第13話

 


「エンディミオン様・・・。ってなんであんた自分の名前に様なんかつけちゃってるのよ!おかげで私あんたのこと様付で呼ぶようになっちゃうじゃないの!」


エリアルちゃんはどうやらオレを様づけて呼びたくないようである。


もっともオレも様づけで呼ばれるのは気恥ずかしいものがある。


しかし、仕方がないのだ。


オレはただ【エンディミオン】と入力しただけなのに、勝手に【様】がついてしまっていたのだから。


「いや、あの勝手に【様】がついちゃったんですよ。信じられないかもしれないけど。」


「ふぅ~ん。まあ、いいわ。そういうことにしてあげるわ。」


「あ、ありがとうございます?」


なんだかエリアルちゃんはとっても高飛車だなぁ。


見た目はちんちくりんの幼女なのに。


いや、まあ。可愛いよ。すっごく可愛い見た目をしている。


現実世界にいたら絶対かなりの確率で誘拐にあっているのではないかと思えるほど可愛い見た目をしている。


「じゃあ、1000ニャールドを私によこしなさい。」


「あ、はい。」


どうやら見た目は幼女でもちゃんとにスキルを教えてくれるようだ。


「あなたに装飾のスキルを授けます。」


目を瞑ってオレの手を両手でぎゅっと握ったエリアルちゃんはそう言ってから握っていたオレの手にチュッと小さくキスをした。


オレは思わずビクッと身体を震わせてしまった。


まさか、手にキスをされるとは思ってもいなかったのだ。


これ、スキルを教えてもらうたびにやるの?


女性だったらいいけど、ムサイ男の人にやられるのはちょっと嫌だなぁ。


「ほら、終わったわよ。これでスキルを取得できているはずよ。さっさと確認なさい。ちなみにこの方法で取得できるのは初期スキルのみよ。派生スキルに関しては特定の条件を達成しないと取得できないわ。」


「え。もう終わったの?」


「終わったわよ。ステータス画面を見てごらんなさい。」


エリアルちゃんにそう言われてオレは自分のステータス画面を確認した。


そこには確かにスキルに【装飾】が追加されていた。


あまりにもあっさりと終わってしまったので、少々気が抜けてしまった。


まさかこれだけでスキルを覚えることができるとは・・・。


さすが、ゲームの世界だ。半端ない。


「ねえ、あんた友達少なそうね?私が友達になってあげましょうか?」


「はえっ?」


驚いて思わず変な声がでてしまった。


え?


どういうこと?


エリアルちゃんが友達になってくれるってこと・・・?


え?マジで?


なんだか、態度が散々だったからてっきりオレ嫌われているものだとばっかり思っていたのだけれども。


「なに変な声を出しているのかしら!あんた見た目とっても地味だからきっとこれから先友達なんてできないわよ。だから、私が立候補してあげる。喜びなさい。私の友達になれるなんてとっても貴重なんだから。この世界でもあんたただ一人なんだからね!」


上から目線で言われた言葉を頭の中で復唱する。


つまり、エリアルちゃんがオレの友達になってくれるってことだろ?


しかも、エリアルちゃんはオレ以外に友達がいないって言っているようにも聞こえる。


・・・友達が少ないのはどっちだよ。


思わずそう言いだしそうになって、口をふさぐ。


だって、エリアルちゃんが期待をした目でこちらを見ていたからだ。


「あ、ありがとう。友達になってくれて。」


ここは大人しく年上の余裕を持ってエリアルちゃんに合わせよう。


そう思って感謝の言葉を口にした。


その瞬間、今まで怒っていたような表情をしていたエリアルちゃんの顔が光が差し込んだようにパアアアアアアッと明るくなった。


しかも、笑顔全開である。


エリアルちゃん。


初めてできたオレという友達が嬉しかったんだね。


なんだか、ここまで喜ばれるとオレとしても悪い気はしない。


でも、すぐにエリアルちゃんの顔に影が差した。


どうしたんだろう?と思ってエリアルちゃんの顔を覗き込むと、


「・・・フリーだと思ったのに、彼女がいたの?」


なんだか小さな声で呟いたような気がしたが、何を言ったのかオレには聞き取れなかった。


「エンディミオン様っ!こちらにいらしたんですね!!」


そんな時、エリアルちゃんの家のドアが勝手に開いた。


まあ、装飾品を売っているお店なのでエリアルちゃんが入室の許可を出す前にドアが開くのは普通のことだろう。


ただ、そこから入ってきたのがミーシャさんだから驚いた。


もう23時になってしまったのだろうか。


意外と時間が経つのは早い物である。


「・・・誰?」


エリアルちゃんが、オレの服の裾を掴んでオレを見上げて小さな低い声でたずねてきた。


エリアルちゃんは幼女なので立ったままでいるとどうしてもオレを見上げるような形になってしまう。


大きな目で上目遣いに見上げられるとちょっとドキッとしてしまう。


だって、エリアルちゃんは幼女だと言ってもとっても可愛いのだから仕方がない。


まあ、本人もわかってやっているのかもしれないが。


「えっと。私はエンディミオン様の恋人でミーシャといいます。あなたは?(なにこの子供。なんか私に対する敵対心を感じるわ。)」


「・・・恋人。(この胸のでかいおばさんが恋人。)」


やってきたミーシャさんはエリアルちゃんに笑顔で挨拶していたが、エリアルちゃんは小さくなにか呟いただけだった。しかも、それも小さすぎて聞き取れなかった。


「えっと。この子はエリアルちゃんで、装飾のスキルを取得するためにお世話になったんだ。」


オレはエリアルちゃんのことをエリアルちゃんの代わりにミーシャさんに説明する。


 


 


 


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