撃型だが、回復型も少し勉強したから使える」


2つも型を持つことができるのか。

俺はそもそも魔法を使えるのだろうか。


この学校にいて、授業を受けているということは多分何かしら使えるんだとは思うけど、自分は多分守備とか回復とかメインな気がする。

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