第65話

 


 


プレゼントされたものは受け取り拒否ができない。


予想していたとはいえ、実際に100個を超える悪だぬきのぬいぐるみが届いているのには驚きを隠せなかった。


これ、いつ破局イベントが発生するのだろう。


受け取った瞬間に破局イベントが発生しるのだろうか。


それとも、しばらく猶予があるのだろうか。


タイミングについて、寧々子さんは何も言っていなかった。


そのため、どのタイミングで破局イベントが発生するかオレにはわからないのだ。


確かなことは、悪だぬきのぬいぐるみが100個以上集まってしまったということだけ。


それはつまり、破局イベントが発生するのが確定したということだ。


オレは意を決して悪だぬきのぬいぐるみを受け取った。


手持ちの悪だぬきのぬいぐるみが一気に増えていく。


数えてみると、悪だぬきのぬいぐるみは256個ほど溜まっていた。


「・・・破局イベント2回分っ!?」


まさかの破局イベント2回分の悪だぬきのぬいぐるみが溜まっていた。


オレは愕然としてその場に座り込んでしまっていた。


一回だったら・・・破局イベントが一回だったらまだなんとかなるんじゃないかと思ったけれども、まさかの2回分。


いや、でも。


破局イベントって悪だぬきのぬいぐるみが100個集まったら発生するってだけで、200個集まっても破局イベント自体は1回しか発生しないのだろうか。


そう思った瞬間だった。


パンパカパァ~~~~~ン!!


辺りにそんな音が響き渡ったのは。


「な、なんだこの音。」


近くにいた人たちがオレの方を振り向く。


そう、音はオレのすぐ上空から響いていたのだ。


周りの視線がオレに集中する。


逃げたいんだが・・・。


『おめでとうございます!!エンディミオン様が初めて悪だぬきのぬいぐるみを100個集めました。これより破局イベントが解放されます。』


辺りに機械の音声が響き渡る。


男の声なのか女の声なのか判断することができない無機質な声だ。


「あいつ、破局イベント解放しやがった・・・。」


「あの名前ってエリアル様の!!?」


「確か、ニャーネルさんの恋人じゃなかったか!!?」


オレの名前が辺りに響き渡るとオレの名前に反応する人たちがちらほらと出始める。


流石オレ・・・。ニャーネルさんとエリアルちゃんのお陰で知名度がそれなりにあるようだ。


『破局イベントは恋人のことをどのくらい覚えているかを答えていただくイベントになります。もちろん。この場で答えるのではなく、答えが場所であるならば、その場所に制限時間内に移動していただきまっす。』


んぅ!?


恋人のことについて答えていけばいいのか?


それならかなり簡単だと思う。


ただ、問題は場所だな・・・。


制限時間内にたどり着けとか・・・。


すんなり歩いて行けばたどり着けるのだろうか。


それともたどり着くまでに何かしらの障害が待ち受けているのだろうか。


っていうか、最後無機質な声なのになんか、噛まなかったか?


機械の音声かと思ったけれども違うのだろうか。


『では、さっそく第一問です。恋人の名前をお答えください。』


・・・。


なんだこれ。


以外に優しい質問なんだけど・・・。


何か裏があるのだろうか。


「ミーシャさんとエリアルちゃんと不本意ですが、ニャーネルさんです。」


『ブッブーーーーッです。』


オレがキャッティーニャオンライン上での恋人の名前を答えると、機械の音声は盛大にハズレだと宣言した。


ってか、ただ「ハズレです。」って言えばいいのに、なんでわざわざ「ブッブーーーー」なんて言うのだろうか。それに、最後わざとらしく「です。」がついているし。


もうなんだかツッコミどころ満載なんだけど。


ってか、ちゃんとに名前を言ったのにどうして違うって判断になっているのだろうか。


もしかして、恋人の名前は一人だけしか答えられない仕様なのだろうか。


そうだよな。


普通は恋人は一人だけだもんな。


そういうことか・・・?


でも、ここで間違えてしまったということは、オレはミーシャさんたちとは破局するということだろうか。


まさかの一問目で不正解になるとは思わなかった。


『回答は3回まで可能です。あと2回間違えると破局イベントは強制終了となり、恋人たちとの関係は強制的に解消されます。』


一問目で不正解になってしまったオレは打ちひしがれていたが、無機質な声が回答は3回まで可能だと教えてくれた。


まさか、3回まで回答可能だとは思わなくて思わず目に嬉し涙が浮かぶ。


よかった。


これで、ミーシャさんと別れなくても済むかもしれない。


『恋人の名前をお答えください。』


「ミーシャさんです。」


前回は3人の名前を回答してしまったからダメだったのだろう。


そう思って、一人だけの名前を告げる。


もちろん、答えるのは一番最初に恋人になったミーシャさんの名前だ。


『ブッブーーーーーーーーーーーッです!!』


あ、あれ・・・?


これも違うの・・・?


え?なんで??


3人の名前を答えてしまったからいけないんだと思ったんだけど、1人だけの名前を答えてもダメだなんてどうしてだろうか。


なんでだ・・・?


理解が追い付かなくて思わず思考が停止してしまう。


あと、一回間違えたらミーシャさんとの恋人関係が解消されてしまうのに・・・。


オレは、どうしたらいいんだ。


っていうか、なんで恋人の名前を答えるだけなのに正解できないんだろうか。


だって、これってオレのことだろう?


どうしてなんだ・・・?


 


 


 


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