第21話
「マコト?美琴姉さんと何かあったのか?」
美琴姉さんがこの家に帰ってくるということを聞いたマコトの様子がおかしかったので、家からでてすぐにマコトに確認した。
さすがに母さんがいる場所だとマコトも言いづらいと思ったからだ。
「あ・・・。ううん。なんでもないよ!美琴さんが帰ってくるの楽しみだなぁ~~。(美琴さんが帰ってきたら悠斗のこと美琴さんに取られちゃいそう・・・。美琴さん悠斗のこと大好きだからなぁ・・・。)」
「ん?そうか?もし、美琴姉さんとなにかあるんだったら教えてくれ。」
なんだか、マコトの笑顔がいつもと違って作ったような笑顔のような気がした。
それでもマコトが言いたくないのでれば、今はまだ突っ込んで聞かないことにしておく。
マコトとの関係が悪くなっても嫌だし。
「うん。ありがとう悠斗。でも、美琴さんとは何もないから安心して。(美琴さんのことは大好きなんだけどね。悠斗が絡むとちょっと・・・。)」
「そうか。それより、朝からオレの家に来るなんてどうしたんだ?なんかあったのか?」
「えっと・・・。なんもない。ただ、悠斗と一緒に登校したかっただけだよ。」
マコトの頬にサッと赤みが差し込み、マコトはオレから目を背けた。
なんなんだ?この反応は?
いつもは見られないマコトの反応にオレの頭は混乱する。
寝不足ということもあって、いつも以上にオレの頭は混乱をしていた。
「ねえ・・・悠斗。」
「ん?なんだ?」
「悠斗ってさ好きな人いるの?」
「いるよ。」
オレの頭の中に昨日の別れ際のミーシャさんの顔が浮かんでくる。
寝不足でもあり混乱中のオレはマコトの問いかけに無意識に答えてしまっていた。
答えてから自分が何を言ったかということを理解し、思わず慌ててしまう。
「ちょっ!!今のなし!なしだからっ!!」
オレは勢いよく頭を振りながら今の発言の取消を要求した。
だが、そんなオレをマコトはにっこりと笑って見ていた。だが、その瞳はどこか寂し気に見える。
「そっか。いるんだ。あたしの知ってる人かな?(悠斗いつの間に好きな人ができたの?ミーシャさんのことじゃないよね?あれは、ゲームの中でだけのことだよね?だとしたら・・・誰なの?)」
「いやっ・・・。そ、それは・・・。」
誰と聞かれても答えることはできない。
だって、ネトゲで出会った人が好きだなんて恥ずかしいし、会ったこともない人が好きだなんてマコトに軽蔑されたりしたら嫌だ。
もし、マコトに軽蔑されて絶交だなんてことになったら耐えられない。
マコトが側にいない未来なんて考えたくもなかった。
「誰?(言えないってことはやっぱり私の知ってる人なのかな?)」
「いやっ・・・。だから、言葉のあやって言うか・・・。」
「私に言えない人?」
「えっ・・・。いや・・・あの・・・。寝不足で頭が働かなくて質問内容を理解してなかったというか・・・。」
しろどもどろになりながら、オレはマコトに告げるが、言葉を発すれば発するほど、マコトの視線が鋭くなっていくような気がした。
「ふぅ~ん。寝不足って言えば悠斗にしては珍しく遅くまでキャッティーニャオンラインにログインしていたよね?珍しいよね?いつも、日付が変わる前にはログアウトしてるのにね?」
マコトの追求が激しい。
しかも、キャッティーニャオンラインの話を絡めてきている・・・。
これは、もしかしてオレがミーシャさんを好きだってことに気づいた?
いやいやいや。でも、マコトに軽蔑されたくないし・・・。
「ちょっといろいろとイベントが立て込んでまして・・・。」
「イベントって?」
どうしたんだ。
今日のマコト絶対おかしい。
いつもはこんなに突っ込んで聞いてきたりしなかったのに・・・。
「いや。あの・・・。ゴミ拾いでレベルが10になったんで、スキルを取得したといいますか・・・。」
「ふぅん。スキルの取得なんてすぐに完了するじゃん?」
「えっと、それからスキルを教えていただいた人にゴミ拾いのことを説明したら、いろいろあって失敗作の調合物が身体にかかってしまって、ギルドでシャワールームを借りたらギルマスのガーランドさんに目をつけられて・・・。」
「ずいぶん濃い時間を送ったんだね。で?スキルは誰に教わったの?ギルドってニャーネルには会ったの?」
つ、追及が好きな人の話題からキャッティーニャオンラインでの出来事に変わったのは喜ぶべきか否か・・・。
マコトの追求は終わらない。
ただ、この内容なら別に答えたって問題はないはずだ。
ミーシャさんとファーストキスをした以外は。
「スキルはエリアルちゃんに教えてもらったんだ。ニャーネルさんには会ってないけど、ニャーネルさんって有名人なの?ミーシャさんやエリアルちゃんにもニャーネルさんに会わなかったかって聞かれたんだけど。」
「え、エリアルちゃんっ!!?」
どうやらマコトの意識は完全にキャッティーニャオンラインに向いたようだ。
流石ゲーム大好きなマコトだ。
それにしても、エリアルちゃんも有名人なのだろうか。
どうやらマコトも知っているようだ。
まあ、始まりの街に店を構えているから最初に交流したとかかな。
「エリアルちゃんを知ってるのか?」
「知ってるもなにも!!っていうかなんで悠斗ってばエリアルちゃんだなんて呼んでるの!!」
「え?だって、見た目オレより幼い感じに見えるし。」
「エリアル様以外の呼び名で呼んでるなんて知ったらエリアル様激怒するよ!?」
「え?激怒?」
マコトの言葉にオレは驚いた。
エリアルちゃんが激怒?そんな風には見えなかったのだけど。
「まさか・・・ちゃん付けで呼んだの?(あり得ないあり得ないあり得ないっ!!エリアル様は気位が高くて孤高の存在で様付けしない人とは会話すら交わさないって評判なのに。それを悠斗は許されたの?)」
「え・・・あ、うん。最初はちょっと嫌がられたけどさ。別にエリアルちゃんに怒られはしなかったよ?」
エリアルちゃんと呼んだ時のことを思い出して答えた。
特にエリアルちゃんは怒っていなかったように思える。
怒っていたりしたらオレと友達になろうだなんて発想にはならなかっただろうし。
すると、マコトの顔が苦虫を噛む潰したように歪んだ。
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