第11話
「あの・・・やっぱりオレ、年下過ぎですか?」
オレは思い切ってミーシャさんに確認する。
ミーシャさんの顔色があまりよくなかったからだ。
焦っているようにも見える。
「え・・・。いや、その・・・。そういうわけじゃないわよ。エンディミオン様が大人っぽいから学生だってことにビックリしただけ。大学生だよね・・・?(大学生でいて・・・。エンディミオン様が高校生だったりしたら私、エンディミオン様におばさんだって思われないかしら。)」
大人っぽい・・・。
そうか、オレって大人っぽく見えていたのか。
だから、学生だったって思わなかったってことか。
よかった。
でも、待てよ・・・。
ここで、高校生だなんていったら失望されたりするかな・・・?
大学生だよね?って聞いてくるくらいだから、ミーシャさんは社会人だし、きっと成人しているのだろう。
高校生だって知られたくないっ!!
「え、あ、うん。大学2年なんだ。ちょうど二十歳だよ。」
あー、やべっ。
思わず嘘をついてしまった。
ミーシャさんに嘘をつきたいわけじゃなかったんだけど、つい勢いで言ってしまった。
「そっか!そうだよね!よかったぁ・・・。(大学生なら私のことおばさんだなんて言わないよね。二十歳なら私と3歳しか変わらないし。)」
ミーシャさんの心底ホッとしたような声を聞いて、嘘だとは言えない雰囲気が漂う。
そうだよな。
別に実際にミーシャさんと会うことがある訳じゃないし、ちょっと年齢誤魔化したって大丈夫だよな。
オレはそう言い聞かせる。
本音を言うとミーシャさんと会ってみたいという気持ちもある。
だけど、会ってしまったら年齢がバレてしまいそうだし・・・。
「あ、うん。ミーシャさんって社会人なの?」
「そう。社会人1年目なの。エンディミオン様の3つ年上かな。」
社会人1年目・・・。
オレより3歳年上ってことは美琴姉さんと同い年・・・?
あれ?
そう言えばミーシャさん引っ越しするって言ってたよな。
美琴姉さんも近々引っ越ししてくる予定だし・・・。
まさか、ミーシャさんが美琴姉さんだなんてことはないよな・・・。
そんな偶然あるわけないよな。
オレなんて馬鹿なことを考えてるんだろう。
ミーシャさんが美琴姉さんだなんてわけないのに。
今年22歳で今の時期引っ越しをしようとしている人なんて日本中に何人もいるだろう。
うん。今のは気づかなかったことにしよう。ただの偶然だ。偶然。
「なんだ、あんまり年変わらないじゃん。」
オレはそう言って笑った。
内心は6歳も違うのかよ・・・オレ子供に思われないだろうか。と心配しながらもそれを表に出さないように笑った。
「そう?私、おばさんじゃない?大丈夫?」
「大丈夫。大丈夫。ミーシャさんはおばさんなんかじゃないよ。年上のお姉さんでオレの恋人としか思わないから気にしないで。」
おばさんだなんて全然思っていない。
これは本心だ。
それに、美琴姉さんと同い年の人をおばさんだなんて言ってしまったら美琴姉さんが怒るだろう。
「よかった。エンディミオン様におばさんだって思われるのが嫌だったのよ。安心したわ。」
そう言ってほほ笑んだミーシャさんはとても可愛くてとても年上だなんて思えなかった。
「じゃあ、私はそろそろ落ちるね!エンディミオン様が落ちる前に一回顔を出すね。でも、私が遅くなっちゃったら待ってなくて大丈夫だからね。」
「はい。寝る前にミーシャさんの顔を見たいから待ってますね。」
「ありがと。じゃあ、また後でね。」
バイバイ。
と、手を振ってオレたちは別れた。
☆☆☆
うん。
ミーシャさんがいない今がチャンスだ。
今のうちにミーシャさんがびっくりするほどレベルを上げないとな。
幸いにもまだ時間は20時にもなっていない。
あと3時間ほどある。
この時間でどれだけレベルを上げることができるだろうか。
オレは街の中のゴミを拾うために目を皿にしてゴミを探す。
ただ、ゴミ自体は街の中にそれほど多いわけでもない。
時々ゴミが落ちているような状態だ。
困ったな・・・。
これじゃあ、なかなかレベルを上げられないぞ。
どうしたものかと思考を巡らせる。
「あっ!そうだ!!」
日本では川や海の近くによくゴミが捨てられていると話題になることがある。
それが生態系に悪影響を与えているというニュースも聞いたことがある。
もしかして、もしかすると川や海に行けばゴミが落ちているかもしれない。
そう思って広場でマップを確認すると、海はこの街の周辺にはなかった。
ただ、川なら街の中に流れていたのでオレは川に向かうことにした。
もちろん川に向かう途中にもゴミが落ちていないか目を光らせながらだが。
「うわっ。ゴミだらけじゃないか・・・。」
川にはゴミがたくさん落ちていた。
どこからか流れてきたのかわからない履き物や、紙切れや、洋服のようなものまである。
ひとつずつ回収し、燃えるゴミ、燃えないゴミ、再利用できそうなものにわけていく。
「ゴミを拾うことでExpもお金もたまるけどさ、それでもこんなにいっぱいゴミがあるのは見たくないよな・・・。」
Expやお金は順調に増えていくものの、見ていてあまりいい光景ではない。
途中でレベルアップしたのがわかったが、それでもオレはゴミを拾い続けた。
無我夢中で2時間ほどゴミ拾いに精を出したオレはなんとレベルが10にまでアップしていた。
しかも、川にあったゴミはすべて回収が完了した。
ゴミがなくなって綺麗になった川を見ると晴れ晴れとした気分になった。
ピロンッ。
すると突然頭の中に電子音が響いた。
なんだ?と思っていると、
『おめでとうございます。ゴミを拾った回数が1000回を越えました。称号、ゴミ拾いの達人を取得いたしました。』
と、いうようなメッセージが頭の中に直接流れ込んできた。
どうやら気づかない間に1000回もゴミを拾っていたようだ。
しかし、ゴミ拾いの達人なんて称号なんの役にたつのだろうか。
どうせならゴミを1000回拾ったらスキルが増えるとかあってもいいだろうに。
『ゴミ拾いの達人の称号を持っているとゴミを拾った時や戦闘で得られるExpが2倍になります。』
「ふぁっ!?」
スキルじゃないけれども、称号を得ると特典が得られるようだ。
しかもまさかのExp2倍!
もしかして、これでミーシャさんのレベルにぐんっと近づけるのではないだろうか。
オレは思わぬ副産物に顔がにやけるのを止められなかった。
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