第34話

 


「なんでっ!なんで高城さんが優斗の家に来るのぉ!?」


マコトが信じられないという顔で叫ぶ。


まあ、オレも信じられないけど。


「私もキャッティーニャオンラインをプレイしているからよ。一緒にプレイしましょうと誘ったの。」


「た、高城さんも!?ゲームするようには見えないんだけど!!」


「よく言われるわ。」


キャンキャン吠えているマコトがまるで小型犬のように見えた。


高城さんはマコトがいくら吠えても気にしていないようで淡々としている。


「まあ、まあ、いいじゃないか。マコトもこれで女性の友達が増えるだろう?」


「むぅ!悠斗に言われたくない!それにきっと高城さんは・・・(私の友達ではなくって恋敵になりそうな気がする・・・。)」


「私が、なに?私はマコトとはとても良い関係が築けると思っているわ。」


マコトはなにかまだ言いたそうだったが、それを高城さんが笑顔で封じ込める。


マコトは何も言えなくなってしまったようだ。


「ううう・・・。」


と、小さな声で呻いている。


高城さんと一緒なのはそんなに嫌だったのだろうか。


やっぱりマコトも同性の友達欲しいと思うんだよね。


オレも同性の友達欲しいと思うし。


高城さんも話してみる限りだと悪い子には思えないし、ゲーム好きなところもマコトと合いそうだし、マコトの友達になれそうなんだよな。


だから、オレはオーケーしたんだけれども・・・。


「あー。マコトやっぱり高城さんがオレの家に来ることは反対か?マコトとの約束が先だったからマコトが嫌がるんだったら今回は高城さんに遠慮してもらうよ?」


まあ、無理に友達になれって言っても仕方がないことだしな。


友達というのは誰かに言われたから友達になるってわけでもないし。


自然と友達になるというのが正しい流れだろう。


「むぅ。それだとあたしが優斗を独占したいわがままなやつじゃん!高城さんいいよ!一緒にゲームしよ!(でも、優斗はあげないんだからね!)」


「ふふ。ありがと。マコト。」


どうやらマコトも納得してくれたようだ。


ほとんど強引だったかもしれないが。


ふむふむ。


可愛くて美人な女の子同士が戯れているのは目の保養になるしね。


「じゃあ、日曜日悠斗の家に行くわ。」


「ん?オレの家知ってるのか?」


「知らないわ。だから近くで待ち合わせしましょ。」


 「わかった。マコトはどうする?」


「もちろん!あたしも待ち合わせ場所にいくよ。(高城さんと二人っきりになんてさせないんだからっ!)」


こうしてオレたちは日曜日にキャッティーニャオンラインをオレの家でプレイすることになったのだった。




☆☆☆




「優斗、今日はありがとう。手伝いに来てくれて。友達と遊ぶ約束とかあったんじゃないの?大丈夫?」


「大丈夫。明日友達と遊ぶことになったけど、今日は予定ないから。」


「よかった。」


土曜日の朝、オレは美琴姉さんの借りているマンションにいた。


もちろん、美琴姉さんの引っ越しを手伝うためだ。


引っ越し業者が来るので対して手伝うこともないけれど。


そんな訳でオレは土曜日なのにも関わらず学校に行くときと同じ時間に起きて、電車を乗り継いで美琴姉さんのマンションにやってきたのだった。


「明日遊ぶのってマコトちゃん?」


「うん。そう。」


「ふふふ。いつまで経っても仲がいいのね。もしかして、マコトちゃんは優斗の彼女に昇格したのかしら?」


引っ越す荷物の最終チェックをしていると、美琴姉さんがオレに話しかけてきた。


もうほとんどの荷物を梱包しているので、業者が来る前に慌てて梱包することがないので、時間があまっているのだ。


「マコトは友達だよ。マコトが彼女だなんてあり得ないし。」


美琴姉さんは何を言っているのだろうか。


マコトが彼女だなんて天地がひっくり返ったってあり得ない。


だって、小さい頃からずっと一緒だったんだ。


オレと美琴姉さんとマコトで小さい頃からよく一緒に遊んだものだ。


マコトの家の両親が忙しいときはマコトはいつもオレの家に来ていたっけ。


母さんもマコトが来るとまるで自分の子供のように可愛がっていた。


だから、マコトはオレにとって弟や妹のような存在なのだ。


「そうなの?マコトちゃんかなり可愛いのに。優斗ってば見る目がないのね。」


「・・・可愛い?う~ん。可愛いのかな?」


「可愛いわよ。私が嫉妬しちゃうくらいには可愛いわ。」


「ええ!?それはないよ。美琴姉さんの方が美人だし、マコトよりずっと綺麗だよ。」


「まあ!優斗ってば!」


美琴姉さんってばマコトのことでオレをからかってばかりだ。


そんなにオレとマコトをくっつけたいのだろうか。


だから、オレは意趣返しとして美琴姉さんのことを褒め称えた。


怒られるかなと思ったが、そんなことはなく、美琴姉さんは頬を赤く染めて嬉しそうに微笑んだ。


その微笑みに思わずオレの胸がドキッと脈を打った。


おかしい。


美琴姉さんは実の姉なんだ。


なんで、美琴姉さんにドキッとしないといけないんだ。


「あのね。優斗、実はね・・・。」


ピンポーン。ピンポーン。


「あ。引っ越し業者かな?」


美琴姉さんが なにかを喋りかけた時に、訪問者を告げる呼び鈴が鳴った。


時間としてはちょうど引っ越し業者との約束の時間だ。


どうやら約束道りに来たらしい。


美琴姉さんは引っ越し業者を迎え入れるために席を立った。


しばらくして、引っ越し業者の人たちが部屋の中にあがってきた。


それからは荷物の搬出や引っ越し業者への対応で美琴姉さんとは、なかなか話すことができなかった。


美琴姉さんの言いかけた言葉がとても気になるのだが。


いったい、美琴姉さんは何と言おうとしたのだろうか。

 


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