第67話
エリアルちゃんと出会った場所、すなわちエリアルちゃんの家に入れないまま時間だけが過ぎていく。
あと、もう少しなのに。
このドアが開けばクリアできるはずなのに。
なんでこんなに鬼畜な仕様なのだろうか。
もう、絶対このクリアできそうで出来ないイベントは寧々子さんの策略のような気がしてならない。
まあ、通常だったらエリアルちゃんはほぼ毎日キャッティーニャオンラインにログインしているのだから、エリアルちゃんの家に入ることなど簡単なことだっただろう。
しかし、現在破局イベントの所為でエリアルちゃんはキャッティーニャオンラインにログインをしない状態が続いている。
オレもしばらくはログインする予定じゃなかったんだけど、寧々子さんに脅されて仕方なくログインしたのだ。
よって、後10分でエリアルちゃんがログインしてくる可能性はほぼない。
もし、エリアルちゃんがログインしてこないまま制限時間が過ぎてしまったら破局イベントをクリアできなかったということになるのだろうか。
その場合、ミーシャさんとも破局してしまうことになるのだろうか。
そんな不安がオレの心によぎる。
『制限時間まぁで、あと、5分です。』
無機質な声が響く。
エリアルちゃんがログインしないまま5分が経過してしまった。
このまま時間が過ぎてしまうのだろうか。
『ヒントでっす。時間内に戻ってくれば一旦ログアウトすることも可能です。』
「え?」
破局イベント中にログアウトすることが可能なの?
時間内に戻ってくればってことは、5分以内に再ログインすれば破局イベントはクリアできるかもしれないってこと?
すっごいヒントじゃないか。これ。
こんな裏技みたいなヒントを教えてしまっても運営側としては問題ないのだろうか。
オレはエリアルちゃんがキャッティーニャオンラインにログインしていないことを再度確認してから、一旦ログアウトをすることにした。
☆☆☆
「はぁ~。もう、焦ったなぁ。」
キャッティーニャオンラインからログアウトしたオレはすぐさまエリアルちゃんこと、高城さんに連絡をする。
残り時間はあと5分しかないのであまり余裕がない。
『はい。高城です。優斗、どうしたの?』
高城さんに連絡するとすぐに電話に出てくれた。
よかった。
「ごめんね。急に電話しちゃって。実は・・・。」
それからオレはキャッティーニャオンラインでの破局イベントについて高城さんに説明した。
時間がないと焦っていたので正しく伝えられたかわからないけれども、高城さんは「わかった。」と一言だけ言って電話を切った。
オレは高城さんが電話を切ったことを確認するとすぐさま、キャッティーニャオンラインにログインしようとする。
「優斗ー?いる?」
ログインしようとしていると、トントンと部屋のドアがノックされ、美琴姉さんの声が聞こえてきた。
どうして、こんな急いでいるときに美琴姉さんが来るのだろうか。
でも、美琴姉さんを無視することもできないし。
「ごめん。美琴姉さん。オレ、今破局イベントの真っ最中ですぐにキャッティーニャオンラインにログインしなきゃいけないんだ。急ぎの用?」
美琴姉さんとはたくさん話をしたいが、そういう訳にもいかない。
もし、この破局イベントをクリアできなければミーシャさんと破局してしまうのだ。
きっと美琴姉さんもわかってくれるだろう。
「あら。もう悪だぬきのぬいぐるみが集まってしまったのね。わかったわ。私もすぐにキャッティーニャオンラインにログインするわ。絶対、優斗との間は邪魔させないんだから。」
美琴姉さんはそう言うと自分の部屋に戻っていったようだ。
よかった。
美琴姉さんもオレと同じ気持ちでいてくれているようだ。
オレは美琴姉さんが自室に戻ったことを確認すると、すぐにキャッティーニャオンラインにログインをした。
☆☆☆
「エンディミオン様。遅い。私に連絡してから何をしていたのかしら?」
再度、キャッティーニャオンラインにログインすると、目の前にエリアルちゃんがいた。
しかも仁王立ちだ。
「ご、ごめん。あのあと、美琴姉さんが部屋にきて・・・。」
「えっ!?それで、どうしたの!!」
美琴姉さんの名前を出した途端、エリアルちゃんが身を乗り出してきた。
「いや。時間がないから話は後にしてもらったんだ。」
「そ、そう。べ、別に心配しているわけじゃないんだからね。それより、制限時間まで後何分なのかしら?私に電話をしてきたときが残り5分だったんでしょ?」
「ああ。」
『残り、1分を切りました。』
エリアルちゃんの言葉で破局イベントの残り時間のことを思い出して、時間を確認しようとしたら、無機質な声がタイミングよく残りの時間を教えてくれた。
「1分っ!?」
「まあ!大変だわ!早くっ!!」
幸いにもここはエリアルちゃんの家の真ん前だったので、エリアルちゃんにドアを開けてもらって中になだれ込むように入った。
慌てていたので、エリアルちゃんも一緒だ。
『正解でっす。なんだ、間にあっちゃったんだ。つまらないの。』
「え?」
「え?」
今のは空耳だろうか。
無機質な機械音声が「つまらない。」とか言わなかっただろうか。
もしかして、この声はニャーネルさんだったりするのだろうか。
『では、つづきまして第三問でっす。それぞれの恋人の一番好きな食べ物を教えてください。』
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