第6話
オレを助けてくれた白いローブの女性はミーシャと名乗った。
ミーシャさんはオレより少しだけ歳上の設定のようだ。
ベビーブロンドの髪と湖の底のような色をしている瞳が印象的だった。
「エンディミオン様は無職だったんですね。無職って初めて聞きました。(無職なんて誰がプログラムに組み込んだのかしら・・・。)」
「そうなんですよ。職業をなににしようか悩んでいたらすべての職業のスキルを覚えられるからって無職を進められまして・・・。」
「まあ!」
話してみるとミーシャさんはこのゲームが公開された頃からプレイをしている古株だった。
そのためレベルも50を越えているとか。
現在のトップランカーはレベル99らしい。ちなみにトップランカーがレベル99に達した段階で運営側でレベル100以上を解放する試練を追加したとか。
ゲームが公開されてからプレイしているわりにはミーシャさんのレベルが低いとは言うなかれ。
彼女はすでに社会人で残業だらけの毎日を送っているとか。そのために、ゲームについやす時間があまり取れていないらしい。
それでも、このキャッティーニャオンラインに関する知識は豊富に持っているようだ。
そのミーシャさんが、無職を知らないという。
マジで無職ってオレ以外選択していない職業なのではないだろうか。
というか、無職という選択肢事態がオレ以外には発見できていない・・・とか?
「このゲーム職業についていることが前提で作られているから・・・というか無職なんて想定外だから、エンディミオン様は苦労するかもしれないわね。でも・・・もしかしたら隠しジョブなのかしら?」
「う~ん。わかりません。ただ、レベルをあげないことにはスキルも習得できないし、レベルをあげるためには街の外に出てモンスターを退治しなければいけないしで・・・。」
「まあ!普通はレベル5前後まではギルドのお使いクエストで簡単に上がるんだけどね。無職だからギルドのクエストが受けられないわけね。」
「はい。そうなんです。でも、さっき石ころを拾ったらExpが1だけ増えたんですよ。しかも、1ニャールドもゲットしました。」
先程あった出来事をミーシャさんに伝える。
石ころを拾うだけでExpもお金も増えるだなんて知らなかったしね。
ミーシャさんは知っているのだろうか・・・?
「えっ!?石ころを拾うとExpとお金が増えるの!?(なにそれ、私聞いてないんだけどっ!ほんとうに誰がこんなプログラムを組み込んだのかしら・・・。)」
「はい。そこに石ころが転がっていますよね?」
「ええ。そうね、けっこうあちこちに転がっているわよね。」
そう。石ころは石ころなのだ。なんのへんてつもないただの石ころ。
だから、そこらじゅうにコロコロ転がっているのだ。
それを適当に拾うとピロンッと言う音と共にExpとお金が増える。
そうして、拾った石を捨てるとその分のExpもお金も減ってしまう。
ずっと石ころを持っていなきゃならないのかと思うとあんまり意味がないような気もするけれど・・・。
オレが石ころのことを告げるとミーシャさんがおもむろに転がっていた石ころを一つ手に取った。
そうして首を傾げる。
「・・・Expもお金も増えないわね。」
どうやらミーシャさんはExpもお金も増えなかったようである。
ミーシャさんのレベルが高いからだろうか。それとも、無職だからだろうか。
「ねえ、さっき拾った石を捨てると増えた分のExpもお金も減るって言っていたけど、その石ころをしかるべき場所に捨てたらどうなるのかしら?」
「・・・しかるべき場所?」
ミーシャさんの提案に首をかしげる。
石を捨てるのに適した場所があるということだろうか。
「・・・川、とか?」
「残念。河原よ。ちょっと河原に行ってみましょうか。」
ミーシャさんの提案でオレたちは河原に行ってみることにした。
ちなみに河原は街の中にあるので、モンスターに襲われる心配もない。
オレたちはあれからゴブリンに襲われることもなく無事に河原についた。
「んじゃ、ちょっと石を置いてみますね。」
河原には大小様々な石が転がっていた。
そこに先程拾った石を置いた。
するとExpとお金が・・・減らなかった。
「あ、減ってないっ!?」
驚いて声をあげる。
「じゃあ、河原にある石を拾ってみてくれる?」
「はい。」
ミーシャさんに言われるがまま河原の石を拾う。しかしながら、今度はExpもお金も増えなかった。
「Expもお金も増えませんね・・・。」
「そう。やっぱり。」
オレが石を拾ってもExpもお金も増えないことを伝えるとミーシャさんはにっこりと笑った。
どうやらミーシャさんの考えが当たったらしい。
そうして、オレも一つの仮説にたどり着く。
「もしかして・・・ゴミを拾って綺麗にしていけばレベルがあがるのか・・・?」
「うん。そうね、そうかもしれないわ。でも、無職限定のExpとお金の稼ぎかたかもしれないけれどね。」
どうやらオレはレベルと所持金を増やすための救済方法を得たようだ。
これで、ゲームがやりやすくなるぞ。
「それにしても、エンディミオン様ってば自分の名前に敬称をつけて登録するなんて面白いわね。そんなに女の子から様をつけて呼んでもらいたかったのかしら?」
「いや・・・。エンディミオンって入力しただけなのに、いざゲームが始まってみたらエンディミオン様ってなってたんです。」
オレはゲームの登録時におこったことを正直にミーシャさんに告げた。
「まあ!そんなことが・・・。(ちょっとほんとうに誰よ、こんなプログラム組んだのは・・・。)」
どうやらこのこともミーシャさんは知らなかったようで驚いている。
やはり、勝手に敬称がついてしまうのは無職を選んだ時だけのようだ。
「ミーシャさんありがとうございました。お陰でなんとかレベルをあげていくことが出来そうです。」
ミーシャさんがいなければゴミを拾って正しい場所に捨てるということなど思い付かなかっただろう。
オレはそう思って心からの感謝の気持ちをミーシャさんに伝えた。
「いいのよ。気にしないで。それより、無職なんて職業初めて知ったわ。面白そうだしエンディミオン様と一緒に冒険したいわ。私とパーティーを組まない?(くぅーーっ!!!この子笑顔が可愛いわ!まるで弟の優斗みたい。)」
「え?無職のオレでもパーティーに入れてくれるの?でも、ミーシャさんのパーティーメンバーは大丈夫?」
「大丈夫よ。私、ずっとソロで活動してるから。よろしくね。エンディミオン様。」
こうしてオレは初めてパーティーを組むことになったのだった。
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