第66話

 


『答えられないエンディミオン様にヒントでぇす。このヒントで正解しなければ恋人とは破局いたぁします。』


無機質な声が無常な宣告を告げる。


でも、ヒントはくれるようだ。


果たしてこの鬼畜仕様のイベントでもらえるヒントは一体何なのだろうか。


それにしてもこの声、ところどころイントネーションがおかしいような気がする。


『ちゃんとステータスの恋人の欄を見てくだぁさい。』


・・・ん?


恋人の欄を見ろってか?


まさか、また誰か知らないうちに恋人になってしまったりする・・・?


いや、でも最近貰うのは悪だぬきのぬいぐるみだけで他のものを貰った記憶がないんだけど・・・。


まさか、悪だぬきのぬいぐるみを100個受け取ると恋人が追加されているとかだろうか・・・。


オレは半信半疑のまま自分のステータスを確認し、交友関係を確認する。


「え・・・あれ?」


見間違いだろうか。


オレは数度瞬きをして何度も恋人の欄を確認する。


だけれども、何度見ても同じ内容だ。


見間違いではない。


「いつの間に・・・ニャーネルさんが恋人から外れたんだ・・・?」


そう。


いつの間にかオレの恋人からニャーネルさんが外されていたのだ。


いったいいつの間にだろうか。


全く気が付かなかったんだけど。


ってか、恋人関係が解消されたことをオレが知らないっておかしくない?


普通通知くらいあってもいいよね?


「オレの恋人はミーシャさんとエリアルちゃんです。」


オレはそう答えた。


『あったりです。では第二問です。ミーシャさんと初めて会った場所に30分以内に行ってください。その後30分以内にエリアルさんと初めて会った場所に行ってください。』


「ふぅ・・。」


どうやら一問目は無事に正解したようだ。


一問目から苦戦してしまった。


まさか、ニャーネルさんが恋人から外れているとは思わなかったのだ。


でも、またすぐに二問目の問題が流れてくる。


今度は制限時間付きだ。


まあ、二人に会ったのはどちらもこの近くなので30分とかからないだろう。


ミーシャさんと初めて会ったのは街を出てすぐのところだったはずだ。


オレは早歩きでミーシャさんと初めて会った場所に行く。


10分も経たないうちにミーシャさんと初めて会った場所にたどり着くことができた。


時間制限があったから、初めて会った場所にたどり着くまでの間になんらかのトラップがあったりするかなと思っていたが、どうやらそうではないらしい。


何事もなくミーシャさんと初めて会った場所にたどり着いてしまった。


懐かしいミーシャさんとの思い出がオレの脳裏に浮かぶ。


オレを颯爽と助けてくれたミーシャさんはかっこよかったな。


あの時はまさかミーシャさんと恋人になれるとは思ってもみなかったし、ましてやミーシャさんが美琴姉さんだということにも気づいていなかった。


そうして物思いに耽っていると、突如目の前に暗い影が落ちた。


「なっ・・・!」


目の前には皺だらけの顔がある。


色は浅黒かった。


そうして、鼻が異様にねじ曲がっており、耳がとんがっている生き物がいた。


そう。ゴブリンである。


ミーシャさんと初めて会った時もオレはゴブリンに出会った。


そうして、ゴブリンにやられそうになっていたのだ。


それをミーシャさんが助けてくれたのだった。


「オレはアレからレベルが上がったんだ。だからもう、前のようにミーシャさんに助けてもらわなくても大丈夫だ。」


オレはゴクリと息を飲んだ。


オレだって少しは強くなっているはずなんだ。


レベルだって上がっているし。


ミーシャさんやエリアルちゃんやマコッチと一緒にパーティーだって組んだこともある。


少しは戦闘経験もある。


あの頃とはオレは違う。


そう思って、オレはゴブリンをギッと睨みつけた。


オレは片手剣を取り出すと、ゴブリンに向かって構えた。


この片手剣はマコッチが作成してミーシャさんがオレに買ってくれたものである。


値段の割に切れ味が良く、使いやすいのが特徴だ。


マコッチはオレにこの剣をくれると言っていたのだが、それをミーシャさんは許さなかった。


なぜだかわからないけれど。


マコッチから剣を購入したミーシャさんはその剣をオレにくれたのだった。


とても大切な剣だ。


だって、親友であるマコッチが作成して、恋人であるミーシャさんがプレゼントしてくれたのだから。


「えいっ・・・。やあっ・・・。とぉ・・・。」


オレは掛け声とともに、ゴブリンに向かって剣を振り下ろす。


『・・・ぐぎゃっ?』


ゴブリンは悲鳴を上げてその場に突っ伏した。


ってか、あれ悲鳴か?


なんか疑問符ついていなかったか?


『残り時間30分。エリアルさんとの出会いの場に移動してください。』


どうやら、ミーシャさんと初めて会った場所っていう問題は無事に終了したらしい。


エリアルちゃんとの出会いの場にオレは移動する。


確かエリアルちゃんとの出会いは街の中だった。


オレは、エリアルちゃんとの出会いの場に向かった。


エリアルちゃんとオレが初めて出会ったのはエリアルちゃんのお店の中だ。


そう思って、エリアルちゃんのお店に向かったがドアに鍵がかかっているようで開かない。


「エリアルちゃん。いる?」


トントントンとドアを軽く叩いて家の中に向かって問いかけてみる。


「・・・・・・・・・。」


しかし、いくら待っても返事はない。


もしかして、まだログインしていないのだろうか。


そう思ってステータス画面からエリアルちゃんの状況を確認するとログアウトしている状態だった。


この場合、どうなるのだろうか。


でも、出会った場所はエリアルちゃんのお店の中だが入れないのでどうしようもない。


おまけしてくんないかなぁ。


だって、イベント起こすタイミングも選べないわけだし。


こうして、入れない場所も普通あるよね。


『残り10分です。』


・・・おまけしてくれないようだ。


やっぱりエリアルちゃんのお店の中に入らないといけないようだ。


なに、この鬼畜仕様。


 


 


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