夕顔亭のコーヒーについて
ある日、俺はいつものようにカウンターでコーヒーを飲んでいた。
マグカップの中の黒い液体はまろやかかつ酸味とほどよい苦みがあり、いつものように美味しい。
少なくとも、チェーンの喫茶店で飲むよりも遥かに俺は夕顔亭のコーヒーのほうがお気に入りだ。
夕陽はそんな俺の思惑に気づかず、鼻歌まじりに洗った皿を拭いている。
「夕陽、このコーヒーの原産地ってどこなんだ?」
「なぁに友樹、ようやくうちのコーヒーに興味持った?」
「まあな、毎日口にしているものくらい誰にだって興味が出る。おそらく俺の身体の90%くらいの水分は夕顔亭のコーヒーからできているからな」
冗談めかしてそう言うと、夕陽はくすくすと笑って応える。
「確かにね。友樹は毎朝三回は私が淹れたコーヒー飲んでるもん。そんなに私が淹れたコーヒーが好きなの?」
「上手く言えないが、赤子にとっての母乳くらいには俺にはコーヒーが大切だ」
「ふふ、私のおっぱいも好きなくせに。どうせなら今の飲んじゃう?」
夕陽は胸をはだけさせて誘惑してくる。こうした爛れた冗談も俺たち二人だけに許された文句だった。
「今夜の楽しみに取っておく」
俺はそう言うと、コーヒーを飲みほした。
少し温くなった液体が俺の喉を通りすぎてじんわりと暖まる。
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