第12話

 


ミーシャさんがログインしてくる前に出来るだけレベルを上げようと思ったが、めぼしいゴミは全て拾ってしまった。


川も綺麗になってしまったし、拾うゴミもない。


あとは、街の外に出て小石や小枝を拾うことしかできないだろう。


一人で街の外にでるか・・・?


でも、またゴブリンにあったらどうすべきか。


剣も役に立たなかったし、盾も以前のゴブリンとの戦闘で壊れてしまった。


以前はレベル1だったからゴブリンに敵わなかっただけかもしれないが、それでも一人で街の外にでることには少しだけ恐怖を覚えた。


また、以前みたいにミーシャさんが助けてくれるとは限らないし。


そもそも、助けてもらうような状況は好ましくない。


どうせならオレがミーシャさんの危機にさっそうと駆け付けたい。


そのためなら強くならなくてはいけない。


強くなるためにはレベルを上げなければいけないし、スキルだって多く持っていた方がいいだろう。


ん?スキル?


そう言えばオレはゴミ拾いでレベルが10になった。


もうスキルを取得することができるのではないかと、気づいた。


ただ、後1時間もないなかでスキルを取得できるかはわからないが、一つでもスキルを取得した方がいいだろう。


今はゴミ拾いのおかげでお金の心配もないのでスキルを取得し放題だ。


ゴミ拾いで既に10000ニャールドは稼いだからな。


ゴミ拾いばかになりませんでした。


スキルを一つ習得するのにかかる費用が1000ニャールドだから10個はスキルを覚えられる計算だ。


初期スキルだったら全て覚えられるのではなかろうか。


あ、でもその前にマコトに借りていた1000ニャールドを返さなければならないか。それに、武器と防具も初心者支援って形でもらったけど、レベルも上がったし盾は壊してしまったので新しく購入する必要がでてくるだろう。


武器や防具の料金を含めたら少し心許ない金額だが、まだゲームを開始して3日目なんだ。こんなものだろう。


オレはそう思って、まずマコトにお金を返すためにマコトがどこにいるのか探した。


探し方はいたって簡単だ。


友達リストからマコトを探して、どこにいるかを確認するだけだ。


人によっては居場所がわからないように設定している人もいるが、マコトはちゃんとに居場所を公開していた。


ちなみに友達リストに登録されているのがマコトとミーシャさんだけなのは余計なお世話だ。


そのうちグッと増えていく予定なのだから。


・・・予定なのだから。


・・・・・・予定なのだから。


 


マコトは鍛冶師とだけあって、もう既に自分の工房を持つまでになっていた。


今はその工房にいるらしい。


でも、この街にその工房はない。


今、オレがいる場所は初期の街だからそれほど賑わってはいないのだ。


まあ、一通りのお店類はそろってはいるけれども、どのお店も街に一か所ずつしかないような感じだ。


対してマコトがいるのは王都のようでかなり賑わっているようだ。


ただ、オレがその街までたどり着ける自身がない。


なぜならば街の外にはモンスターがいるからだ。


・・・仕方がない。


オレからマコトに会いにいくのはまだやめておこう。


でも、お金を返すためだけにマコトにこの街まで来てもらうのも気が引ける。


ここは、オレがもっとレベルを上げてマコトに会いにいけるようにしなければ。


そんなわけで、オレはひとまずスキルを覚えるために街に唯一いる装飾師のもとにむかった。


ほんとはマコトと同じように鍛冶のスキルを取得すればよかったんだけど、ミーシャさんという恋人ができた今、ミーシャさんになにか送りたいし。


それには装飾品がいいのではないかと思った。


それも、オレが作ったってなればさらに喜んでくれるのではないかと考えたのだ。


そうして、オレは装飾師の元に向かった。


 


 


 


☆☆☆


 


 


「すみませーん。装飾師のスキルを取得したいんですけど。」


「申し訳ありませんが、レベル10以上の方でないとスキルは習得できません。」


あれ?


断られてしまった。


おかしい。オレのレベルは10になったばかりだというのに。


「あの・・・オレのレベルはちょうど10ですけど・・・。」


そう戸惑いがちに告げると、店番の女性はハッと顔を上げた。


「え?だって君、今朝こなかったっけ?あれ?昨日だっけ?どっちでもいいや。でも、その時に確認した君のレベルは1だったよ。一日やそこらでレベルが10に上がるわけないじゃない。冷やかしならいらないから出直してきなさい。」


金髪縦ロールの幼女はそう言ってオレを追い返そうとする。


「いや、あの・・・。だから、レベル10になったんです。確認してください。」


「そんなことあり得ないわ。確認するだけ時間の無駄よ。そんな時間があるのならさっさとレベルを上げてきなさいな。」


「ほんとなんですって。レベル10になったんですよ。」


装飾師の幼女はオレを追い返そうとするが、オレもスキルを覚えたいので必死にくらいつく。


「もうっ!しつこいわね!警察呼ぶわよ!!」


幼女はそう言って叫んだ。


って、ちょっと待て!警察!?


このゲームの中にも警察いるの!?


っていうか、なんでこれだけで警察呼ばれなきゃならないのだろうか。


オレはギョッとして幼女を見た。


すると幼女は不敵に微笑んだ。


「嘘をつくからよ。」


「だから、嘘じゃないんですってば。」


「ふんっ。そこまで言うならあなたのステータスを見るわ。でもレベル10になっていなかったら詐欺師として警察に突き出すからね!」


「わかりました。ちゃんと見てください。」


オレはそう言ってステータスを幼女に公開した。


このステータスだが、目の前にいる人物に公開することが可能だ。


「ほーら。まだレベルが・・・えっ!!10超えてる!?どうしてなの!!どんな裏技を使ったのよ!!」


オレのレベルを見て幼女は驚きに目を瞠った。


「ほら、ちゃんとに超えてるでしょ。だから、装飾のスキルを教えてください。」


「・・・レベル10なら仕方ないわね。教えるからこっちに入ってきなさい。それから私の名前は幼女なんかじゃないわ。ちゃんとエリアルって名前があるんだから。エリアル様って呼んでよね!」


どうやらやっとオレにスキルを教えてくれる気になった。


っていうかどうして幼女って心の中で思っていたことが伝わったのだろうか。


エリアルちゃんは、心を読むことができるのだろうか。


オレは少し疑問に思いつつも彼女について店の奥の工房の方に入っていった。


 


 


 


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