第33話
「・・・悠斗ってキャッティーニャオンラインをプレイするのかしら?」
「えっ!?」
放課後、教室から出たところで後ろから女生徒に声をかけられた。
振り向くとそこには、分厚い眼鏡をかけた高城さんが立っていた。
「あ、高城さん。」
「キャッティーニャオンラインをプレイしているのかしら?」
「え、あ、はい。でも、どうして知っているんですか?」
「やっぱり。お昼休みに悠斗と知らない女生徒が話しているのを聞きました。日曜日に悠斗の家でキャッティーニャオンラインをやるそうですわね?」
どうやら昼休みにマコトと話していた内容が高城さんにも聞こえていたようだ。
それにしても高城さんがキャッティーニャオンラインの名前を聞いて話しかけてくるということは、高城さんもキャッティーニャオンラインをプレイしているのだろうか。
「ええ。日曜日にオレの家でキャッティーニャオンラインをマコトとプレイする予定です。」
「そこに私も加わってもいいかしら?私、これでもキャッティーニャオンラインでは一目置かれている存在なの。悠斗の悪いようにはしないと約束するわ。」
意外だ。
高城さんのイメージからはゲームをプレイするイメージなどなく、家では勉強をしているのかなと思ったのだが・・・。
「え、ええっと。マコトに一応聞いてみてからでもいいですか?あの・・・高城さんはマコトとは面識あります?」
高城さんのことオレよく知らないんだよなぁ。
こないだぶつかったくらいだし・・・。
って、高城さんがキャッティーニャオンラインをプレイしているって・・・。まさか、エリアルちゃんじゃないよな?
こないだプレイしているときにエリアルちゃんが高城さんかも。なんてちょっと思ってしまったりしたのだが、あの時は高城さんがゲームをするようには見えなかったから否定したのだが・・・。
いや、でも。そんな偶然あるわけないよな。
日本は広いんだし。
「あの人、マコトって言うのね。面識はないわ。(まさかマコッチ?名前が似ているわね・・・。でも、まさかね。世間がそんなに狭いわけはないわね。それにしても悠斗に呼び捨てで呼ばれているということは仲がいいのね。付き合っているわけではないでしょうね?)」
「そうですか。マコトはゲームが大好きなので、ゲーム仲間だったら喜んで受け入れると思いますけど、念のため確認しますね。」
「そうね、お願いするわ。(ここで押し切って私の印象を悪くしても仕方がないものね。)」
高城さんの返事を聞いたオレはすぐさまマコトに連絡を入れる。
なぜって?
だって、高城さんの連絡先をオレは知らないから。ここで高城さんと別れてしまったら連絡の取りようがない。
せっかくマコトに女友達が出来るかもしれないのに。その可能性をつぶすわけにはいかない。
マコト今日は急いで教室を出て行ったからなぁ。
すぐに返事が返ってくるかなぁ。
そう思いながらもマコトに連絡を取る。
が、やはりマコトとは連絡が取れず返事がなかなか返ってこなかった。
「すみません。マコト今日は用事があるみたいで・・・。返事が返ってこないんです。」
「構わないわ。日曜日までに分かればいいもの。じゃあ、連絡があったら教えてくれるかしら?」
「あ、はい。ええと・・・。」
「私の連絡先が必要よね?悠斗はLIMEって使用してるかしら?」
「ええ。マコトと連絡を取るのはいつもLIMEです。通話もLIME通話を使ってるし・・・。」
「そう。じゃあ、連絡先交換しましょう。(ふふふっ。悠斗の連絡先ゲーーーーーット!!やったわ。)」
そう言って高城さんは鞄の中からスマホを取り出した。
オレもそれに倣ってスマホを制服のポケットから取り出し、高城さんと連絡先を交換した。
オレのスマホに登録された家族を除けば2人目の連絡先だ。
ちなみに1人目はマコトだ。
同性の友達がいないだなんて寂しいやつだと言わないでくれ。自覚してるから。
「どうせだから途中まで一緒に帰りましょう?もう帰るのでしょ?」
「あ、はい。学校には特に用事はありませんから。」
「そう。よかったわ。」
そう言うことで、特に断る理由もなかったので、オレは高城さんと一緒に下校することになった。
これって周りからみたらオレは非難の対象になるのだろうか。
高城さんってとっても美人で人気があるし。
まあ、それも入学当初の話で、今は時代錯誤なお下げ姿と丸く分厚い眼鏡をかけているので以前ほど人気はないが、隠れファンくらいはいるだろう。
眼鏡を取ったらとてつもない美少女なのだから。
高城さんと一緒に学校を出ると、オレの左手に何か暖かいものが触れる。
なんだろう?と思って視線を左手に向けると、高城さんの手とあたっていた。
「ご、ごめん。手があたっちゃったみたいだ。」
「気にしないで。ねえ?手を繋がない?」
「へっ!?」
高城さんの突然の発言にオレは驚いて変な声が出てしまった。
だって、オレと手を繋ごうだなんてする人がいるとは思わなかったのだ。
まあ、マコトは別だけど。
マコトとは小さい頃から一緒だったし、小さい頃からよく手をつないでいた。
でも、高城さんとはあまりしゃべったこともないし、仲良くもない。
それで、手をつなぐとはいったいどういうことだろうか。
「ダメかしら?」
高城さんの魅惑的な瞳が眼鏡の奥からオレに訴えかけている。
オレと手を繋ぎたいのだと。
でも・・・とオレの中に迷いが生まれる。
この年で異性と手をつなぐというのは、それは恋人同士ですることではないのだろうかという疑問が生まれたのだ。
オレと高城さんとは恋人ではないし。
「あの、でも・・・。」
「手を繋ぎたくないくらい私のことが嫌いなのかしら・・・?やぱり悠斗も他の人と一緒?私が泡姫って名前だからって差別するの?」
「そ、そんなことはないですっ!!高城さんのような魅力的な女性と手を繋ぐなんて緊張しちゃって・・・。オレなんかが高城さんと手を繋いでいいのかって不安が・・・。」
高城さんが傷ついたような目をしたから、心の中で思っていた言葉がオレの口から飛び出てしまった。
「まあ!私が繋ぎたいのだから気にしなくていいの!(よかった。悠斗に嫌われているわけではないようね。魅力的だなんて嬉しい。)」
高城さんはそう言うと、少々強引にオレの手を握ってきた。
オレとは違う柔らかく温かい手の感触がオレの手に伝わる。
なんだか、胸がドキドキしてきた。
オレ、手に汗をかいていないだろうか。
体温も上がってきているように思うんだが。
「悠斗の手って大きいのね。それにあったかい。」
高城さんはそう言って嬉しそうに笑った。
その魅力的な笑顔に思わず胸が高鳴るのを感じた。
「高城・・・さん。」
「悠斗。」
高城さんと思わず見つめ合ってしまう。
「ちょっとーーーー!!なにやってんのーーーー!!(なんで悠斗が他の女と手を繋いで見つめあってるのー!?あたしがいない間になにがあったの。)」
高城さんと良い雰囲気になったかと思ったらマコトが吹っ飛んできた。
あれ?
マコトは用事があるから教室を早々に出て行ったわけではなのだろうか?
オレは突然やってきたマコトに視線を向けた。
しかし、マコトはオレの方を見ておらず高城さんの方をジッと見つめていた。というか睨んでいる?
「あら。あなたがマコト?ちょうどよかったわ。あなたに話があったのよ。」
「ふぇ!?宣戦布告!?宣戦布告なの!?」
「私は高城アキよ。日曜日一緒に悠斗の家でキャッティーニャオンラインをプレイしたいの。いいわよね?」
「ええっ!!?」
マコトは突然の事態に頭がついていかないようだ。
しばらくその場でフリーズしていた。
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